
デイサービスの運転資金を確保する4つの方法|介護報酬2か月遅れへの備え方
デイサービスの経営で「利用者は増えているのに手元の現金が減っていく」という状態は珍しくありません。原因の多くは売上そのものではなく、介護報酬が入金されるまでの時間差にあります。人件費や賃料は毎月出ていくのに、売上の大部分は2か月ほど遅れて入ってくるためです。
この記事では、デイサービスを運営する事業者の方に向けて、運転資金が不足しやすい構造を確認したうえで、資金を確保する4つの選択肢と選び方の判断軸を整理します。数字は執筆時点(2026年7月)のもので、金利や制度は変わりますので、実際の検討時には最新の情報をご確認ください。
デイサービスで運転資金が厚く必要になる理由
介護報酬は「サービス提供月の翌々月」に入金される
介護保険サービスの売上は、利用者負担分を除く大部分が介護報酬として保険者から支払われます。事業所は提供した月の翌月に国民健康保険団体連合会へ請求を行い、入金はさらにその翌月になるのが一般的です。つまり、4月に提供したサービスの介護報酬は6月に入るという流れになります。
一方で、職員の給与、送迎車の燃料費、賃料、給食費といった支出は毎月発生します。開設直後は、この2か月分のずれを自前の資金で埋めなければなりません。稼働率が計画どおりに立ち上がらなければ、ずれはさらに長引きます。「運転資金は3か月分あれば足りるだろう」という感覚で始めると、初期の数か月で資金が尽きるという事態になりやすいのはこのためです。
「今すぐ足りない」と気づいてからでは融資が間に合わない
融資は申し込んですぐに入金されるものではありません。日本政策金融公庫の場合、書類提出後おおむね3週間から1か月で実行されるのが目安で、事業計画書や見積書などの準備期間を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です。
残高が尽きる直前に動き出すと、この2か月を待てません。資金繰り表を先に作り、残高が薄くなる月の2〜3か月前には相談を始めておくことが、実務上もっとも効果のある備えになります。
運転資金を確保する4つの選択肢
1. 日本政策金融公庫の融資
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、民間金融機関では対応が難しいケースにも積極的に取り組むのが特徴です。創業期であれば「新規開業・スタートアップ支援資金」が中心的な選択肢になり、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。ここでいう創業期の方とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指し、原則として無担保・無保証人での借入が可能とされています。
2026年6月1日現在の基準利率は、税務申告2期未了で年3.45〜5.15%、2期以上完了で年3.50〜5.20%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。ただしこれは案内文上の一般的な説明で、実際の適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なります。
運転資金の返済期間は原則10年以内、据置期間は5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いになるため、稼働率が上がりきるまでの期間の負担を抑えやすくなります。
2. マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
商工会議所や商工会の経営指導を受けている小規模事業者が利用できる制度で、適用利率は特別利率Fの一律2.60%(固定)です(2026年6月1日現在)。金利の面では有力な選択肢になりますが、経営指導を受けていることが前提になるため、まず地域の商工会議所・商工会に相談するところから始めます。従業員数によっては小規模事業者に当てはまらない場合もありますので、対象になるかどうかの確認が最初のステップです。
3. 制度融資(自治体の融資あっせん)
制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みです。実際にお金を出すのは民間金融機関で、信用保証協会は保証を付ける役割を担い、自治体は利子補給や預託などで関与します。「信用保証協会から借りる」と説明されることがありますが、正確には協会が直接貸すわけではありません。
自治体によって利子補給や保証料補助の内容が異なるため、事業所の所在地の制度を確認する価値があります。関係者が多いぶん手続きに時間がかかりやすい点は、スケジュールに織り込んでおいてください。
4. 既存の借入を見直す
新しく借りることだけが選択肢ではありません。開設時の借入について据置期間が残っている場合や、返済条件の変更を相談できる場合があります。毎月の返済額が資金繰りを圧迫しているなら、借り増しの前に既存の借入の条件を整理するほうが早く効くこともあります。
どの方法を取るにせよ、金融機関に対して「なぜ足りないのか」を説明できる資料が必要です。稼働率、利用者数の推移、入金と支出の月次の動きを整理した資料があるかどうかで、話の進み方は変わります。
どれを選ぶかの判断軸
4つの選択肢は、次の3点で絞り込むと整理しやすくなります。
- 時期:資金が必要になるのはいつか。融資は準備から実行まで約2か月かかるため、逆算して間に合う手段から検討します。
- 事業年数:税務申告を2期終えているかどうかで、公庫で使える制度と適用される利率の区分が変わります。
- 金利と手続きの重さ:マル経融資は低利ですが経営指導が前提、制度融資は自治体の補助がある一方で関係者が多く時間がかかります。
なお、これらは併用を検討できる場合もあります。どの組み合わせが自事業所に合うかは、稼働率の見通しや既存借入の状況によって変わりますので、返済負担を含めて具体的に試算したうえで判断してください。
運転資金として計上できるもの
運転資金とは、事業を回していくために必要な資金のことです。人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。デイサービスであれば、職員の給与のほか、送迎車の燃料費や車両維持費、給食材料費、賃料、水道光熱費などが日々の支出として発生します。
資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提のため、個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。
よくある質問
Q. 開設して間もないのですが、実績がなくても融資を受けられますか
A. 審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。デイサービスの場合は、定員に対する稼働率の見通しと、その根拠をどこまで具体的に示せるかが計画の説得力を左右します。
Q. 個人事業から法人化する予定です。創業融資は使えますか
A. いま営んでいる事業をそのまま法人化する「法人成り」の場合は、原則として創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。一方、いまの事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため創業融資を利用できます。
Q. 一度融資を断られました。すぐに再申請してもよいですか
A. 原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
Q. 送迎車はリースと購入のどちらがよいですか
A. リースには初期費用を抑えられるメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
融資とリースのどちらが有利かは、資産計上の考え方や資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
まとめ
デイサービスの運転資金について、押さえておきたい点を整理します。
- 介護報酬はサービス提供月の翌々月に入金されるのが一般的で、その間の支出を自前の資金で埋める必要があります
- 融資は準備から実行まで約2か月かかるため、残高が薄くなる2〜3か月前には動き出します
- 選択肢は、日本政策金融公庫、マル経融資、制度融資、既存借入の見直しの4つが軸になります
- 制度融資は自治体・金融機関・信用保証協会の三者連携で、お金の出し手は金融機関です
- 据置期間を使えば、稼働率が上がりきるまでの返済負担を抑えやすくなります
金利も制度も動きますので、検討の段階で最新の情報に当て直すことが大切です。自事業所の稼働率や既存借入の状況によって最適な組み合わせは変わりますので、資金繰りに不安を感じた段階で、早めに専門家へご相談ください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























