
ネットショップの月商目標はどう決めるのか|アクセス数・転換率・客単価から積み上げる創業計画書の作り方
副業や個人での物販から、ネットショップを本業にしようと考えたとき、多くの方が最初につまずくのが創業計画書の「事業の見通し」です。とくに月商目標は、いくらと書けばよいのか判断がつかず、必要な生活水準や借入希望額から逆算して埋めてしまいがちです。
ただ、日本政策金融公庫の面談では、その数字がどう出てきたのかを必ず聞かれます。そして、ネットショップの月商は実店舗とは組み立て方が違います。この記事では、アクセス数・転換率・客単価から月商を積み上げる手順と、創業計画書に落とし込むときの具体的な項目、そして審査で崩れやすい4つのパターンを整理します。なお、制度や金利は変わりやすいため、記載の数字はいずれも執筆時点のものとしてお読みください。
月商目標を「希望額」から書くと、審査で崩れます
創業計画書の売上欄を、手元に残したい金額や返済額から逆算して書く方は少なくありません。ですが、この順番で作った数字は、面談で「なぜこの売上になるのですか」と聞かれた瞬間に説明が止まります。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。実績がない分、計画の中身がどれだけ現実的に組まれているかが見られる、と考えていただくとよいと思います。金額の大きさそのものよりも、その金額に至る道筋が説明できるかどうかが問われます。
ネットショップは、実店舗と違って席数や坪数といった物理的な上限がありません。その分「頑張れば伸びる」という書き方になりやすく、根拠が薄いまま数字だけが大きくなる傾向があります。ここを分解して示せるかどうかが、他の申請者との差になります。
ネットショップの月商は3つの掛け算で積み上げます
ネットショップの売上は、次の3つに分解できます。
- アクセス数:1か月にショップを訪れた人の数
- 転換率:訪れた人のうち、実際に購入に至った割合
- 客単価:1回の注文あたりの平均購入金額
この3つを掛けたものが月商です。たとえば月間アクセス数1万、転換率1パーセント、客単価8,000円であれば、月商は80万円という計算になります。実店舗の「席数×回転率×客単価」に相当する考え方ですが、変数の中身が違いますので、実店舗向けのテンプレートをそのまま流用しないほうが安全です。
3つの数字それぞれに根拠を用意します
大切なのは、掛け算の形にすること自体ではなく、3つの数字にそれぞれ根拠を添えることです。
アクセス数は、どこから人が来るのかを分けて書きます。モール内の検索から、広告から、これまでの販売で付いたお客様から、という具合に流入の内訳を示せると、数字の説得力が変わります。副業として販売していた期間の実績があるなら、それは強い材料になります。
転換率は、扱う商材と販売チャネルによって大きく変わります。自分の実績値があればそれを使い、無ければ同じ商材ジャンルの一般的な水準を調べたうえで、そこから控えめに置いた理由を添えます。「1パーセント」と書くだけでなく、なぜその水準に置いたのかを一言で説明できる状態にしておいてください。
客単価は、主力商品の価格帯と、まとめ買いの発生度合いから組み立てます。送料無料になる購入金額の設定は客単価に直結しますので、その設計まで説明できると計画の完成度が上がります。
公庫の創業計画書「事業の見通し」に落とし込みます
積み上げた月商は、そのまま書いて終わりではありません。創業計画書では、1か月あたりの売上高・売上原価・経費という形で整理する必要があります。
売上原価は、主に商品の仕入です。ここは月商に原価率を掛けて求めます。問題になりやすいのは経費のほうで、ネットショップの場合は次のような費用が発生します。
- 送料・梱包資材費
- 決済手数料
- モールやカートシステムの利用料・販売手数料
- 広告費
- 倉庫や作業スペースの賃料
- 人件費(法人の場合は代表者への役員報酬を含みます)
人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提ですので、個別の支出を含められるか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら整えることをおすすめします。
審査で崩れやすい4つのパターン
実際に計画書を拝見していると、月商目標の組み方でつまずくポイントはある程度決まっています。代表的な4つを挙げます。
パターン1:開業初月から目標月商になっている
ネットショップは、開店してすぐに検索から人が来るわけではありません。それにもかかわらず、初月から目標月商が立っている計画は、面談で必ず理由を聞かれます。立ち上がりに何か月かけるのか、その間の売上をどう置くのかを、月ごとに分けて示してください。既に副業として運営していたショップを引き継ぐ場合は、その実績を初月の根拠にできます。
パターン2:転換率の根拠が示されていない
3つの変数のうち、最も根拠を求められやすいのが転換率です。ここが空欄のまま数字だけ置かれていると、月商全体の信頼性が下がります。自分の実績値、あるいは調べた水準とそこから控えめに置いた考え方を、短くてよいので添えておきます。
パターン3:売上に比例して増える費用を固定費のように置いている
送料、決済手数料、モールの販売手数料は、いずれも売上が増えれば同じように増えます。これらを毎月一定額として置いてしまうと、月商が伸びるほど利益が過大に見える計画になります。売上に対する割合として置き直すだけで、計画の精度は目に見えて上がります。
パターン4:原価率を一年間ずっと同じ数字にしている
セールを実施する月、送料無料のキャンペーンを打つ月は、実質的な原価率が動きます。年間を通じて同じ原価率で置いた計画は、販売の実態と合わないと見られやすくなります。販促を予定している月については、その分を織り込んでおくと丁寧です。
月商目標を達成しても資金が足りなくなることがあります
見落とされやすいのが、お金が動く順番です。ネットショップでは、商品の仕入代金が先に出ていき、売上の入金はモールや決済代行会社の締め日を経た後になります。つまり、売れば売るほど、入金までの間に立て替える金額が大きくなります。
月商目標を達成していても資金が足りなくなるのは、この時間差が原因です。創業計画書に月ごとの売上と経費を書くときは、あわせて入金がいつ実際に口座に入るのかも整理しておくと、必要な運転資金の額を説明しやすくなります。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金では、元金返済の据置期間を5年以内で設定できます。据置期間中は利息のみの支払いになりますので、立ち上がりのキャッシュフローに余裕を持たせる設計が可能です。返済期間は、この制度を利用する場合の例として、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内とされています。
自己資金と、業界未経験をどう補うか
月商の組み立てと並んで見られるのが自己資金です。現行の制度では、自己資金の額や割合について要件が決まっているわけではありません。ただし審査の重要な判断材料になりますので、多いほど有利になりやすい、という理解でよいと思います。面談の時点で口座に確認できる形にしておいてください。
あわせて知っておきたいのが、みなし自己資金という考え方です。創業前に自費で購入した撮影機材や梱包設備、テストマーケティングにかけた費用などは、一定の範囲で自己資金として評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。
扱う商材のジャンルが未経験の場合は、その点をどう補うかも計画に書いておきます。同業の方から助言を受けている、経理や制作を外部に委託している、といった説明は、経営そのものへの関与としては弱く、有効なカバー策とは言えません。事業経験者を役員に迎えるなど、運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力があります。
制度面の前提も押さえておきます。日本政策金融公庫の主力となる創業融資は新規開業・スタートアップ支援資金で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。2026年6月1日現在の基準利率は、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15パーセントとされています。創業期の方が無担保で利用する場合は、原則0.65パーセント、雇用の拡大を図る場合は0.9パーセントの引下げが適用される可能性がありますが、適用の可否は制度や審査の条件によって異なりますので、詳細は申請先でご確認ください。
よくある質問
Q. 副業で運営していたショップの売上実績は使えますか
使えます。むしろ最も強い根拠になります。アクセス数・転換率・客単価の実績値をそのまま示せるほか、立ち上がり期間を短く見積もる理由にもなります。売上の記録は申告書や管理画面の数字で説明できるよう整理しておいてください。
Q. 月商目標は保守的に書いたほうがよいですか
低く書けば通りやすくなるというものではありません。必要な借入額に対して返済が成り立つ計画になっているかが見られますので、根拠のある数字を置くことが大切です。控えめに置くのであれば、なぜその水準にしたのかを説明できるようにしておきます。
Q. 申し込みからどのくらいで資金が入りますか
書類提出後、おおむね3週間から1か月程度が目安です。創業計画書や自己資金の資料、見積書などを整える時間を含めると、準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月程度を見込んでおくと安全です。仕入の発注時期から逆算して動いてください。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか
公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
まとめ
ネットショップの月商目標は、希望額から逆算するのではなく、アクセス数・転換率・客単価の3つに分解して積み上げます。そのうえで、1か月あたりの売上高・売上原価・経費という形で創業計画書に落とし込み、送料や決済手数料のように売上と一緒に増える費用は割合で置き直します。
審査で崩れやすいのは、初月から目標月商になっている計画、転換率の根拠がない計画、売上比例の費用を固定費として置いた計画、原価率を一年間同じにした計画の4つでした。加えて、仕入の支払いと売上の入金の時間差を織り込んでおくと、必要な運転資金の説明がぐっとしやすくなります。
数字の置き方に迷われたときや、手元の実績をどう計画に反映すればよいか判断がつかないときは、申し込みの前の段階でご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























