
借金なしで飲食店を開業できるか?貯金だけで始める前に考えたい判断基準
料理人として独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。
💬 料理人の方からのご相談
色々調べると、起業のときに融資を受ける人が多いようですが、正直なところ借金はしたくありません。何百万円も借りて、売上が思うように伸びなかったら返せる自信がないからです。融資を受けずに貯金だけで店を始めることはできないのでしょうか?それとも、手元のお金を残すために借りた方が安全なのでしょうか?

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。
小峰からの回答
結論から言うと、融資を受けずに貯金だけで飲食店を始めることはできます。ただし、「借りない方が安全」とも「借りた方が安全」とも一概には言えません。判断の軸は、借りるかどうかそのものではなく、開業後に無理なく返せる額と、開業後に手元へ残しておきたい資金の2点です。借金を怖いと感じるのは自然な感覚ですし、その感覚は資金計画を慎重に組むうえで大切にしてよいものです。
貯金だけで開業するという選択
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金の額や割合について制度上の要件は決まっていません。そのうえで、審査では自己資金の額も重要な判断材料になります。これは借りる場合の話で、借りずに始める場合は、貯金で開業準備から売上が安定するまでを乗り切れるかどうかがすべてです。
ここで見落としやすいのが、店を開けた日から先の資金です。内装や厨房設備といった設備資金を貯金で払い切ると、仕入れや人件費などの運転資金が手元に残りません。売上が思うように伸びないときに、借金がなくても資金が尽きれば店は続けられません。借金への怖さと同じくらい、手元資金が薄くなることにも目を向けてほしいのです。
融資の相談を受ける側にいた立場から見ても、手元資金に余裕のない計画は、売上が計画から外れたときの選択肢が少なくなります。借りることは、その余裕を確保する手段のひとつです。
「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら返せるか」から考える
何百万円も借りて返せなくなるのが不安、というお気持ちにいちばん直接答えるのは、借入額から考えるのをやめることです。毎月の返済額は、借りる額、返済期間、利率で決まります。まず売上の見込みから、原価、人件費、家賃などの経費を引いた残りを確認します。その残りの範囲で返せる額が、あなたにとっての返済可能額です。
公庫の審査でも、事業計画の具体性は見られます。売上、原価、人件費の根拠や、返済原資が具体的に書けているかどうかです。売上を強気に置いた計画で借入額を決めるのではなく、売上が想定を下回った場合の数字でも返済が回るかを、自分で試してみてください。この確認をしておくと、借りる場合も借りない場合も、判断の土台になります。
無担保・無保証人で借りられることと、返さなくてよいことは別の話です。担保や保証人を求められにくい分、返済は事業の売上から進めていくことになります。だからこそ、借りた資金を何に使い、その結果どれだけの売上を見込み、そこからいつどのくらい返すのかを、一本の流れとして説明できる状態にしておくことが大切です。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)ですが、これは制度上の上限であって、借りるべき額の目安ではありません。審査では資金使途と調達額の整合も見られるため、不安だからと多めに借りておく考え方も、計画の説明が難しくなります。
制度の数字を押さえておく(2026年9月1日現在)
公庫の創業融資について、執筆時点の内容を整理します。数字は変わることがあるため、申込の前に公庫の公式情報でご確認ください。
- 基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.75〜5.35%です。
- 創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただし適用可否は制度や審査・条件により異なるため、必ず下がるとは考えないでください。
- 創業期の方は、原則として無担保・無保証人で利用できます。
- 返済期間の枠は、新規開業・スタートアップ支援資金の場合、設備資金で20年以内、運転資金で10年以内です。元金返済の据置期間は5年以内の範囲で認められることがあり、据置中は利息のみの支払いになります。
なお、適用される利率、返済期間、据置期間は、審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選べるものではありません。希望は申込時に伝えられますが、決めるのは金融機関です。だからこそ、最初から返済期間を長く見込んだ計画にするのではなく、決まった条件の中で返せるかを確かめる姿勢が必要です。
判断のための4つのステップ
借りるか借りないかは、次の順番で整理すると決めやすくなります。
- 設備資金(内装や厨房設備など)と、開業後の運転資金(仕入れや人件費など)を書き出し、必要な総額を出します。
- 貯金のうち、開業後も手元に残しておきたい額を決めます。
- 貯金だけで必要額と手元に残す額の両方を満たせるかを確認します。満たせるなら、借りない開業も現実的な選択肢です。
- 足りない場合は、足りない分について、売上が想定を下回った場合でも返せる額かを確かめたうえで、借入を検討します。
借りる方向で進める場合は、時間の見通しも必要です。申込から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安で、創業計画書や自己資金を確認できる資料、見積書などの準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。自己資金は、面談の時点で口座に確認できる形にしておきます。審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されますので、料理人としての勤務経験や役職も、計画書の中で具体的に伝えてください。
次に手を動かすなら
まずは、上のステップ1と2の数字を紙に書き出してください。貯金だけで足りるのか、足りないならいくらなのかが見えると、借金への漠然とした怖さが、返せるかどうかという具体的な問いに変わります。
借りるかどうかを決めるのは、あなた自身です。借りる場合も借りない場合も、返済可能額と開業後の手元資金の両方から考えることが、後悔の少ない判断につながります。
数字の組み立てを一人で進めるのが不安な場合は、事業計画や資金計画を専門家と一緒に作り込める窓口があります。適正な借入額の考え方や、売上が下振れした場合の返済の見通しなど、数字の組み立て方から相談しながら整理できます。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























