
飲食店で黒字倒産を招く資金繰りのズレと、開業前に予測する手順
飲食店の店長として独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。
💬 店長経験者の方からのご相談
店長としては月次の損益を見てきたので、黒字なら経営は大丈夫だと思っていました。ただ、独立した知人から『利益が出ていても現金がなくなる』と聞きました。飲食店では、売上や利益が出ているのに資金繰りが苦しくなるのはどんなときですか?開業前から予測する方法はありますか?

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。
小峰からの回答
結論から言うと、飲食店では利益が出ていても現金が足りなくなることがあります。損益計算書は「いつ売上と費用を計上したか」で数字を作りますが、通帳の残高は「いつ現金が出入りしたか」で動くからです。この二つの時間のずれと、そもそも損益に出てこない支出があること。これが、黒字でも資金が詰まる正体です。
金融機関側から見ると、損益だけでなく現金の動きまで組み込んだ計画は、資金の使い道と必要な金額の説明がしやすくなります。月次の損益を見てこられた経験は、資金繰りを考える土台になります。そこに「現金がいつ動くか」という視点を足して、開業前に一度表にしておくことをおすすめします。
損益と現金がずれる5つの場面
ご質問の「どんなときですか」にお答えします。飲食店で特に起こりやすいのは、次の5つです。
1. 仕入や経費の支払いが、売上の入金より先に来る
開業前後は、食材や酒類、消耗品の初回の仕入れなど、売上が立つ前に払う費用が続きます。仕入先によって、その場での現金払い、月末で締めて翌月に払うなど、支払いの条件は違います。損益では同じ「原価」でも、現金が出ていく日は取引先ごとに変わるため、条件は仕入先ごとに確認しておきたいところです。
2. カードや電子決済の売上は、入金が後になる
お客さまがカードで支払った日に、損益の上では売上が立ちます。ただ、その代金が口座に入るのは後日です。入金のサイクルは決済サービスの契約ごとに異なりますので、日数はご自身が使う予定のサービスの案内で確認してください。売上は出ているのに、仕入や家賃の支払日には手元の現金が足りない、という状況はここで生まれます。
3. 税金の支払いは、利益が出たあとに来る
利益が出れば、その分に対して納める税金が発生します。支払いの時期は利益が出た決算月より後になるため、「黒字で順調」と感じているところへ、まとまった納税の時期がやってきます。税額の計算や申告の方法は税理士の領域ですので、ここでは触れません。資金繰りの上では、納税のタイミングが来る月に現金を残しておく、という位置づけで考えてください。
4. 設備投資は、現金が一度に出て、損益には分けて出る
厨房機器や内装などは、購入時にまとまった現金が出ていきます。一方、損益計算書では減価償却という形で、使える期間に分けて費用に計上するのが一般的な会計の扱いです。つまり、損益は小さな費用しか出ていないのに、現金は導入した月に大きく減ります。
5. 借入の元本返済は、経費にならないが現金は出ていく
これも見落としやすい点です。借入金の利息は費用になりますが、元本の返済は費用ではなく、損益には現れません。それでも返済日には、現金が確実に減ります。損益の上では利益が出ているのに、返済の分だけ手元の現金が減っていく、ということが起こります。
日本政策金融公庫の創業向けの制度では、本記事の執筆時点で、元金返済の据置期間は5年以内の範囲で認められることがあり、据置中は利息のみの支払いとなります。ただし、適用される据置期間や利率は審査のうえ金融機関が決定するもので、申込者が選べるものではありません。据置がある場合も、据置が終われば元本の返済が始まります。返済が始まる月は、資金繰りの表に必ず入れておいてください。
なぜ飲食店で起こりやすいのか
飲食店は、食材の仕入れが日々発生し、家賃や人件費といった支払いは毎月同じように出ていく一方で、売上は曜日や季節、天候によって波があります。支払いは固定的で、入金は変動する。このずれがあるため、月の損益が黒字でも、月の途中で現金が足りなくなる日が出てくることがあります。損益は月単位で見るため、月の途中で起こる現金の谷は、月次の数字だけでは見えにくい点にも注意が必要です。
仮の数字で、損益と現金の差を見てみる
イメージをつかむために、説明用の仮の数字を置きます。相場や目安ではありませんので、ご自身の計画の数字は別に組み立ててください。
- ある月の損益上の利益が、仮に10万円だったとします
- 同じ月の借入元本の返済が、仮に15万円だったとします
- この時点で、損益は黒字でも、現金は5万円減ります
- さらに、仕入れの支払いが、カード売上の入金より先に20万円出ていくとすると、現金の減りは25万円になります
利益の10万円が黒字であることは変わりませんが、通帳の残高は減っています。こうした月が続いて残高がなくなったときに、資金繰りが行き詰まる、というのが黒字倒産の仕組みです。
開業前に資金繰り表で予測する手順
開業前でも、次の手順で資金の動きは予測できます。
- 手順1:月ごとの列を作ります。開業前の準備期間から、少なくとも開業後1年分は並べておきます
- 手順2:収入は「売上」ではなく「入金される月」で入れます。現金での売上と、カード・電子決済の売上は行を分け、後者は入金サイクルを確認したうえで、入金される月に置きます
- 手順3:支出は「費用が発生した月」ではなく「支払う月」で入れます。仕入れは仕入先ごとの支払条件、家賃や人件費、光熱費は支払日に合わせます。納税の時期も、支払いが来る月に入れておきます
- 手順4:損益に出ない支出を別の行で入れます。設備投資、借入元本の返済がこれにあたります
- 手順5:月末の現金残高を計算し、残高が足りなくなる月がないかを探します。売上が計画より低かった場合も、仮の数字で試しておきます
- 手順6:残高が足りなくなる月が見つかったら、必要な資金の額、支払条件、設備投資の時期を見直します
表を作るときに見落としやすいのが、売上が安定するまでの期間です。開業直後は、お店を知っていただく途中で、売上が計画どおりに立たない月も想定しておく必要があります。その間も、仕入れ、人件費、返済といった支払いは待ってくれません。売上を保守的に置いた場合でも、月末の残高が足りるかどうかを確かめておくと、資金の不足に早めに気づけます。
融資を検討する場合も、この表は使えます。
どの時期にいくら足りなくなるのかが見えていれば、資金の使い道と必要な金額の整合を、金融機関に説明しやすくなります。
まとめ
飲食店の資金繰りは、黒字かどうかに加えて、現金がいつ、いくら動くかを見る必要があります。損益に出ない支出と、入出金の時期のずれを、開業前に表へ落とし込んでみてください。
資金繰り表の作り方や、開業後のキャッシュフローの管理は、数字の組み立て方から専門家と一緒に進められる顧問支援の窓口があります。損益は追えていても、入金や支払いの日付を表に落とし込む段階で迷ったときは、ご自身の計画を土台に相談してみてください。
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無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























