
家事代行サービスで起業するときの創業融資|人材費と運転資金の調達のポイント
家事代行サービスは、店舗や大型設備がいらず、比較的少ない初期費用で始めやすいビジネスです。その一方で、スタッフの人件費や採用・広告にかかる費用が先に出ていくため、軌道に乗るまでの「運転資金」をどう確保するかが起業の成否を左右します。この記事では、家事代行で起業する方に向けて、日本政策金融公庫の創業融資の使い方と、人材費・運転資金を中心にした資金計画の考え方を整理します。
なお、本記事は執筆時点(2026年7月)の情報にもとづく一般的な解説です。融資制度や金利は変わることがあるため、実際の申請にあたっては日本政策金融公庫など公式の最新情報を必ずご確認ください。
家事代行の起業で「運転資金」が主役になる理由
多くの業種では、内装や機械などの「設備資金」がまとまって必要になります。これに対して家事代行は、自宅やレンタルオフィスを拠点に、清掃用品や移動手段があれば始められるため、設備資金は比較的小さく済みます。
代わりに重くなるのが運転資金です。家事代行はサービスを提供するスタッフが売上の源泉なので、依頼が安定するまでの間も、採用費・人件費・損害保険料・集客のための広告費などが先行して発生します。創業融資を考えるときは、「何を買うか」よりも「軌道に乗るまでの数か月をどう回すか」を中心に資金を組み立てるのがポイントです。
創業融資の基本:日本政策金融公庫の制度を知る
個人事業主・中小企業の創業時の代表的な選択肢が、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に従来の「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度になっています。主な特徴は次のとおりです。
- 融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)。家事代行の創業ではこの枠を満額使うことは少なく、必要額に絞って申請するのが一般的
- 原則として無担保・無保証人で利用できる
- 事業の実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査される
- 元金返済の据置期間を5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、開業初期の負担を抑えやすい
金利は、2026年6月1日現在で創業期(税務申告を2期終えていない時期)の基準利率が年3.45〜5.15%です。創業期に利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただしこれは案内上の一般的な説明で、実際の適用可否や利率は制度・審査・条件によって変わるため、申請先で確認してください。
いくら借りられる?家事代行の資金計画の組み立て方
借入額は「希望額」ではなく「事業計画から逆算した必要額」で考えます。家事代行の場合、次のような費用を洗い出すと運転資金の見当がつけやすくなります。
- 採用費(求人広告・登録スタッフの募集)
- 人件費(依頼が埋まる前のスタッフ給与も含めて見込む)
- 集客費(ホームページ制作やインターネット広告など)
- 損害保険料・備品・移動にかかる費用
ここで注意したいのが、運転資金として認められる範囲です。スタッフの給与は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。一方で、経営者自身の生活費は事業と無関係な支出のため運転資金の対象になりません。生活費を運転資金に含めて申請すると計画書の信頼性を損ねるため、事業に必要な支出に絞って積み上げましょう。
自己資金と事業計画書で見られるポイント
公庫の創業融資では、制度上は自己資金の額や割合の決まりはありません。ただし自己資金は審査の重要な判断材料で、自分でコツコツ準備してきた資金が多いほど、計画の実現性を評価されやすくなります。創業前に自費で購入した備品やテストマーケティングの費用などは、「みなし自己資金」として一定の範囲で評価されることがあるため、領収書は必ず保管しておきましょう。
事業計画書では、家事代行ならではの数字に説得力を持たせることが大切です。スタッフ1人あたりの稼働率(1日に対応できる件数)、客単価、リピート率、依頼が安定するまでの期間などを、根拠を添えて示します。なお、敷金・礼金・仲介手数料・保証会社費用は計画書に記載しないのが一般的です。
申請のスケジュールと注意点
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書や自己資金の確認資料、見積書などの準備期間を含めると、合計で約2か月を見ておくと安心です。資金が必要になるタイミングから逆算して、早めに準備を始めましょう。
また、スタッフを雇用して事業を広げていく家事代行では、雇用契約や社会保険などの労務面の整備も避けて通れません。こうした手続きは専門的な判断が必要になるため、社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めるのが安全です。融資・労務・税務をまとめて相談できる体制を整えておくと、起業後の動きがスムーズになります。
よくある質問
Q. 設備がほとんどないのに融資を受けられますか?
A. 設備が少なくても、運転資金を目的に創業融資を申請することは可能です。重要なのは設備の有無ではなく、事業計画の説得力と、運転資金の使いみちが明確かどうかです。人件費や採用費など、事業に必要な支出を根拠とともに示せるように準備しましょう。
Q. 自己資金はいくら用意すればよいですか?
A. 制度上の決まった割合はありませんが、自己資金が多いほど審査では有利になりやすい傾向があります。金額の目安は事業規模や計画によって変わるため、必要な運転資金とのバランスで考えるとよいでしょう。
まとめ
家事代行サービスの起業は、設備資金が小さい分、人件費や採用費などの運転資金をいかに計画的に確保するかがカギになります。日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人や据置期間といった創業期に使いやすい仕組みが整っており、家事代行のような労働集約型のビジネスとも相性が良い選択肢です。事業計画書で稼働率や人件費の見込みを丁寧に示し、自己資金の準備も進めながら、無理のない資金計画で起業に踏み出しましょう。判断に迷うときは、融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























