
創業計画書 記入例 個人事業主の書き方|公庫書式テンプレート&ポイント解説
個人事業主として開業する際、日本政策金融公庫の創業融資を活用する方は少なくありません。その際に必要となる「創業計画書」は、融資審査の合否を大きく左右する重要書類です。
しかし、個人事業主の創業計画書は、法人と比べて事業主個人の人物像・自己資金の準備状況・税務処理の見通しが審査でより細かく見られる傾向があります。「経験はあるけれど、書類の書き方がわからない」と悩む方も多いのが実情です。
この記事では、日本政策金融公庫の創業計画書フォーマットに沿って、個人事業主が記入する際の具体例とポイントを項目別に解説します。これから個人事業主として開業して融資を申し込む方、再申請を検討している方の参考になれば幸いです。
なお、制度内容や書式は変更される可能性があるため、必ず日本政策金融公庫の最新公式情報も併せて確認してください。
日本政策金融公庫の創業計画書|9つの記入項目
公庫の創業計画書は、概ね次の項目で構成されています。本記事執筆時点の標準フォーマットを前提に解説しますが、最新の書式は公庫公式サイトでご確認ください。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係等
- 従業員
- お借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(収支計画)
- 自由記述欄(参考事項)
順番に、個人事業主を想定した記入例とポイントを見ていきます。
項目1:創業の動機|個人事業主の記入例
記入例(Webデザイナーとして独立する場合)
「制作会社で8年間Webデザイナーとして勤務し、うち4年間はディレクター業務も兼務してきました。中小企業向けに対応する制作会社が地域に少なく、前職時代から個人的に副業として地元企業から制作依頼を受けるケースが増えてきたため、本格的に独立して個人事業主として事業を行うことを決意しました。前職取引先からの継続案件と、副業で築いた既存クライアント計5社(年間想定売上720万円)を基盤に、安定したスタートを切れる見通しが立ったタイミングでの開業です。」
記入のポイント
- 「なぜ独立か」「なぜいまのタイミングか」を、経験・取引先・市場ニーズの3つで根拠づける
- 個人事業主の場合、すでに副業として実績がある場合は積極的に書く
- 抽象的な動機(「自由に働きたい」など)だけでは弱い
項目2:経営者の略歴等|個人事業主の記入例
記入のポイント
職務経歴は、業務内容・売上・担当役割を数字で書きます。「○年間Webデザイナーとして従事」だけでなく、関わったプロジェクト規模・クライアント数・売上貢献を具体的に書きます。
例:「20XX年4月〜20XX年3月 株式会社△△ Webデザイナー兼ディレクター。中小企業向けコーポレートサイト・ECサイト制作を年間40案件担当。1案件あたり50〜300万円規模、年間売上貢献約3,500万円。20XX年6月よりディレクターとして新人2名のマネジメントも兼任。」
また、個人事業主の場合、過去の副業実績や個人的なポートフォリオも書いておくと評価材料になります。
項目3:取扱商品・サービス|個人事業主の記入例
記入のポイント
主力サービスの単価・原価率・粗利を整理して書きます。複数のサービスを提供する場合は、売上構成比とともに記入すると説得力が増します。
記入例:
- コーポレートサイト制作:1サイト50〜100万円 原価率20% 売上構成比50%
- ECサイト制作:1サイト150〜300万円 原価率25% 売上構成比30%
- 運用保守(月額契約):月額3〜10万円 原価率15% 売上構成比20%
セールスポイント:「中小企業向けに特化し、企画・デザイン・開発・公開後の運用までワンストップ対応。SEO・コンテンツ運用も含めたパッケージ提案ができる点で大手制作会社・フリーランスとの差別化を図る」
項目4:取引先・取引関係等|個人事業主の記入例
記入のポイント
販売先(既存クライアント・想定新規)と仕入先(外注先・サブスク系ツール費用など)を分けます。個人事業主は仕入先が少なくなりがちですが、外注先の体制があれば書くと信頼性が高まります。
例:「販売先:既存クライアント5社(年間取引予定)/新規クライアント月1〜2社(紹介・SNS経由)。仕入先:コーディング外注パートナー2社(必要時のみ発注)/サブスク系ツール(Adobe・サーバ等)月3万円程度。」
入金サイクル(月末締め翌月末払い等)も書いておくと、資金繰りの理解度が伝わります。
項目5:従業員|個人事業主の記入例
開業時に従業員がいなくても、家族の専従者(配偶者など)の予定があれば書きます。例:「事業主1名のみ。当面従業員雇用予定なし。妻が経理補助として専従者となる予定(月10時間程度)」
項目6:お借入の状況|個人事業主の記入例
個人の住宅ローン・自動車ローン・カードローン・教育ローン・奨学金など、すべて正確に申告します。記入漏れや虚偽は、信用情報照会で必ず発覚するため絶対にしてはいけません。借入があっても、遅延なく返済を続けていれば致命的にはなりません。
個人事業主は、事業主個人の借入=事業の信用力に直結します。返済中の借入は隠さず申告するのが鉄則です。
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項目7:必要な資金と調達方法|個人事業主の記入例
個人事業主は、業種によって設備資金が少なく運転資金中心になるケースが多いです。Webデザイナーやコンサルタント、士業のように店舗を持たない業種では特にその傾向が顕著です。
設備資金の記入例
- PC・周辺機器(MacBook Pro・モニター2台):60万円
- デザイン用ソフトウェア(Adobe等年間契約):10万円
- 事務机・椅子・ファイル類:15万円
- 合計:85万円
運転資金の記入例
- 外注費(コーディング・撮影等3か月分):60万円
- 家賃(自宅兼事務所案分3か月分):30万円
- 通信費・光熱費(3か月分):18万円
- 営業活動費(広告・交通費3か月分):30万円
- 生活費の補填(3か月分):90万円
- 合計:228万円
調達方法
- 自己資金:150万円
- 日本政策金融公庫からの借入:200万円
- 合計:350万円
個人事業主の場合、運転資金の項目に「生活費の補填」を含めるかどうかは判断が分かれます。事業が軌道に乗るまでの個人の生活費は、別途確保しておくのが理想です。創業計画書には事業に直接関係する経費を中心に書き、生活費は自己資金で賄える前提にする方が審査での印象は良くなります。
項目8:事業の見通し(収支計画)|個人事業主の記入例
記入のポイント
「単価×案件数×営業日数」のような根拠式で月商を組み立てます。Webデザイナーであれば、案件単価・受注ペース・継続案件数で売上を積み上げます。
記入例(月商の根拠):
- 新規制作案件:1案件80万円×月1.5件=120万円
- 運用保守(月額契約):5社×月5万円=25万円
- 小規模修正案件:1案件10万円×月3件=30万円
- 月商目安:約175万円
経費面では、外注費20万円、通信費・光熱費6万円、ツール代3万円、交通費・営業費5万円、税金・社会保険積立など含めて約60〜70万円。月の手取り(事業所得)は約100〜110万円の見込み。
軌道に乗るまでの3か月は売上6〜7割からスタートする想定で、運転資金がショートしない計画かを確認します。
項目9:自由記述欄(参考事項)|個人事業主の記入例
ここで他の項目で書ききれなかった事業の強み・差別化要素・リスク対策を補足します。
記入例:
「既存クライアント基盤:前職時代から築いた取引先5社が継続案件として確定済み。年間想定売上720万円が初年度から見込まれる。SNS・紹介経由の新規開拓:ポートフォリオサイト・X(旧Twitter)アカウントを開業前から運用しており、フォロワー約3,000人。月1〜2件の新規問い合わせを獲得中。リスク対策:制作案件が落ち込んだ場合に備えて、月額運用保守契約の比率を売上の20〜30%まで引き上げる計画。」
個人事業主の創業計画書|書く際の注意点
自己資金は1年以上前から計画的に貯める
開業直前にまとめて口座へ振り込まれた資金は「見せ金」と判断され、自己資金として認められない可能性が高いです。最低でも開業1年前から、毎月コツコツと貯めてきた経緯が通帳で確認できる状態にしておきましょう。
事業用と個人用の口座を分ける
個人事業主は事業用口座を別途用意するのが基本です。融資後の資金管理がしやすくなり、確定申告もやりやすくなります。
融資希望額は身の丈に合った金額にする
希望額が大きすぎると審査で減額・否決される可能性があります。個人事業主の場合、自己資金の3〜5倍程度が目安。資金使途の根拠を明示できる範囲で希望額を設定するのが現実的です。
まとめ|個人事業主の創業計画書は信用力と継続性が鍵
個人事業主の創業計画書は、事業主個人の信用力(信用情報・税金滞納の有無・自己資金の出どころ)と、事業の継続性(既存取引先・想定売上の根拠)を両方しっかり示すことが重要です。
書式自体は決まっているため、各項目に何を書くか押さえれば、難易度はそれほど高くありません。「事業主本人=経営者」である個人事業主だからこそ、人物像と数字の根拠の両方に納得感を持たせることが審査通過の分かれ目になります。
「自分の創業計画書で公庫の創業融資が通るか不安」「より説得力のある書き方を教えてほしい」といった疑問があれば、専門家への相談が近道です。融資・税務・経営の領域に精通した専門家チームが、最適な計画書ブラッシュアップをご提案します。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























