
フランチャイズ開業でも創業融資は使えるのか
結論から言えば、フランチャイズ開業でも日本政策金融公庫の創業融資は利用できます。公庫の融資制度はFC加盟を理由に申し込みを制限するものではなく、実際に多くのFC加盟者が公庫から融資を受けて開業しています。
ただし、融資の審査対象はFC本部ではなく「申込者本人」です。FC本部のブランド力や実績があるからといって、自動的に審査が通るわけではありません。申込者自身の計画性、自己資金、経営者としての姿勢が問われます。
むしろ、FC加盟であることを理由に「本部に任せていれば大丈夫」という姿勢が見えると、審査で厳しく評価されることもあります。
フランチャイズ融資で公庫が重視する3つの要素
自己資金の準備状況
公庫の創業融資では、自己資金の額が審査の重要な判断材料になります。制度上は自己資金の額や割合は決まっていません。実務上は融資希望額の3分の1程度の自己資金があったほうが審査に通りやすくなります。
自己資金は「金額」だけでなく「貯め方」も見られます。過去半年〜1年分の通帳をもとに、計画的にコツコツ貯めた形跡があるかを確認されます。直前に親族から一括で振り込まれた資金は「見せ金」を疑われることがあるため注意が必要です。
事業計画書の具体性
フランチャイズ開業の場合、FC本部が提供する収支モデルをそのまま貼り付けただけの事業計画書では不十分です。公庫の審査担当者は、申込者本人が事業の数字を理解しているかを確認しようとします。
次のような点を自分の言葉で説明できるようにしておく必要があります。
- 売上の根拠(立地の商圏分析、想定客数、客単価)
- 損益分岐点の把握
- 運転資金の見通し(開業後3〜6か月の資金繰り)
- FC本部のロイヤルティや経費構造の理解
FC本部の資料を「参考資料」として活用しつつ、自分の立地・条件に合わせた数字を組み立てることが求められます。
経営者本人の経験と当事者意識
公庫の審査では、申込者が開業する業種やFC運営に関する知識・経験を持っているかが問われます。完全な業界未経験でも融資を受けることは可能ですが、その場合は「なぜこの業種を選んだのか」「経営者としてどう学ぶ予定か」を説明できることが重要です。
特にフランチャイズの場合、「本部が全部やってくれるから大丈夫」という態度は、経営者としての当事者意識が欠如していると判断されるリスクがあります。あくまで経営の主体は自分であり、FC本部はサポートの位置づけであることを面談でも伝えましょう。
融資を通りやすくする5つの実践ポイント
1. FC本部の選定を慎重に行う
融資の審査では、加盟するFC本部の信頼性も間接的に評価されます。廃業率が高いFCや、短期間で大量出店・大量閉店を繰り返しているFCは、公庫の審査担当者に「リスクが高い」と判断されることがあります。
FC本部を選ぶ際は、加盟店の継続率、サポート体制、ロイヤルティの構造、既存加盟店の声などを確認しておきましょう。
2. 事業計画書に自分の言葉を入れる
前述のとおり、FC本部の資料をそのまま写した計画書では説得力がありません。公庫の審査担当者は、数多くのFC案件を見ています。「この部分は本部資料のコピーだな」と見抜かれることは珍しくありません。
自分が出店する予定の立地に合わせた商圏分析、想定客数の根拠、独自の集客プランなどを盛り込むことで、計画の具体性と本人の理解度をアピールできます。
3. 自己資金を計画的に積む
自己資金は融資希望額の3分の1が目安です。たとえば1,000万円の融資を希望する場合、300万円以上の自己資金が手元にあると安心です。
通帳に毎月一定額を積み立てた記録が残っていると、計画性を示す強い材料になります。逆に、直前に大口入金があり出どころが不明確な場合は「見せ金」と疑われるリスクがあるため、資金の動きは早めに整えておきましょう。
4. 小口融資から始めることも検討する
初めて融資を受ける場合、いきなり高額の融資を希望するよりも、必要最低限の金額に抑えたほうが通りやすくなることがあります。300万円程度の小口融資であれば、審査のハードルは比較的低くなります。
返済実績を積んだうえで、開業後に追加融資を申請するという段階的な戦略も有効です。
5. 面談の準備を入念にする
公庫の面談では、事業計画の内容について具体的な質問が飛んできます。以下のような質問を想定し、事前に回答を準備しておきましょう。
- なぜこのFCを選んだのか
- 売上見込みの根拠は何か
- 資金が足りなくなった場合はどうするか
- 本部のサポート内容を具体的に把握しているか
- 家族の理解は得られているか
面談で自信を持って回答できるかどうかが、審査結果を大きく左右します。
融資が通りにくくなるNG行動
フランチャイズ融資で避けるべき行動も押さえておきましょう。
- FC本部の資料を丸写しした事業計画書を提出する
- 「本部が全部やってくれる」という姿勢を面談で見せる
- 自己資金が極端に少ない状態で高額融資を希望する
- 直前に家族や知人から一括で資金を借り入れ、通帳に入金する
- 信用情報に傷がある状態で対策せずに申し込む
- 複数のFC本部を比較検討せず、勢いで加盟を決める
これらは審査担当者に「準備不足」「リスクが高い」と判断される典型的なパターンです。一つでも該当する場合は、申請前に対策を講じておきましょう。
フランチャイズ融資の流れと所要期間
フランチャイズ開業で公庫の創業融資を利用する場合、おおまかな流れは次のとおりです。
- FC本部の選定・加盟契約の検討
- 事業計画書の作成・自己資金の整理
- 公庫への相談・申し込み(書類提出)
- 面談の実施
- 審査(2〜3週間)
- 融資決定・契約手続き
- 振込(着金)
申し込みから振込までの期間はおおむね1か月〜1か月半です。FC本部との加盟契約のタイミングと融資のスケジュールを並行して進める必要があるため、物件取得や内装工事の日程とも調整が必要です。
開業予定日の2〜3か月前には公庫への相談を開始しておくと、スケジュールに余裕を持てます。
よくある質問
Q. フランチャイズだと融資は通りにくいですか?
A. FC加盟であること自体が不利になるわけではありません。ビジネスモデルが確立されている点はプラスに評価されることもあります。ただし、本部に頼り切りの姿勢は審査で厳しく見られるため、経営者本人の計画性と当事者意識が重要です。
Q. 自己資金はいくら必要ですか?
A. 制度上は創業資金総額の10分の1以上が最低要件ですが、実務上は融資希望額の3分の1程度あると審査に通りやすくなります。自己資金の金額だけでなく、計画的に積み立てた経緯が示せることも大切です。
Q. 業界未経験でもFC融資は受けられますか?
A. 受けられます。ただし、未経験の場合は「なぜこの業種を選んだのか」「どのように経営を学ぶ予定か」を面談で説明できるようにしておく必要があります。FC本部の研修制度がある場合は、その内容を把握しておくと説得力が増します。
Q. FC本部の資料はどう活用すればいいですか?
A. 本部が提供する収支モデルや実績データは「参考資料」として活用し、自分の出店条件に合わせた数字に組み替えてください。本部資料のコピーだけでは審査を通過するのは困難です。
まとめ
フランチャイズ開業でも日本政策金融公庫の創業融資は利用できます。ただし、審査ではFC本部のブランド力ではなく、申込者本人の計画性、自己資金の準備状況、事業計画の具体性が問われます。
融資を通りやすくするためには、FC本部の慎重な選定、自分の言葉で組み立てた事業計画書、計画的に積んだ自己資金、そして入念な面談準備が鍵になります。
「フランチャイズだから通る」「本部があるから大丈夫」と油断せず、経営者として自分の事業を自分の言葉で説明できる状態を目指して準備を進めましょう。不安がある場合は、融資に詳しい専門家に早めに相談することで、書類の精度と面談の自信を高めることができます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント、FC専門融資コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























