
製造業の追加融資は受けられる?開業後に設備が足りなくなったときの一問一答
独立して工場を構え、これからというタイミングで受注が想定より伸びる。うれしい話のはずが、手元の設備では回りきらず、増設したいのに資金がない。製造業で独立された方から、開業1〜2年目にこうしたご相談をいただくことがよくあります。
開業時に創業融資を受けていると、「もう借りたのだから、しばらくは追加で借りられないのでは」と考えてしまいがちです。しかし実際には、増設の必要性を数字で説明できれば、追加融資が選択肢になります。
この記事では、製造業で開業後に設備が足りなくなったときの追加融資について、よくいただく質問に一問一答の形でお答えします。なお本文中の金利・返済期間などの数字は、日本政策金融公庫の2026年6月1日現在の公表内容にもとづくものです。制度や利率は変わることがあるため、申請時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
まず確認したい2つのこと
自社が「創業期」に当たるかどうか
日本政策金融公庫では、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を「創業期の方」として案内しています。開業から1〜2年で、まだ2期分の申告を終えていなければ、創業期向けの枠組みを引き続き使える可能性があります。
創業期の方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用でき、利率についても原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが案内されています。ここで注意したいのは、「雇用の拡大を図る場合」は対象者の区分ではなく、引下げ幅が大きくなる条件だという点です。また、実際の適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なる可能性があるため、必ず下がるものとして資金計画を組まないでください。
今回の資金が設備資金か運転資金か
設備を増やす場面では、機械そのものの代金だけでなく、材料の仕入れが増えたり、入金までのつなぎが必要になったりと、運転資金も同時に膨らみます。資金使途は「事業に必要な支出」であることが前提です。設備資金と運転資金では返済期間の考え方が異なるため、申請前に切り分けておくと計画が組みやすくなります。
追加融資の可否とタイミングに関するQ&A
Q.開業して1年ですが、追加融資は受けられますか
受けられる可能性はあります。開業後は、創業時と違って実際の売上・仕入・入金サイクルという実績データが手元にあります。これは審査にとってマイナスではなく、むしろ計画の裏付けとして使える材料です。受注残や引き合いの状況、現状の設備能力の限界を数字で示し、増設によって生産量と売上がどう変わるかを説明できるかどうかが焦点になります。
Q.創業融資を借りて間もないのですが、また借りられますか
借入から日が浅いこと自体が申請を妨げるわけではありません。ただし、既存の借入の返済が始まっている状態で新たな返済が乗るため、月々の返済額の合計を売上・利益で無理なく賄えるかが見られます。前回の資金使途どおりに使えているか、返済が滞っていないかも当然確認されます。前回の計画と今回の申請の整合性が取れていることが前提になります。
Q.申し込みから実行までどれくらいかかりますか
書類提出後、おおむね3週間から1か月程度が目安です。事業計画書や見積書などの書類を整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと安全です。設備の納期が長い製造機械では、この2か月を逆算して動き出す必要があります。
条件・数字に関するQ&A
Q.金利は最初に借りたときと変わりますか
変わる可能性があります。日本政策金融公庫(国民生活事業)の2026年6月1日現在の基準利率は、税務申告2期未了の場合が年3.45〜5.15%、2期以上完了している場合が年3.50〜5.20%です。担保を提供する場合は年2.50〜4.80%と、全体的に低い水準に設定されています。
幅があるのは、返済期間の長短、据置期間の有無、制度ごとの規定などで決まるためです。また、国の政策目標に合致する制度が適用されると、基準利率から段階的に下がる特別利率が使われる場合もあります。いずれも実際の適用は審査と条件によりますので、最も低い数字を前提に試算しないほうが安全です。
Q.設備資金の返済期間はどれくらい取れますか
新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、設備資金が20年以内(据置期間5年以内)、運転資金が原則10年以内(据置期間5年以内)とされています。据置期間中は利息のみの支払いになるため、設備が立ち上がって稼働が安定するまでの負担を軽くできます。
製造設備は、搬入・据付・試運転を経て本格稼働するまでに時間差があります。稼働前から元金返済が始まる設計にしてしまうと、増産の効果が出る前に資金繰りが苦しくなります。据置期間をどう設定するかは、この時間差を踏まえて考えてください。
Q.追加融資でも自己資金は必要ですか
制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金は審査の重要な判断材料のひとつであり、多いほど有利になりやすいのは追加融資でも同じです。開業後であれば、事業で積み上げた利益や内部留保がその役割を果たします。投資額の全額を借入で賄う計画よりも、一部を自己資金で負担する計画のほうが説明しやすくなります。
調達手段の選び方に関するQ&A
Q.リースで導入するのと融資で購入するのはどちらがよいですか
リースは初期費用を抑えられる点がメリットですが、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
製造設備は稼働期間が長く、償却を終えた後も使い続けられることが少なくありません。所有権を持てるかどうかは、長期で見ると差が出やすい論点です。融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
Q.補助金の採択を待ってから設備を入れるべきですか
補助金は原則として後払いで、交付決定の前に発注・契約したものは対象外になるのが一般的です。つまり、採択されても設備代金はいったん自社で支払う必要があり、その資金は別途用意しなければなりません。増産の機会に間に合わせたい設備であれば、融資で先に手当てし、補助金は使えるものがあれば並行して検討するという順序が現実的です。
製造現場の省力化・自動化が主目的であれば、中小企業省力化投資補助金(一般型)などが候補になります。ただし補助金は制度ごとに対象要件が細かく決まっているため、設備の仕様を固める前に対象になるかを確認しておくことをおすすめします。
Q.一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか
日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、返済負担の重さなど、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
Q.公庫以外の選択肢はありますか
商工会議所・商工会等の経営指導を受けている小規模事業者であれば、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)という選択肢もあります。適用利率は特別利率Fにあたり、金利は一律2.60%の固定です(2026年6月1日現在)。ほかに自治体の制度融資もありますが、これは自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、実際にお金を出すのは民間金融機関、信用保証協会は保証を付ける役割という点を押さえておいてください。
審査で見られる「増設の必然性」をどう示すか
追加融資で最も重要なのは、なぜ今この設備が要るのかを、感覚ではなく数字で語れることです。製造業であれば、次の3つを揃えると説明が通りやすくなります。
- 現状の能力の限界:既存設備の月間生産数量と稼働率、残業・外注に振り替えている量を出す
- 取りこぼしている需要:断った受注、納期を延ばしてもらった件数、引き合いの金額を並べる
- 増設後の変化:新しい設備で増える生産量と売上、外注費や残業代がどれだけ減るか
特に3つ目は、返済原資そのものの説明になります。増産で売上が伸びる話だけでなく、外注に出していた工程を内製化してコストが下がる話も、利益の改善として同じ重みを持ちます。
まとめ
開業後に設備が足りなくなったときの追加融資は、実績という材料がある分、創業時よりも説明しやすい面があります。押さえるべき点を整理します。
- 税務申告を2期終えていなければ、創業期向けの枠組みを使える可能性がある(無担保・無保証人、利率引下げの案内あり。ただし適用は条件次第)
- 設備資金は返済期間20年以内・据置5年以内が例として示されており、稼働までの時間差を据置で吸収する設計が有効
- 補助金は後払いのため、設備代金は先に手当てする前提で組む
- 審査では、現状の能力の限界・取りこぼしている需要・増設後の変化の3点を数字で示す
増設のタイミングは、受注の波と設備の納期に挟まれて余裕がないことがほとんどです。既存の借入との返済バランスや、どの制度で組むのが自社に合うかで迷われたら、設備の仕様を固める前の段階でご相談いただくのが結果的に早道になります。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























