
建設業の新事業進出補助金|対象になる新分野と申請ステップを解説
「建設業でも新しい事業に挑戦したいが、設備投資の資金が重い」「太陽光施工やドローン測量に進出したいので、補助金が使えないか調べている」——そんな数年経営してきた建設会社の経営者に向けて、新事業進出枠を使うための考え方と進め方を整理しました。
ここで扱う「新事業進出補助金」は、2026年度(令和8年度)に「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のなかの新事業進出枠を指します。本記事は公募要領1.0版(令和8年6月・第1回公募)時点の内容をもとにしています。補助金は制度や締切が変わりやすいため、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。
新事業進出枠とは?建設業が押さえたい基本
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。ポイントは、新たに手がける製品・サービスが「申請者にとって新規性がある」こと、そしてその市場が「申請者にとって新たな市場」であることです。日本初・世界初である必要はなく、あくまで自社にとって新しい挑戦かどうかが問われます。
建設業でいえば、たとえば次のような取り組みがイメージに近いものです。
- 施工の会社がドローン測量サービスを新たな収益事業として立ち上げる
- 建築中心の会社が太陽光・蓄電池・EV充電器の施工という新分野に進出する
- 新築中心の会社が空き家改修・リフォーム事業を新たな柱にする
いずれも、いまの建設業の技術を土台にしながら、これまで扱っていなかった市場へ踏み出す動きです。こうした「新しい柱づくり」の設備投資に、新事業進出枠は向いています。
補助上限は「規模別」——9,000万円は最大値
ネット上では「上限9,000万円」という数字が目立ちますが、これは従業員規模が最も大きく、かつ大幅賃上げ特例を使ったときの最大値です。実際の補助上限は従業員規模で次のように分かれます(大幅賃上げ特例を使わない通常時)。
- 従業員1〜20人:2,500万円
- 21〜50人:4,000万円
- 51〜100人:5,500万円
- 101人以上:7,000万円
大幅賃上げ特例(給与支給総額 年平均+6.0%以上かつ事業場内最低賃金+50円以上)を満たすと、各区分の上限が引き上げられ、最大規模で9,000万円になります。従業員が数名〜20名規模の建設会社であれば、まず現実的なのは2,500万円の枠と考えておくとよいでしょう。あわせて補助下限が750万円ある点も見落とせません。総事業費が小さい取り組みは、この下限に届かず対象外になることがあります。
補助率は原則2分の1——残り半分は自己資金・つなぎ資金
補助率は中小企業者で原則2分の1です(地域別最低賃金引上げ特例を満たす場合は3分の2)。つまり、対象経費の半分は自社で用意する必要があります。さらに補助金は後払い(精算払い)が基本のため、工事や設備の支払いは先に自社で行い、あとから補助金が入ってきます。この時間差を埋める資金繰りの設計が、採択後の実行段階でつまずかないためのカギになります。融資と組み合わせて手元資金を厚くしておく発想が有効です。
建設業で「対象になる/ならない」の線引き
新事業進出枠でつまずきやすいのが、「新事業進出に該当するかどうか」の判断です。ここを曖昧にしたまま申請すると、事業計画そのものが評価されにくくなります。
対象になりにくい典型パターン
- 既存事業と同じ市場で、単に受注量を増やすだけの増設・増員
- これまでと同じ工事を、商圏(エリア)を変えて提供するだけ
- 既存の工法・サービスの単なる改善・効率化にとどまるもの
「新しそうに見せる」だけでは弱く、既存事業の延長・同一市場と判断されると採択は遠のきます。審査では「新市場性(社会的にまだ普及・認知度が低い領域か)」または「高付加価値性(同分野で高水準の付加価値化・高価格化ができるか)」のいずれかで筋が通っているかが見られます。
建設業ならではの強み——建物費が対象になる
新事業進出枠には、建設業にとって見逃せない特徴があります。対象経費の必須項目が「機械装置・システム構築費」または「建物費」となっており、建物費が対象になるのは新事業進出枠だけだという点です(革新的新製品・サービス枠では建物費は対象外)。新分野の拠点整備を伴う建設会社にとっては相性がよい面があります。
ただし注意点もあります。建物の単なる購入や賃貸、不動産取得費は対象外です。あくまで新事業のために必要な建物の建設・改修などが対象という位置づけなので、「土地建物を買う費用に充てたい」という使い方はできません。
そのほか、申請前に確認したい足切り
- 創業後1年に満たない事業者は対象外(最低1期分の決算書が必要)。これから独立・法人化する段階では使えません
- 事業計画は申請者自身が作成する必要があり、外部への丸投げは不採択・取消の対象
- 交付決定前に発注・契約・購入した経費は対象外。「先に発注してしまった」は取り返しがつきません
- 国や他制度との二重受給は不可
新事業進出・ものづくり補助金を使うまでの申請ステップ
実務の流れをつかんでおくと、逆算で準備を進めやすくなります。おおまかには次のステップです。
- 新事業のテーマを固める:既存事業とどう違う新市場・高付加価値なのかを言語化する
- 枠の当てはめを確認する:新市場進出なら新事業進出枠、新製品・新サービス開発なら革新的新製品・サービス枠が自然。省力化・生産性向上が主目的なら中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になります
- GビズIDプライムを取得する:電子申請に必須。取得に時間がかかるため早めに動く
- 事業計画書を作成する:付加価値額 年平均+4.0%以上、一人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上といった基本要件を満たす計画にする
- 締切までに電子申請する:第1回公募は2026年6月29日から受付、締切は2026年10月31日18時、採択発表は2027年1月頃の予定です
- 採択後、交付決定を待って発注・実行:交付決定前の発注は対象外のため、順番を守る
なお、賃上げの基本要件(一人当たり給与支給総額 年平均+3.5%以上、事業場内最低賃金+30円以上)は未達だと返還を求められることがあります。人手の入れ替わりが多い建設業では、計画段階から賃上げの見通しを現実的に描いておくことが大切です。
資金繰りは補助金と融資の合わせ技で考える
ここまで見てきたとおり、新事業進出枠は補助率2分の1・後払いが基本です。設備や工事の支払いを先に済ませる必要があるため、手元資金の設計が採択後の実行を左右します。自己資金だけで回すのが不安な場合は、日本政策金融公庫などの融資と組み合わせて、つなぎの資金を確保しておく方法があります。補助金の採択可否が出る前から、資金調達の全体像を専門家と描いておくと、進出のスピードを落とさずに済みます。
また、補助金の入金にかかる税務処理や、法人化・許認可などの手続きは、税理士・行政書士などの専門家の領域です。判断に迷う部分は早めに相談し、記事の情報は一般的な考え方の整理としてご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業でも新事業進出補助金は本当に使えますか?
A. 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出であれば、建設業でも対象になり得ます。太陽光・蓄電池施工やドローン測量サービスの立ち上げなど、自社にとって新しい市場への進出が典型例です。ただし採択を保証するものではなく、事業計画の内容次第です。
Q. 既存の工事エリアを広げるだけでは対象になりますか?
A. 同じ工事を商圏だけ変えて提供する取り組みは、「新事業進出」に該当しにくく対象外と判断されやすいです。新市場性や高付加価値性で筋が通るかを軸に、テーマを組み立て直すことをおすすめします。
Q. 補助金はいくらもらえますか?
A. 従業員規模により補助上限が異なり、1〜20人で2,500万円、21〜50人で4,000万円などと分かれます(通常時)。補助率は原則2分の1で、下限は750万円です。上限9,000万円は最大規模かつ大幅賃上げ特例を使った場合の最大値である点に注意してください。
まとめ
建設業が新事業進出補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 新事業進出枠)を使うカギは、「既存事業とは違う新市場・高付加価値への進出」というテーマ設定にあります。太陽光施工やドローン測量など、自社の技術を土台にした新しい柱づくりは相性がよく、新事業進出枠だけ建物費が対象になる点も建設業にとって強みです。一方で、上限9,000万円は最大値であること、補助率2分の1・後払いで資金繰りの設計が要ること、創業1年未満や交付決定前の発注は対象外であることなど、押さえるべき足切りもあります。制度の最新情報を確認しつつ、補助金と融資を組み合わせた資金計画を早めに描いて、新分野への一歩を着実に進めていきましょう。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























