起業家や小規模事業者のみなさん、資金繰りに悩んだ経験はありませんか？ズバリ申し上げます。資金調達の成功のカギは、金融機関との付き合い方を知っているかどうかにかかっています。そして、金融機関といっても「銀行」と「信用金庫」では、その性質や目的がまったく違うのです。
今回は、起業支援の現場でよく聞かれる「銀行と信用金庫の違い」について、わかりやすく丁寧に解説いたします。
1. 根本的な違いは“営利”か“共益”か
まず、銀行と信用金庫の最大の違いは、設立目的にあります。
銀行は「営利法人」、すなわち株主の利益を追求することが大前提の企業です。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行など、日本を代表するメガバンクがこれにあたります。全国規模で展開し、法人から個人まで幅広くサービスを提供しています。
一方、信用金庫は「非営利の協同組織」です。地域の中小企業や個人事業主の支援を目的とし、地域社会の繁栄を第一に考える金融機関です。たとえば、東京信用金庫、川崎信用金庫など、名前に「信用金庫」がつく金融機関が該当します。利益よりも、地域の役に立つことが重視されているのが大きな特徴です。
2. 融資のスタンスがまったく違う
「創業したばかりで実績がないのに、どうすればお金を借りられるのか？」
このような質問をいただいた際、私は「信用金庫に相談してみてください」とアドバイスします。
というのも、銀行は融資の際に数字を重視します。過去の決算書、財務内容、担保や保証人など、形式的な要件がそろっていなければ門前払いというケースもあります。特に創業まもない方にはハードルが高いのが実情です。
一方、信用金庫は“人柄”や“事業への熱意”も審査の材料とします。たとえ実績が乏しくても、しっかりした事業計画と将来のビジョンがあれば、対話を通じて融資の可能性が開かれるのです。まさに「顔が見える金融機関」と言えるでしょう。
3. 営業エリアと対象者の違い
もうひとつの大きな違いが、取引対象とエリアの制限です。
信用金庫は、営業地域が法律で定められており、その地域内に住んでいるか、働いている人、またはその地域で事業を営んでいる法人しか利用できません。逆に言えば、地域外の人には融資も預金口座も提供できないのです。
銀行はこのような制限がなく、全国どこでも誰でも利用可能です。インターネットバンキングやグローバルな取引にも強く、大企業や外資系企業との取引実績も豊富です。
4. サービスと関係性の違い
サービス面でも違いがあります。銀行は、大量の顧客を相手にしているため、サービスは効率重視で画一的です。一方、信用金庫は、地域密着型で顧客との関係性を大切にします。担当者が定期的に訪問し、現場の状況を把握しながら柔軟に対応してくれるケースも多いのです。
さらに、信用金庫は地域の商工会議所や自治体とも連携しており、補助金や助成金の情報提供、経営セミナー、異業種交流会の開催など、単なる金融支援にとどまらないサポート体制が整っている点も見逃せません。
5. 両行とうまく付き合うのが正解
起業家の資金調達では、「どちらか一方に絞る」よりも、「両行とうまく付き合う」ことが重要です。たとえば、創業期は信用金庫と強固な関係を築き、事業が安定した段階で銀行からの借入を拡大する。こうした段階的な戦略が、資金繰りの安定につながります。
金融機関との関係性は、日頃の信頼構築がカギ。口座を開設するだけでなく、定期的に面談を持ち、事業の進捗や困りごとを共有することが、いざという時の大きな支えになります。
6. 金融機関との関係を“育てる”という視点を持とう
最後に、起業家として最も大切な意識のひとつをお伝えします。それは、金融機関との関係は“築く”だけではなく、“育てていく”ものだという視点です。
初回の融資で満足してしまい、その後は報告も相談もなく数年放置、というケースもよく見られます。ズバリ申し上げますが、それでは次の融資や支援は受けにくくなります。金融機関は、信頼できる事業者と継続的な関係を望んでいます。だからこそ、売上が上がったときだけでなく、資金繰りが苦しいときこそ、正直に状況を説明し、相談を持ちかけてみてください。
また、事業報告を定期的に行うことも効果的です。四半期ごとの損益の推移や、設備投資の計画、従業員の増減、売上先の変化など、簡単なレポートにして渡すだけでも、金融機関からの信頼度は格段に高まります。
信用金庫では、支店長や融資担当者との距離も近く、良好な関係を保てば、将来的には「うちでこんな制度融資が始まりましたよ」と有利な情報を先に教えてもらえることもあるのです。つまり、金融機関との関係は単なる「お金を借りる場」ではなく、「経営のパートナーシップ」だということをぜひ意識してみてください。
引き続き、資金繰りや起業準備、融資に関するご相談も受け付けておりますので、どうぞお気軽にお声かけくださいね。あなたの夢の実現をしっかりサポートいたします。
