
弁当・惣菜のフランチャイズ加盟店で、注文が増えた月に手元の現金が薄くなる理由
弁当・惣菜のフランチャイズに加盟して営業を続けるうちに、法人向けの定期配達や行事向けのまとまった注文が増えてきた。売上は前の月を上回っているのに、月末に口座を見ると残高が思ったほど増えていない。この状態は、売上の伸びが足りないから起きているわけではありません。
注文が増えれば支払いも増えます。ただし、増え方の単位が支払いごとにそろっていません。数量にそのまま比例して増えるものもあれば、箱やケースの単位でしか増やせないもの、時間の単位で増えて時間帯によって単価が変わるもの、そして増えた分が何も残らないものがあります。この記事では、弁当・惣菜という業態で出ていく支払いを増え方の単位で4つに分けて比べ、自店の直近3か月を並べ直すところまでを整理します。
「注文が増えた」と「支払いが増えた」は同じ形をしていません
資金繰りを原価率や利益率だけで見ていると、「売上が増えたのに現金が減った」という状態は説明できません。率が同じでも、出ていく順番と出ていく単位が違えば手元に残る現金は変わるからです。弁当・惣菜には4つの支払いが4つとも違う単位で増えるという特徴があります。まずはその4つを並べて比べます。
支払いの増え方を4つに分けて比べます
1. 数量に比例して増えるもの——食材費
食材は、注文が1割増えればおおむね1割増えます。増え方としては最も読みやすい部類です。読みにくくなるのは、増えた分をどう手当てしたかで単価が変わるときです。本部や指定業者からの定期発注で間に合った分と、足りずに当日近くで買い足した分とでは、同じ食材でも仕入単価がそろいません。
比較の軸になるのは、この支払いが作る前に発生するという点です。代金が入るのは納品して請求を立てたあとですから、注文が増えている期間はこの前後の差がそのまま口座の残高に効きます。
2. 段階で増えるもの——容器・包装などの資材
容器、蓋、輸送用の箱、掛け紙、割り箸といった資材は、1食単位では買えません。ケースや箱の単位で発注するため、注文が1割増えたからといって資材の支払いが1割だけ増えるわけではなく、次の発注のタイミングで階段のように増えます。
この段差は、増えた注文が続くかどうか分からない時期ほど負担になります。行事向けの単発の注文に合わせて資材を1ケース多く仕込めば、注文が終わったあともその分は在庫として残ります。傷むものではないため損失にはなりませんが、現金は先に出て、使い切るまで戻ってきません。
3. 時間の単位で増え、時間帯で単価が変わるもの——人
増えた注文を作る手は、注文の数量に比例しては増やせません。人はシフトの単位で入るため、半端に増えた分は既存の人員の労働時間を延ばして吸収することになります。ここで単価が変わります。
労働基準法第三十七条第1項は、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合について「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と定めています。延長した時間が1か月について60時間を超えた部分は、5割以上の率で計算した割増賃金となります。
弁当・惣菜で見落とされやすいのは時間帯です。同条第4項は、午後10時から午前5時までの間に労働させた場合について、その時間の労働は「通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金」を支払うこととしています。朝の納品に間に合わせるために仕込みの開始を前へ動かすと、午前5時より前の時間がここに入ります。同じ1人時でも、動かした時間帯によって出ていく金額が変わるということです。個別の割増の計算や労務の手続きについては、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
4. 増えた分が戻らないもの——読み違えて作った分
4つ目は、ほかの3つと性質が違います。作りすぎた分の食材費と人件費は、翌月の売上として回収できません。弁当・惣菜は、作ったものを在庫として翌月に持ち越せない業態だからです。
食品表示基準は、消費期限を「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日」と定義しています。賞味期限のほうは「期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日」で、こちらには「当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがある」というただし書きが付いています。日持ちのしない弁当・惣菜が前者で表示されるのは、期限を過ぎたものを翌日の商品として扱う余地がないからです。
注文が増えている時期は、この読み間違いが起きやすくなります。数量が確定していない引き合いに合わせて多めに仕込めば、外れた分はそのまま現金の減少になります。在庫として資産に残る資材とは、ここが決定的に違います。
4つのうち、自店で先に動かせるのはどれか
4つを並べると、動かせる速さが違うことが分かります。読み違えて作った分は、注文の確定のしかたを変えれば来月から減らせます。資材は発注のロットと在庫の持ち方を見直せますが、効いてくるのは次の発注からです。人は労働時間の割り振りになるため雇用の条件に関わり、食材は数量に連動する以上、注文が増えれば増えるという前提は変わりません。手元の現金に最も早く効くのは、増えた注文のうち数量が確定していない部分をどう扱うかという点になります。
自店の直近3か月を、増え方の単位で並べる手順
ここまでの4つを、会計の期間ではなく口座から出た月で自店の数字に当てはめます。
手順1。直近3か月の売上を、確定した注文(定期の契約や事前に数量が決まっていたもの)と、確定していなかった引き合いに分けて書き出します。
手順2。同じ3か月の食材費を、定期発注で手当てした分と、直前に買い足した分に分けます。分けられない場合は、仕入先ごとの支払額を並べるだけでも差が見えます。
手順3。資材の発注日と支払日を書き出し、その月の注文数量と並べます。発注が注文の増えた月からずれていれば、そこが階段の段差です。
手順4。人件費を、通常の労働時間の分と、延長した時間・午前5時より前の時間の分に分けます。増えた注文を時間で吸収した月がどれかが分かります。
この4枚を横に並べると、「売上が増えた月」「支払いが増えた月」「代金が入った月」がずれている場所を特定できます。場所が分かれば、注文の受け方を変えるのか、資材の持ち方を変えるのか、一時的に外から資金を入れて越えるのかを、感覚ではなく数字で選べます。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころは、増えた支払いをひとまとめにして持ち込まれる場面がありました。返済期間は設備資金と運転資金で枠が分かれていて、新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では設備20年以内、運転は原則10年以内です。数字を並べる段階で、機械や什器に当たるものと日々出ていくものを分けておくと、そのあとの話が進めやすくなります。
差が埋まらないときに、借入を考える前に整理しておくこと
4枚を並べても差が埋まらない月がある場合、外部からの資金で越えるという選択肢が出てきます。その手前で整理しておけるものが3つあります。
1つ目は、何に使う資金なのかという点です。資金使途は事業に必要な支出であることが前提になります。個別の支出が資金使途として認められるかどうかの判断に迷う場合は、申込先や専門家に確認しながら計画を整えていくことになります。
2つ目は、判断される材料です。審査では、就業経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。上で並べた4枚は、このうち事業計画の具体性と、資金使途と調達額の整合を説明する材料になります。
3つ目は時間です。日本政策金融公庫の創業融資では、書類提出後おおむね3週間から1か月が実行までの目安とされ、準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。資金が薄くなる月が分かっているなら、その月から逆算して動くことになります。なお、適用される利率や据置期間は審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選んで決められるものではありません。
まとめ
弁当・惣菜のフランチャイズで注文が増えたのに資金が減るのは、支払いの増え方が4つとも違う単位だからです。食材は数量に比例して先に出て、資材は発注のロット単位で階段状に増え、人は時間の単位で増えて時間帯によって単価が変わり、読み違えて作った分は在庫として残らないまま現金だけが減ります。
売上の総額で追いかけている限り、この4つは「原価が上がった」という一言にまとまってしまいます。直近3か月を4つの単位で並べ直せば、どの支払いが自店の手元を薄くしているのかを特定できます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























