
2つ目のフランチャイズに加盟するとき、創業融資の対象になるかを分ける条件
1つ目のフランチャイズが軌道に乗り、別のブランドにも加盟して事業の柱を増やしたい。いわゆるマルチフランチャイジーを目指すとき、資金調達の入口でつまずくのが「この2件目は、創業融資として申し込めるのか」という問いです。
ところが「フランチャイズ 融資」で検索して出てくる記事の多くは、初めて1店舗目を開くケースを前提に書かれています。2件目以降がどの制度の土俵に乗るのか、既存店の数字がどう見られるのかまで踏み込んだ情報は、なかなか見つかりません。ここではその部分を、判定の順序に沿って整理します。なお本記事は執筆時点の情報にもとづくもので、制度・金利は変わりやすいため、実際の申込みでは申請先で最新の内容をご確認ください。
まず「創業融資の土俵に乗るか」を4つの問いで判定する
2件目の加盟が創業融資の対象になるかどうかは、ブランドが増えるかどうかではなく、誰が事業主体になるかとその主体の事業歴で決まります。次の順番で確認してください。
問い1:いまの会社(個人事業)と同じ主体で2件目を始めますか
既存の法人または個人事業のまま2件目のブランドを増やすなら、その主体には既に事業実績があります。この場合は創業融資ではなく、通常の融資として組み立てるのが基本の考え方になります。事業計画に加えて既存事業の実績が判断材料に加わる、という理解が出発点です。
問い2:税務申告を2期終えていますか
日本政策金融公庫が案内する「創業期の方」とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。1件目を開業してまだ2期を終えていない段階であれば、創業期の枠組みで検討できる可能性があります。逆に2期を終えていれば、創業期という区分からは外れます。
問い3:新しく法人を作る場合、それは「法人成り」ですか
ここが混同されやすい論点です。個人事業主がいま営んでいる事業をそのまま法人化する「法人成り」は、原則として創業融資の対象外で、通常の融資の扱いになります。一方、いまの事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため、創業融資を使うことができます。別ブランドのFCを新設法人で始めるなら、後者に該当する余地があります。
問い4:そもそも1件目と2件目を同時に立ち上げますか
複数ブランドに同時加盟して同時開業するケースでは、そもそも本人にとっての創業そのものです。この場合は創業融資の枠組みで検討することになりますが、必要資金が単店の倍以上になるため、資金計画の説明責任も相応に重くなります。
検索で出てくる情報のうち、いま古くなっているもの
フランチャイズと融資の解説記事には、制度改正前の情報が残っているものが少なくありません。実務で影響が大きい3点を挙げます。
「新創業融資制度」は現役の制度ではありません
無担保・無保証の特例として広く知られていた新創業融資制度は、2024年3月に廃止されています。現在の主力は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金で、こちらは2024年3月までは「新規開業資金」という名称でした。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。旧制度の限度額(3,000万円、うち運転資金1,500万円)を前提に資金計画を立てている記事もありますので、数字を拾うときは制度名と時点を必ず確認してください。無担保・無保証人の枠組み自体は、現在は各融資制度に組み込まれています。
「自己資金は総額の◯分の1が必須」という要件はありません
自己資金の額の◯倍まで借りられる、◯分の1は用意しなければならない、といった説明を見かけますが、現行制度では自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧制度にあった自己資金要件と混同されているケースがあります。とはいえ自己資金の額が審査の重要な判断材料であることは変わらず、多いほど有利になりやすい、という理解が実態に近いところです。なお創業前に自費で取得した資格や、購入した設備・備品、テストマーケティング費用などは「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがありますので、領収書は保管しておいてください。
マルチFCならではの審査材料は「既存店の数字」です
2件目の申込みで1件目と決定的に違うのが、見られる材料が増える点です。審査では、事業として創業した実績がなくても事業計画書と自己資金などをもとに判断されますが、既に決算書がある場合は話が変わります。
創業融資だからといって、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。マルチFCを目指す場面は、まさにこの2つに当てはまりやすい状況です。
したがって2件目の準備は、新しい店舗の事業計画を作ることと並行して、1件目の数字を自分の言葉で説明できるように整理しておくことが実質的な準備になります。売上の推移、原価率、ロイヤリティを含めた固定費、資金繰りの山と谷。これらを本部から渡された資料の転記ではなく、自分で組み立てて話せる状態にしておくと、面談での説明が通りやすくなります。ただし決算の内容と融資の結果を単純に結びつけられるものではありませんので、赤字だから通らない、黒字だから通る、と決めつけずに準備を進めてください。
数字の前提を押さえておく(2026年6月1日現在)
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
返済期間は、新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています。据置期間はいずれも5年以内です。2件目の出店では、1件目の返済が続いている状態で新たな返済が重なりますので、据置期間をどう設定するかが月々のキャッシュフローを大きく左右します。
また、申請から融資実行までは書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で2か月程度は見ておくと安全です。加盟契約の締結時期や物件の引き渡し日から逆算して動いてください。
制度以外で2件目がつまずきやすい3点
- 本部の競業・兼業に関する条項:加盟契約には、他ブランドへの加盟や競合業態の運営について定めが置かれていることがあります。融資の話を進める前に、既存の加盟契約でどこまで認められているかを確認してください。制度上は問題がなくても、契約上できないという事態は起こり得ます。
- ロイヤリティと返済の重なり:ブランドが増えれば、本部へのロイヤリティも本数分だけ発生します。1件目の返済とロイヤリティ、2件目の返済とロイヤリティが同時に走る月の資金繰りを、開業前に月次で置いておくと判断を誤りません。
- 1件目を任せられる人がいるか:2件目の立ち上げに経営者の時間を取られると、1件目の数字が落ちることがあります。既存店の業績は次の審査材料でもありますので、人の手当ては資金計画と同じ重みで考えておきたいところです。
よくある質問
Q. 1件目の融資が残っていても、2件目を申し込めますか
返済中であることだけを理由に申込みができなくなるわけではありません。ただし既存の借入残高と返済状況は判断材料に含まれますので、2件目の返済を上乗せしても資金繰りが回ることを、数字で示せる状態にしておくことが必要になります。
Q. 別の本部のフランチャイズでも、同じ業種なら扱いは変わりますか
制度の判定は、本部が同じかどうかではなく、事業主体とその事業歴で決まります。同業種の別ブランドであっても、既存の法人で始めるなら通常の融資、新しい事業として別法人を設立するなら創業融資が検討対象になる、という考え方は変わりません。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ
マルチフランチャイジーを目指すときの融資は、「2件目だから創業融資」でも「2件目だからもう創業融資は使えない」でもありません。既存の主体でそのまま増やすのか、別事業として新法人を立てるのか、税務申告を2期終えているのか。この3点を先に確定させれば、どの制度の土俵に乗るかは自然に決まります。
そのうえで、廃止済みの旧制度名や自己資金の◯倍といった古い情報に引きずられないこと、そして既存店の決算書が審査材料になる前提で1件目の数字を整理しておくこと。この2つを押さえておけば、2件目の準備は着実に進みます。V-Spiritsグループでは創業融資の支援を712件(2026年6月時点)お手伝いしており、そのうちフランチャイズ関連の支援は85件を占めています。判断に迷う場面があれば、お気軽にご相談ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























