
いまさら聞けない「赤字」だとどんな影響があるの?──経営における赤字の意味と現実的な対応策
「赤字」という言葉はよく耳にするものの、その実態や、放置したときにどうなるのかを正しく理解している方は意外と少ないものです。今回は、「赤字とは何か」「どんな影響があるのか」「そのままにしておくとどうなるのか」を、やさしく整理して解説します。
① 赤字とは?何が起きている状態か
赤字とはざっくり言うと、収入より支出が大きくなっている状態のことです。具体的には、売上から仕入れや人件費、設備費などの費用を引いた結果がマイナスのとき、損失を出している、つまり赤字ということになります。
これはビジネスで「儲かっていない」状態であり、繰り返せば企業の体力がジワジワと減っていきます。
② どんな影響が出るのか?経営にとってのリスク
A. 資金繰りが厳しくなる
赤字になると手元の現金が減り、仕入れや給与、支払いが難しくなります。資金繰りが悪化すると、仕入先への支払い遅れ、従業員への給与遅延……という重大な事態にもつながります。
B. 借入や融資での信用力が下がる
銀行や金融機関は、「今後利益が出せるか」を厳しくチェックします。赤字企業は信用が低いため、融資条件が悪くなったり、融資自体が難しくなる可能性があります。金融機関から見たら、「返済するチカラ」がない企業だと評価するからです。
C. 出資や補助金の審査に影響
赤字が続くと、「事業が軌道に乗っていない」と見なされ、投資家や公的な補助金の審査でもマイナス評価になります。もちろん、赤字を掘って新しいことにチャンレンジするような技術力のある夢のあるスタートアップ企業、ベンチャー企業ではこの限りではない場合もあります。
D. ストレスや意思決定への悪影響
経営者や社員にとっても、赤字が続けば精神的な負担や焦りが増し、判断がブレやすくなるケースもあります。
③ 赤字を放っておくとどうなるか?
-
蓄積損失が増える
赤字が続くと「累積損失」となり、過去の赤字を補填しない限り改善は難しくなります。 -
資金が枯渇して倒産リスク
現金が底を尽きれば、最悪の場合、事業継続が不可能になります。 -
資本がマイナスに
資本金が減り完全な債務超過に陥ると、信用を大きく失う可能性があります。
④ 赤字の原因としてよくあるケース
-
価格設定が適切でない:原価より安くしてしまっていたり、利益が残らない設定になっている。
-
思ったより売れない:見込みが甘かった、需要の見誤り。
-
コスト管理が適切でない:無駄な経費、過剰な在庫、人件費の高止まりなど。
-
季節変動・イベントで一時的に赤字:繁忙期と閑散期の差が激しい業種など。
- 最初は赤字覚悟でベンチャービジネス:多額の開発コストを掛けたベンチャービジネスにチャレンジしている場合
⑤ 赤字を改善するための3ステップ
ステップ1:現状の「見える化」
-
損益計算書やキャッシュフロー表を整理し、「何がどれくらい足りないのか」を明確にする。
-
売上、原価、人件費、固定費の四つを軸に、収支の構造を把握します。
ステップ2:改善計画を立てる
-
売上アップ策 → 販促、価格調整、新商品など。
-
コスト削減策 → 材料見直し、外注化、固定費の見直し。
-
商品構成を見直し、利益率の高い商品にシフトする例もあります。
ステップ3:モニタリングと見直し
-
毎月の数字をチェックする習慣を持つ。
-
改善が進まなければ、理由を考え、計画を修正しながら継続します。
⑥ 赤字を抑えつつ成長するヒント
-
早めに手を打つこと:赤字を流すのではなく、初期のうちに対策することで被害を最小化できます。
-
小さく試して改善する:新サービスや商品は少量で試験販売し、反応を見てから本格投入。
-
支援を活用する:税理士や中小企業診断士のサポートを得て、改善プランを立てると心強いです。
■最後に:赤字は“終わりの合図”ではなく“見直しの合図”
赤字そのものは終わりのサインではなく、「今のやり方を見直すタイミング」を知らせるサインです。数字に向き合い、原因を突き止め、改善策を講じることで、黒字へと立て直すことは十分可能です。
特に起業初期や小規模経営では、一度の赤字で諦めず、早めに対応を始めることが黒字化への第一歩になります。必要であれば決算数字の整理、改善アクションの設計、資金計画の立て方など、お手伝いいたしますので、どうぞお気軽にお声がけください。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!
この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。