
金融機関に嫌われる決算書とは?融資が通らない会社の特徴と改善のポイント
金融機関に嫌われる決算書とは、「融資を受けにくい」または「受けられない」決算書を指します。これは単なる数字上の問題ではなく、経営の信頼性・事業の健全性・資金管理能力を総合的に判断する資料として、金融機関が最も注目する部分です。
決算書は、会社の“通信簿”ともいえる存在です。どんなに魅力的な事業アイデアがあっても、決算書が悪ければ金融機関はお金を貸しません。特に、融資審査では「返済原資(キャッシュフロー)」と「財務バランス」を重視しており、これらに問題があると即座に警戒されます。
本記事では、金融機関が嫌う決算書の代表的な特徴を6つ挙げ、なぜそれが問題なのか、どのように改善すべきかを詳しく解説します。経営者の方にとっては、会社の財務を見直す絶好のチェックリストとなるでしょう。
目次
1. 売上総利益がマイナス
売上総利益(粗利益)がマイナスということは、販売した時点で赤字になっていることを意味します。これは「原価割れ販売」が常態化していることを示し、ビジネスモデル自体が成立していないという致命的なサインです。
金融機関から見れば、「いくら融資しても利益が出ないのでは返済できない」と判断され、融資を行う合理的理由がありません。特にスタートアップや中小企業の場合、「販売拡大のための赤字」は理解されることがありますが、長期間続くと経営能力を疑われます。
例えば、仕入れ原価が高騰しているのに販売価格を据え置いたり、過剰な値引きでシェアを取りに行くと、粗利益率は簡単に崩れます。こうした経営判断は一見売上を伸ばしているようで、実際は資金を失う行為です。
改善のポイント:
- 仕入れ・物流コストを分析し、原価率を明確化する。
- 利益率の高い商品・サービスを育成し、低採算事業から撤退する。
- 販売単価の見直しを行い、値引き競争に巻き込まれない営業体制を構築。
- 月次試算表で利益構造を「見える化」し、粗利率をモニタリング。
2. 債務超過である
債務超過とは、資産より負債が上回っている状態を指します。つまり、全ての資産を売却しても借金を返せないという状況です。金融機関から見れば「倒産予備軍」と判断されてもおかしくありません。
特に金融機関は、自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資本)を重視します。これが10%を下回ると「資本体力が弱い」と判断され、追加融資はほぼ不可能になります。中小企業でありがちなのが、長期借入金を短期資金で回しているケース。このような資金繰りは非常に危険です。
改善のポイント:
- まずは黒字化を目指し、利益を積み上げて自己資本を増強する。
- 資産を再評価し、不要な資産を売却して負債を圧縮。
- 金融機関と協議し、長期借入金へのリスケジュール(返済期間延長)を交渉。
- 第三者からの出資(エクイティファイナンス)を検討し、資本構成を健全化。
3. 役員貸付金が多い
会社の資金を役員が個人的に使ってしまう「役員貸付金」が多いと、金融機関は極めて厳しく見ます。これは会社と個人の線引きができていない状態であり、「経営者のモラルリスク」と判断されるからです。
融資担当者は、「会社に融資しても経営者が個人で使うのではないか」という疑念を持ちます。役員貸付金が多いと、どんなに業績が良くても「信頼できない経営者」と評価されてしまうのです。
改善のポイント:
- 役員貸付金は早期に返済し、残高を決算書から消す。
- 給与・報酬はきちんと会社経費として処理し、私的流用を避ける。
- 会社と経営者の財布を完全に分離し、経理担当者にダブルチェックを設ける。
- 決算説明の際に、金融機関へ改善計画を説明し「信頼回復」を図る。
4. 売掛金が多い
売掛金が多い=「回収されていない売上」が多いことを意味します。金融機関は、売掛金の額だけでなく、回収期間にも注目します。
通常、BtoB取引では30〜60日以内の回収が理想ですが、90日以上になると「不良債権化のリスク」と判断されます。さらに、特定の取引先に偏っていると、1社の倒産で資金ショートする危険性もあります。
改善のポイント:
- 回収サイト(入金までの期間)を明文化し、契約書に明記。
- 取引先の信用調査を定期的に実施し、支払い遅延の傾向を把握。
- 回収専任担当を置き、債権管理システムを導入する。
- 不良債権は早期に処理し、貸倒引当金を適正に計上。
5. 仮払金・立替金が多い
仮払金や立替金は「一時的に支払ったが、処理が完了していないお金」です。本来は短期間で清算されるべきものですが、放置されると資金管理が甘い証拠と見なされます。
金融機関は、「お金の流れが不透明な会社」を最も嫌います。経理体制が整っていない会社は、資金の使途が追えず、不正やミスのリスクも高いためです。
特に仮払金が高額なまま数か月残っている場合、「裏金」「経費水増し」といった疑いをかけられることもあります。
改善のポイント:
- 月次決算時に仮払金・立替金を必ず精算し、残高をゼロに近づける。
- 経費処理のルールを明確化し、領収書や用途を厳格に管理。
- 会計システムの導入により、リアルタイムで資金の流れを把握。
6. 税金を滞納している
税金の未納や滞納は、金融機関から最も嫌われる項目です。税金を払っていないということは、「資金繰りが逼迫している」「法令遵守の意識が低い」と見られます。
特に、法人税・消費税・社会保険料などの滞納は、すぐに融資拒否につながるリスクがあります。なぜなら、税務署や年金事務所には“優先弁済権”があり、金融機関よりも先に回収されるためです。つまり、「貸しても返ってこない」と判断されるのです。
改善のポイント:
- 納税計画を年間スケジュールで立て、資金繰りに組み込む。
- 一時的に支払いが難しい場合は、税務署と「分納交渉」を行う。
- 税理士と連携し、節税と納税のバランスを取る経営を意識する。
まとめ:融資を受けやすい決算書を目指すために
以上6つの項目のうち、1つでも該当すれば金融機関は慎重になります。2つ以上重なると「危険信号」と見なされ、融資が難しくなるのが現実です。
逆に、黒字決算・安定したキャッシュフロー・明確な資金用途を示せる会社は、高評価を得て融資を受けやすくなります。
決算書は「融資を取るための武器」にも「信頼を失う原因」にもなります。毎年の決算で結果を出すだけでなく、月次で自社の財務状況を把握することが、融資成功の第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 債務超過でも融資を受けられる可能性はありますか?
債務超過でも、事業再生計画が明確であれば可能です。例えば、新規大型契約の締結や不採算部門の撤退など、改善の根拠を示せれば金融機関は前向きに検討します。経営改善計画書を専門家と一緒に作成するのが効果的です。
Q2. 決算書の見直しはどのタイミングでするべき?
決算直前では遅すぎます。最低でも半期に一度、中間決算で財務状況を確認し、必要に応じて税理士や経営コンサルタントに相談しましょう。融資申請の3か月前から準備を始めるのが理想です。
Q3. 金融機関が重視するポイントは何ですか?
金融機関が重視するのは、「返済可能性」と「信頼性」です。特にキャッシュフローの安定、税金の納付状況、経営者の説明力(経営姿勢)が大きく影響します。数値だけでなく、経営者自身の誠実さも評価対象です。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
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起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。



























