
デイサービス開業に必要な資金の全体像
デイサービス(通所介護)の開業を考えるとき、最初の関門になるのが資金の準備です。介護事業は、物件の取得や改修、送迎車両、介護備品など初期費用がまとまってかかるうえ、開業後すぐには売上(介護報酬)が入ってこないという特徴があります。そのため、自己資金だけで賄うのは難しく、多くの方が融資を活用して開業しています。
この記事では、これから介護事業を始める個人・中小企業の方に向けて、デイサービス開業に必要な資金の内訳、開業資金の目安、使える融資制度、審査で見られるポイントまでをわかりやすく解説します。なお、介護保険制度や指定基準は改定されることがあるため、最新の要件は自治体や公的機関で必ず確認してください。
必要な資金は大きく2種類
設備資金(開業時に一度かかるお金)
デイサービスの開業では、次のような設備資金が必要になります。
- 物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)
- 内装・バリアフリー改修費(手すり・スロープ・トイレ改修など指定基準を満たすための工事)
- 送迎車両の購入・リース費用(福祉車両など)
- 介護備品・機能訓練機器・家具・厨房設備
- 事務機器・介護記録システムなどの初期費用
立地や事業規模、定員によって金額は大きく変わりますが、改修と車両でまとまった額になりやすいのがデイサービスの特徴です。
運転資金(開業後しばらく必要なお金)
見落とされがちですが、デイサービスで特に重要なのが運転資金です。介護報酬は、利用者の自己負担分を除く大部分が国民健康保険団体連合会(国保連)を通じて支払われ、サービス提供月から実際の入金まで約2か月遅れます。つまり開業直後は、人件費・家賃・送迎費などの支出が先行し、売上の入金は後からになります。この期間を乗り切る運転資金(人件費の数か月分など)を必ず手元に確保しておく必要があります。
デイサービス開業に使える融資
日本政策金融公庫の創業融資
これから開業する方がまず検討したいのが、日本政策金融公庫の創業向け融資です。公庫は民間金融機関に比べて創業者への融資に前向きで、無担保・無保証人で利用できる枠も用意されています。介護事業は社会的ニーズが高く、事業計画がしっかりしていれば前向きに検討されやすい分野です。金利・限度額・返済期間などの条件は制度や時期によって変わるため、必ず公庫の最新情報を確認してください。
制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
自治体・信用保証協会・民間金融機関が連携した「制度融資」も選択肢です。信用保証協会が保証を付けることで、創業者でも民間金融機関から借りやすくなります。自治体によっては利子補給や保証料補助がある場合もあるため、開業予定地の制度を調べてみるとよいでしょう。
融資審査で見られるポイント
介護事業の創業融資では、おおむね次の点が重視されます。
- 介護・福祉分野での実務経験や資格(事業を運営できる裏付け)
- 自己資金をどれだけ準備できているか
- 利用者の見込み(立地・地域の要介護者数・競合状況)に根拠があるか
- 人員配置基準を満たす採用計画が立っているか
- 介護報酬の入金遅れをふまえた資金繰り計画になっているか
「なんとなく介護は需要がありそう」ではなく、数字とエビデンスで説明できることが大切です。
自己資金はどのくらい必要か
創業融資では、総事業費に対して一定割合の自己資金があると審査で有利になります。自己資金は単に金額の問題ではなく、「計画的に開業準備を進めてきた証拠」として見られます。コツコツ貯めてきた預金の通帳の履歴は、事業への本気度を示す材料になります。逆に、出所のはっきりしない資金(いわゆる見せ金)はマイナスに評価されるため注意しましょう。
事業計画書づくりのポイント
デイサービスの事業計画書では、介護報酬の仕組みを理解したうえで、現実的な収支計画を立てることが重要です。定員と稼働率(利用者がどれくらい埋まるか)、要介護度ごとの単価、加算の取得見込み、人件費率などを根拠とともに示します。とくに開業から黒字化までの数か月をどう乗り切るか、運転資金の裏付けを明確にしておくと、融資審査での説得力が高まります。
まとめ
デイサービスの開業には、設備資金だけでなく、介護報酬の入金が遅れる分の運転資金まで含めた資金計画が欠かせません。資金調達の中心となるのは日本政策金融公庫の創業融資や制度融資で、実務経験・自己資金・利用者見込み・資金繰り計画といった点が審査で見られます。介護事業は制度の理解と計画の精度が問われる分野です。資金計画や事業計画書づくりに不安がある場合は、融資に詳しい専門家に早めに相談しながら準備を進めると安心です。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























