
「フィットネスクラブやジムを開業したいけれど、開業資金をどう用意すればいいのかわからない」——そんな悩みを抱える方は少なくありません。ジムの開業はマシンや内装に大きな初期費用がかかるため、自己資金だけでまかなうのは難しく、融資の活用が現実的な選択肢になります。
この記事では、これからフィットネスクラブ・ジムを開業する個人事業主や中小企業の方に向けて、必要な資金の目安、使える融資、審査で見られるポイント、申請を成功させるコツまでを実務目線で整理します。なお、制度の内容や金額は変わることがあるため、本記事は2026年時点の情報をもとにしています。最新の条件は必ず公式情報でご確認ください。
フィットネスクラブ・ジム開業にかかる資金の目安
融資の話に入る前に、まずは「いくら必要なのか」を業態別に把握しておきましょう。ジムと一口に言っても、規模によって必要資金は大きく変わります。
業態別の初期費用イメージ
- パーソナルジム(1〜2名運営):小規模なテナントを借り、最低限のマシンとフリーウェイトを揃える形態。物件取得費・内装・設備を含めて、おおむね500万〜1,500万円程度が目安です。
- 24時間セルフ型ジム:無人運営に対応するセキュリティシステム、入退館管理、多数のマシン導入が必要です。1,500万〜3,000万円超になることもあります。
- 総合フィットネスクラブ:スタジオやシャワー、ロッカーなど設備が大きくなり、規模によっては数千万円〜が必要になります。
大きな割合を占めるのは、内装工事費とトレーニングマシンの導入費です。マシンは新品で揃えると高額になるため、リースや中古を組み合わせる事業者も多くいます。
運転資金も忘れずに見込む
開業時に見落としがちなのが、開業後の運転資金です。ジムは会員ビジネスのため、開業直後から会員数が一気に増えるわけではありません。会員数が損益分岐点に達するまでの数か月〜1年程度、家賃・人件費・光熱費・広告費を払い続けられる余力が必要です。一般的には、固定費の6か月分程度を運転資金として確保しておくと安心といわれます。
ジム開業に使える主な融資
初期費用と運転資金を合わせると、自己資金だけでは足りないケースがほとんどです。ここでは、ジム開業で活用しやすい代表的な融資を紹介します。
日本政策金融公庫の創業融資
創業時にもっとも利用されているのが、日本政策金融公庫(公庫)の融資です。公庫は政府系金融機関で、実績の少ない創業者にも積極的に融資を行っているのが特徴です。
かつての「新創業融資制度」は2024年に見直され、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合されています。これにより、従来あった自己資金要件が撤廃され、創業計画の内容で審査される形に変わりました。融資限度額は設備資金・運転資金を合わせて大きな枠が設けられており、ジムのように設備投資が大きい業態とも相性が良い制度です。具体的な限度額・金利・返済期間は改定されることがあるため、申請前に公庫の公式サイトで最新の条件を確認してください。
民間金融機関と制度融資
地方銀行・信用金庫などの民間金融機関からの融資も選択肢です。創業期は実績がないため単独では借りにくいこともありますが、自治体が用意する「制度融資」を使えば、信用保証協会の保証を付けることで民間金融機関から借りやすくなります。制度融資は利子補給や保証料補助が受けられる自治体もあり、公庫と組み合わせて資金を厚くする使い方もよく行われます。
ジム開業の融資審査で見られるポイント
融資は申請すれば必ず通るものではありません。金融機関がどこを見ているのかを理解し、対策しておくことが採択率を高めます。
1. 自己資金
新規開業・スタートアップ支援資金では自己資金要件そのものは撤廃されましたが、自己資金がまったくない状態が有利になるわけではありません。自己資金は「計画的に開業準備をしてきた証拠」と見なされるため、一定額をコツコツ貯めてきた履歴は今でも評価につながります。通帳で資金の出所が確認できる状態にしておきましょう。
2. 事業計画書と売上予測
もっとも重視されるのが事業計画書です。ジムの場合、売上は「会員数 × 会費単価」が基本になります。立地の人口・競合ジムの数・想定する客層をふまえて、無理のない会員獲得ペースを示すことが大切です。「開業初月から満員になる」といった過度に楽観的な計画は、かえって信用を下げます。会員数が損益分岐点に達するまでの道筋を、現実的な数字で示しましょう。
3. 経験・経歴
トレーナー経験や店舗運営の経験は、事業の実現性を裏付ける材料になります。未経験分野での開業の場合は、スタッフの採用計画や研修体制、フランチャイズ本部のサポートなどで「運営ノウハウをどう補うか」を説明できると安心感につながります。
ジム開業特有の融資の注意点
ジムならではの注意点もあります。事前に押さえておくことで、計画の精度が上がります。
- マシンのリースと融資の使い分け:マシンをリースにすると初期費用は抑えられますが、月々のリース料が固定費として運営を圧迫します。融資で購入する場合と、リースにする場合の総支払額を比較して判断しましょう。
- 内装・防音・床補強:フリーウェイトを扱うジムは床の補強や防音が必要になることがあり、内装費が想定より膨らみがちです。見積もりは余裕を持って組みます。
- 24時間営業のセキュリティ費用:無人時間帯の防犯カメラ・入退館システムは安全面で必須です。これらの費用も設備資金として計画に含めます。
融資を成功させるための3つのコツ
- 余裕を持った資金計画を立てる:初期費用ギリギリではなく、運転資金まで含めた金額で申請することで、開業後の資金ショートを防げます。
- 数字の根拠を準備する:会員数の想定や会費単価は、近隣相場や競合データなど根拠とセットで示すと説得力が増します。
- 専門家に相談する:事業計画書の作り込みや金融機関とのやり取りは、創業融資に詳しい専門家のサポートを受けることで、採択の可能性を高めやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 自己資金ゼロでもジム開業の融資は受けられますか?
制度上、新規開業・スタートアップ支援資金では自己資金要件は撤廃されているため「ゼロだから申請できない」ということはありません。ただし、自己資金は計画性の証拠として評価される面があるため、ある程度準備しておいた方が審査では有利に働きやすいです。
Q. パーソナルジムのような小規模開業でも融資は使えますか?
使えます。むしろ初期費用を抑えやすいパーソナルジムは、計画が立てやすく融資相談もしやすい業態です。規模が小さくても、事業計画書をしっかり作ることが大切です。
Q. フランチャイズで開業する場合、融資は変わりますか?
基本的な融資制度は同じですが、加盟金やロイヤリティが資金計画に加わります。本部の収支モデルがあると計画の根拠を示しやすい一方、加盟金が融資対象になるかは個別判断になるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
フィットネスクラブ・ジムの開業は、マシンや内装に大きな初期費用がかかるうえ、会員数が安定するまでの運転資金も必要です。だからこそ、日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を上手に活用し、余裕を持った資金計画を立てることが成功の鍵になります。審査では事業計画書と売上予測の現実性が重視されるため、根拠ある数字で計画を組み立てましょう。資金計画や事業計画書の作成に不安がある場合は、創業融資に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























