
ジムの創業融資は担保なし・保証人なしで受けられる?3つの調達ルートと保証の仕組みを比較
ジムの開業で担保も保証人もないときに残る3つの調達ルート
ジムの開業資金を調べていくと、「担保に出せる不動産がない」「身内に保証人を頼みたくない」というところで手が止まる方が多くいらっしゃいます。ただ、この状態はジムという業態ではむしろ標準的です。
トレーニングマシン、内装の造作、防音や床の補強といったジムの主要な投資は、そのまま金融機関の担保になる性質のものではありません。つまり、担保を出せないから不利というより、そもそも担保を前提にしない調達手段を選ぶのが自然な業態だということです。
この記事では、担保も保証人も用意できない前提で、ジムの開業資金にどんな調達ルートが残るのかを、「誰が保証を担うのか」という視点で3つに整理して比較します。数字は2026年8月時点で確認できる制度情報にもとづくもので、制度や金利は変わることがあるため、実際の申請時には最新の公式情報をご確認ください。
「担保がない」より「誰が保証するのか」で手段を並べる
担保・保証人まわりの情報がわかりにくいのは、手段ごとに保証の担い手が違うのに、まとめて「無担保・無保証」と语られてしまうからです。整理すると次のようになります。
- 日本政策金融公庫の創業融資:創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます。
- 自治体の制度融資:信用保証協会が保証を付けます。個人の保証人を立てるかどうかとは別の仕組みです。
- マシンのリース:担保は不要でも、連帯保証人が必要になる契約が一般的です。
担保・保証人を避けたつもりでリースを選んだ結果、連帯保証人を求められる、という順序の入れ替わりが起きるのはこのためです。以下、順番に見ていきます。
ルート1:日本政策金融公庫の創業融資
もっとも中心になるのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。かつての「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、現在は各融資制度に無担保・無保証人の枠組みが組み込まれています。
公庫の国民生活事業では、次のいずれかに当てはまる方を「創業期の方」として案内しています。
- 新たに事業を始める方
- 事業開始後、税務申告を2期終えていない方
この創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、返済期間は新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内、据置期間はいずれも5年以内とされています。
ジムは設備資金の比重が大きい業態ですので、マシンや内装を設備資金として20年以内の枠で組み、開業後しばらくの運転資金を分けて考えると、月々の返済額の見え方が変わってきます。据置期間中は利息のみの支払いになるため、会員数が積み上がるまでの期間に重ねる設計も考えられます。
金利については、2026年6月1日現在の基準利率で、税務申告を2期終えていない場合が年3.45〜5.15%です。
一方で、創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。この引下げは担保の有無によって対象が変わるものではありません。「無担保で借りる人だけの優遇」と説明されていることがありますが、そうではありません。ただし適用可否は利用する制度や審査・条件により異なりますので、必ず下がると考えず、申請先でご確認ください。

💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころの感覚で申し上げますと、担保がないこと自体を長く説明する場面はそれほど多くありませんでした。聞かれるのは資金の使い道と、返していける根拠のほうです。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。担保の代わりを探すより、見積書と自己資金の入金の経緯を説明できる状態を先に作るほうが、話は早く進みます。
ルート2:自治体の制度融資
自治体が用意している制度融資も選択肢になります。よく「信用保証協会経由の融資」と説明されますが、これは正確ではありません。制度融資は自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、お金の出し手は民間金融機関、信用保証協会は保証を付ける役割、自治体は利子補給や預託などで関与します。
つまり、個人の保証人を探す代わりに、信用保証協会が保証の役割を担う形です。担保に出せる資産がなく、身内に保証を頼むのも避けたいという状況では、この構造を知っておくと相談先の選び方が変わってきます。
ルート3:マシンをリースで導入する
ジムの場合、トレーニングマシンをリースで揃えるという選択肢が現実的に存在します。初期の現金支出を抑えられる点は魅力ですが、担保・保証人という切り口で見ると注意すべき点があります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
担保を出さずに済む代わりに、連帯保証人という形で人的な保証が出てくることがあるわけです。融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わりますので、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
3つのルートの違いを整理する
| ルート | 担保 | 保証の担い手 | ジムでの向き |
|---|---|---|---|
| 公庫の創業融資 | 創業期の方は原則不要 | 原則として保証人を立てない | 設備資金と運転資金をまとめて組みたいとき |
| 自治体の制度融資 | 制度により異なる | 信用保証協会 | 地域の金融機関と関係をつくりたいとき |
| マシンのリース | 不要 | 連帯保証人 | 機器の入れ替えを前提に現金支出を抑えたいとき |
担保がない前提で、先に整えておくこと
担保の代わりになるものを探すより、審査で実際に見られる部分を整えるほうが現実的です。
自己資金の扱い:制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧「新創業融資制度」にあった10分の1要件のような固定要件は、現行制度にはないものです。ただし自己資金の額は重要な判断材料になりますので、面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
みなし自己資金:開業前に自費で取得した資格や、先に購入した備品、テストマーケティングの費用などは、一定の範囲で自己資金として評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。
経験の示し方:トレーナーとしての指導経験はあっても経営が未経験、というケースは多くあります。同業のメンターから助言を受けている、経理を業務委託に任せている、といった対策は経営への関与としては弱いとされます。事業経験者を役員に迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力が出ます。
決算書:創業融資だからといって決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社でも、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合はその会社の決算書も確認の対象になります。
よくある質問
Q. 無担保だと、金利はどのくらい変わりますか
A. 2026年6月1日現在の基準利率で比べますと、無税務申告2期未了で年3.45〜5.15%、有担保で年2.50〜4.80%です。幅があるのは返済期間や据置期間の有無、制度ごとの規定によるためで、実際の適用利率は審査や条件によって決まります。
Q. 「新創業融資制度」なら無担保・無保証で借りられると聞きました
A. 新創業融資制度は2024年3月に廃止されています。現在は各融資制度に無担保・無保証人の枠組みが組み込まれており、創業期の方が対象として案内されています。古い情報が残っている記事も多いため、制度名で検索するときはご注意ください。
Q. 申し込みからどのくらいで資金が入りますか
A. 書類提出後おおむね3週間から1か月が実行までの目安です。創業計画書や見積書などの準備期間を含めると、合計で約2か月を見込んでおくと安全です。物件の契約や工事の日程から逆算して動き始めるとよいでしょう。
まとめ
ジムの開業で担保も保証人もないという状況は、業態の性質からいって珍しいことではありません。考えるべきは担保の代わりを探すことではなく、公庫の創業融資、自治体の制度融資、マシンのリースという3つのルートで、保証を担うのが誰になるのかを見比べることです。とくにリースは担保が不要な代わりに連帯保証人が出てくる契約が多く、避けたかったはずの論点が別の場所で戻ってくることがあります。
そのうえで、自己資金の見せ方、経験の補い方、決算書の準備といった、審査で実際に見られる部分を先に整えておくと、相談がスムーズに進みます。制度や金利は変わりますので、この記事の数字は2026年8月時点の整理としてお読みいただき、実際の判断は最新の公式情報と専門家への相談を組み合わせて進めてください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























