
飲食店を開業するための融資ガイド|資金の目安・公庫融資・審査通過のコツまで専門家が解説
飲食店の開業には、物件取得費・内装工事費・厨房設備・運転資金など、まとまった初期投資が必要になります。自己資金だけでまかなえるケースは少なく、多くの方が日本政策金融公庫や制度融資を活用して資金調達を行っています。
本記事では、これから飲食店を開業する個人事業主・中小企業の方に向けて、必要資金の目安、使える融資制度、審査で見られるポイント、申請の流れ、失敗しないためのコツまで一気通貫で解説します。元信用金庫法人営業や元日本政策金融公庫支店長の知見をもとに、現場目線でまとめました。
飲食店開業に必要な資金はいくらか
飲食店開業に必要な資金は、業態と店舗規模によって大きく変わりますが、一般的な小規模店舗(15〜25坪)で800万〜1,500万円が目安です。日本政策金融公庫が公表している「新規開業実態調査」でも、飲食店を含むサービス業の開業費用は1,000万円前後で推移しています。
内訳の例(20坪・居抜き+一部スケルトン改修の想定)は次のとおりです。
- 物件取得費(保証金・礼金・前家賃):150万〜300万円
- 内装工事費(坪単価30万〜50万円):600万〜1,000万円
- 厨房設備・什器:150万〜300万円
- 看板・サインなど外装費:30万〜80万円
- 食器・備品・販促物:50万〜100万円
- 運転資金(家賃・人件費・食材費の6か月分):300万〜500万円
居抜き物件を活用すれば内装工事費を3〜5割圧縮できるケースもありますが、設備の状態や原状回復義務をよく確認したうえで判断してください。
運転資金は「最低6か月分」を必ず確保する
開業1〜3か月目は売上が安定せず、人件費や家賃などの固定費だけが先に出ていくのが通常です。創業計画書の運転資金欄は、最低でも6か月分の固定費+食材原価を見込んで組み立てましょう。ここを薄く見積もると、開業後すぐに資金ショートを起こすリスクが高くなります。
飲食店開業で使える主な融資制度
飲食店の開業資金は、自己資金だけで賄うのは現実的ではなく、融資との組み合わせが基本になります。創業期に使える代表的な融資制度を3つ紹介します。
1. 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
創業融資の中心的な選択肢が、日本政策金融公庫(国民生活事業)の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年4月の制度改正で、これまでの「新創業融資制度」「新規開業資金」が統合され、より使いやすくなりました。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
- 返済期間:設備資金20年以内/運転資金10年以内(うち据置期間最長5年)
- 担保・保証人:原則不要(代表者保証も任意)
- 対象者:新たに事業を始める方、または事業開始からおおむね7年以内の方
創業期は事業実績が無いため、後述の事業計画書と自己資金が審査の中心になります。利率は基準利率をベースに、女性・若者・シニア起業家、再挑戦支援などの特例で引き下げが受けられる場合があります(金利・条件は申込時の公庫公式情報を必ずご確認ください)。
2. 信用保証協会付き融資(制度融資)
都道府県や市区町村が窓口になり、信用保証協会の保証を付けて民間金融機関から融資を受ける仕組みです。自治体ごとに「創業者向け制度融資」が用意されており、自治体が利子補給や保証料補助を行うケースもあります。
公庫融資と並行して申し込み、両方から資金調達するケースも多くあります。窓口は商工会議所・商工会・自治体の産業振興課などです。
3. 民間金融機関のプロパー融資
創業期に民間金融機関が無担保・無保証で融資するハードルは高めですが、地方銀行・信用金庫の中には創業支援に積極的な金融機関もあります。開業前から取引のある金融機関がある場合は、相談する価値があります。
飲食店開業融資の審査で見られる4つのポイント
創業融資の審査では、実績の代わりに「事業として成立するか」を多面的に評価されます。とくに飲食店の場合、次の4点が重点的に見られます。
1. 自己資金の額と出所
創業融資では、自己資金の額に応じて融資可能額の目安が変わります。「希望融資額の3分の1〜2分の1程度の自己資金」を確保していると、計画への本気度が伝わりやすくなります。
注意したいのは「出所」です。コツコツ貯めた預金通帳が最も評価が高く、急に大金が振り込まれた「見せ金」は厳しく見られます。通帳のコピー提出を求められる前提で、計画的に積み上げておきましょう。
2. 経験・実務スキル
飲食店の創業融資では、調理経験・店長経験・店舗運営経験が重視されます。同業種で5〜6年以上の実務経験があると、経験面の評価がプラスになります。未経験で開業する場合は、メニュー開発や仕入ルートをどう確保するか、不足経験をどう補うかを事業計画書で明示してください。
3. 事業計画書の精度
事業計画書では、コンセプト・ターゲット・立地・客単価・席数・回転数・売上予測・原価率・人件費率・損益分岐点を具体的な数字で示します。とくに売上予測は「席数×客単価×回転数×営業日数」の式で計算根拠を明示しましょう。根拠のない大きな数字は、かえって審査でマイナスに作用します。
4. 物件・立地
飲食店の収益性は立地に大きく左右されます。商圏人口・競合店の分布・想定動線・賃料負担率(理想は売上の10%以下)を分析し、なぜその物件を選ぶのかを言語化しておくと、面談での説得力が高まります。
飲食店開業融資の申請から実行までの流れ
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」を申し込む場合、申込みから着金までおおむね1か月〜1か月半が目安です。スケジュールには余裕を持って準備を進めてください。
- 事前準備(1〜2か月前):自己資金の積み立て、事業計画書の作成、見積書の取得
- 申込み:公庫窓口に申込書・創業計画書・各種資料を提出
- 面談(申込後2〜3週間以内):担当者と1〜2時間程度の面談
- 審査・店舗訪問:物件決定済みの場合は実地確認が入ることもある
- 結果通知・契約・着金:契約手続きから1週間ほどで着金
物件契約のタイミングと融資実行のタイミングがズレると、保証金の支払いに困るケースがあります。物件を押さえる前に、必ず融資見込み額を金融機関と擦り合わせておきましょう。
飲食店開業融資で失敗しないための5つのポイント
- 自己資金は「コツコツ貯めた預金」を見せる:直前の大口入金は、見せ金と疑われやすく信用を損ないます。
- 運転資金は6か月分以上を見込む:開業直後の赤字期間をしのげる資金余裕が、廃業リスクを大きく下げます。
- 売上予測は「席数×客単価×回転数×営業日数」で組む:感覚値ではなく計算根拠を出します。
- 「複数の金融機関に同時申し込み」は事前相談を:公庫と制度融資の併用は一般的ですが、金融機関ごとの方針が異なるため、申し込み順序は専門家に相談すると安全です。
- 面談は「経営者として」答える準備をしておく:数字の根拠・想定リスクへの対応・撤退ラインなど、聞かれて当然の質問にスムーズに答えられる状態を作っておきましょう。
飲食店開業融資に関するよくある質問
Q. 自己資金ゼロでも融資は受けられますか?
制度上は自己資金要件が緩和されていますが、実務上は自己資金が極端に少ないと審査通過は厳しいのが現実です。最低でも希望融資額の1割、できれば3分の1程度は自己資金として準備することをおすすめします。
Q. 居抜き物件なら融資額は少なくてすみますか?
内装工事費は圧縮できる一方、設備の入れ替え費用や原状回復のための保証金上乗せが発生することがあります。総額で見ると意外と設備資金がかかるケースもあるため、見積もりを取って慎重に判断しましょう。
Q. フランチャイズで飲食店を開業する場合、融資審査は有利になりますか?
本部の事業モデルや収支実績が審査材料に加わるため、未経験者でも事業計画の説得力が増しやすい面はあります。一方で加盟金やロイヤリティが追加コストになる点、本部ブランドに依存する点を踏まえ、収支計画を冷静に組み立ててください。
Q. 創業融資と補助金は併用できますか?
併用は可能です。ただし、補助金は原則「後払い(精算払い)」のため、初期の支払いは融資でカバーしておく必要があります。補助金の対象経費・対象期間も制度ごとに細かく決まっているため、計画段階から専門家に相談すると安全です。
まとめ:飲食店開業融資は「準備の質」で結果が決まる
飲食店の開業融資は、自己資金・経験・事業計画書・物件の4点が揃って初めて評価されます。逆に言えば、この4点を時間をかけて磨いておけば、未経験のジャンルでも融資を引き出すことは十分に可能です。
本記事の内容は2026年5月時点の制度・運用をもとに整理しています。日本政策金融公庫の融資制度や信用保証協会の制度融資は、年度ごとに条件が見直されるため、申込み時には必ず最新の公式情報を確認してください。具体的な事業計画書の作り込みや、金融機関ごとの申し込み戦略については、創業融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























