
建設業が新事業進出補助金で新分野へ参入する方法|活用事例と申請のポイント【2026年版】
「人手不足や資材高騰で、これまでの請負工事だけでは利益が出にくくなってきた」——建設業の経営者からよく聞く悩みです。こうした状況を打開する一手として注目されているのが、2025年に創設された「新事業進出補助金」です。最大で9,000万円規模の設備投資を補助率2分の1で支援する制度で、なかでも建設業は対象経費の構成上、相性が良い業種といえます。この記事では、建設業が新事業進出補助金を使って新分野参入やDX(デジタル化)を進めるための活用事例と、申請で押さえるべきポイントを、起業直後の事業者にもわかりやすく整理します。
※本記事は執筆時点(2026年6月)の公募情報をもとにしています。補助上限・補助率・要件・公募スケジュールは変更されることがあるため、申請前に必ず最新の公募要領で確認してください。
新事業進出補助金とは何か
新事業進出補助金(正式名称:中小企業新事業進出促進補助金)は、中小企業が既存事業とは異なる新市場・新分野へ進出する際の設備投資などを支援する国の補助金です。2025年度に新設され、ものづくり補助金や事業再構築補助金の流れをくむ「成長投資型」の制度として位置づけられています。
主な内容は次のとおりです。
- 補助率:一律2分の1(対象経費の半額)
- 補助上限額:従業員規模に応じて750万円〜7,000万円。大幅賃上げ特例を適用した場合は最大9,000万円まで引き上げ
- 主な対象経費:建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費、広告宣伝費、専門家経費など
従業員20人以下なら上限2,500万円(特例で3,000万円)、21〜50人なら上限4,000万円(特例で5,000万円)といったように、規模が大きいほど上限が高くなる設計です。小規模な建設会社でも、新分野への本格投資を後押しできる金額が用意されています。
建設業と新事業進出補助金の相性が良い理由
新事業進出補助金の大きな特徴は、対象経費に「建物費」が含まれている点です。ものづくり補助金などでは建物の建築費は原則対象外ですが、本補助金では新事業のための建物の建築・改修費が補助の対象になります。自社で施工ノウハウを持つ建設業にとって、これは見逃せないメリットです。
たとえば、以下のような新分野進出が考えられます。
- 土木・建築の請負中心だった会社が、自社保有地に賃貸用・観光向けの施設を建てて運営事業へ参入する
- 新たにリフォーム・リノベーション専門の拠点を整備し、BtoC市場へ展開する
- 解体や産業廃棄物処理など、周辺の許認可ビジネスへ多角化する
建物費・機械装置費の両方を補助対象にできるため、「拠点を整え、そこに必要な設備を入れる」という建設業ならではの投資パターンと噛み合いやすいのです。
建設業の活用事例
事例1:建築業からDX(建設テック)への展開
従来の現場管理を紙とFAXで回していた工務店が、ドローン測量や施工管理クラウド、3Dデータを使った設計・積算システムを導入し、近隣の同業者へ「施工管理代行・デジタル化支援」を提供する新サービスを立ち上げるケースです。システム構築費や機械装置費を補助対象とし、人手不足の中でも受注を伸ばす体制づくりに活用できます。
事例2:請負工事から自社運営事業への参入
これまで元請けの下で工事を請けてきた会社が、自社で土地・建物を整備してコインランドリーやトランクルーム、宿泊施設などの運営事業に乗り出す事例です。建物費が対象になるため、施工力を活かしながらストック型の収益基盤を築けます。景気や受注変動に左右されにくい事業構造への転換は、金融機関からの評価も高まりやすくなります。
事例3:環境・省エネ分野への新規参入
太陽光・蓄電池の施工や断熱改修など、脱炭素ニーズの高まる環境分野へ進出する事例です。新たな施工技術の習得(技術導入費)や専用機械の購入(機械装置費)を補助対象に、成長市場へ早期に参入できます。
新分野への投資には、補助金だけでなく自己資金や融資の準備も欠かせません。「どの補助金が自社の計画に合うのか」「融資とどう組み合わせるか」で迷ったら、専門家に一度相談してみることをおすすめします。
補助対象経費と建設業での使い方
新事業進出補助金で対象になる主な経費と、建設業での使い方の例は次のとおりです。
- 建物費:新事業に使う建物の建築・改修費(本補助金の目玉。多くの補助金で対象外のため要注目)
- 機械装置・システム構築費:新分野で使う設備・機械、施工管理システムなど
- 技術導入費:新工法・新技術の導入にかかる費用
- 外注費:総額の一定割合まで(設計・加工などの外注)
- 広告宣伝費:新事業の販路開拓のための宣伝費(上限あり)
注意したいのは、事務用パソコンや汎用的な車両・備品など、どの事業でも使える汎用品は原則として対象外になる点です。「新事業のために必要な投資かどうか」が線引きの基準になります。
申請要件と押さえておくべき注意点
新事業進出補助金には、成長と賃上げに関する要件があります。執筆時点の主な要件は次のとおりです。
- 新事業要件:既存事業と異なる新製品・新市場への進出で、新事業の売上が一定割合(全体の10%以上が目安)に達する計画であること
- 付加価値額要件:事業終了後の数年間で、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率が4.0%以上となる計画であること
- 賃上げ要件:給与支給総額または事業場内最低賃金を一定水準引き上げること
これらの数値は計画書上の「目標」として求められるもので、申請の前提条件になります。特に賃上げ要件は未達成時に補助金の返還を求められる場合があるため、無理のない計画を立てることが重要です。要件の具体的な数値は公募回ごとに見直されることがあるので、必ず最新の公募要領を確認してください。
また、新事業進出補助金は審査のある競争型の補助金です。「新規性」「市場性」「実現可能性」「収益性」が事業計画書で問われます。建設業の場合、既存の施工力という強みをどう新分野で活かすかを、説得力ある数字で示せるかが採択の分かれ目になります。
申請の流れとスケジュール
大まかな申請の流れは次のとおりです。
- GビズIDプライムの取得(電子申請に必須。発行に数週間かかるため早めに)
- 事業計画書の作成(新事業の内容・市場分析・収支計画・賃上げ計画)
- 電子申請システムからの申請
- 審査・採択発表
- 交付決定後に事業実施(発注・契約は交付決定後が原則)
- 実績報告・補助金の精算払い(後払い)
第4回公募は、申請締切が2026年6月19日とされていました。公募は複数回に分けて実施される見込みのため、次回公募の時期は公式サイトでこまめに確認しましょう。なお補助金は原則として後払い(精算払い)です。先に自己資金や融資で支払い、後から補助金が入金される流れになるため、資金繰りの計画も合わせて立てておく必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業の本業(請負工事)の設備投資にも使えますか?
A. 本補助金は「新事業(新分野)への進出」が前提です。既存事業の増強だけでは対象にならないため、新市場・新製品への進出であることを明確にする必要があります。既存事業の生産性向上が目的なら、ものづくり補助金や省力化投資補助金の方が合う場合があります。
Q. 自己資金がなくても申請できますか?
A. 補助金は後払いのため、事業実施段階では立替資金が必要です。自己資金が不足する場合は、日本政策金融公庫などの融資と組み合わせるのが一般的です。
Q. ものづくり補助金とどちらを使えばいいですか?
A. 既存事業と同じ分野や業種の中で革新的なサービスを展開するならものづくり補助金、新分野への進出なら新事業進出補助金、というのが基本的な使い分けです。建物費を伴う投資は新事業進出補助金が有利になりやすいです。
まとめ
新事業進出補助金は、建物費まで補助対象にできる数少ない補助金で、施工力を持つ建設業にとって新分野参入・DXの強力な後押しになります。一方で、付加価値額や賃上げの要件、後払いによる資金繰りなど、押さえておくべきポイントも多い制度です。「自社の新事業計画がこの補助金に合うのか」「融資とどう組み合わせるか」を見極めるには、補助金の実務に精通した専門家に相談するのが近道です。新分野への一歩を、補助金を味方につけて踏み出しましょう。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。
この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























