
補助金の事業計画書をAIに下書きさせる前に決めたい、任せる範囲と自分で詰める3点
補助金の事業計画書を、本業の合間に社長ひとりで書く場面は少なくありません。最近は生成AIに下書きを頼む方も増えましたが、「どこまで任せてよいのか」「そのまま出して問題ないのか」と迷うところです。この記事では、AIに任せてよい作業と、社長が自分で詰めるべき作業を分けて整理します。
例として取り上げるのは、小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉です。内容は、第20回 公募要領 第8版(2026年7月21日改版)の時点のものです。補助金は制度ごとに審査の見方が異なるため、別の補助金に申請する場合は、その公募要領で同じ確認をしてください。制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局(J-Grants・各事務局サイト)で必ず確認してください。
結論:AIに任せるのは「書く作業」、決めるのは社長です
基準は、「事実や判断を持ち込まなくてもできる作業か」です。
| 作業 | AIに任せる | 自分で決める |
|---|---|---|
| 章立ての案を出す | 任せてよい | 公募要領の項目と合っているかは自分で見る |
| 箇条書きのメモを文章にする | 任せてよい | メモの中身(事実)は自分で用意する |
| 売上や費用などの数字 | 下書きの置き場所までは可 | 数字そのものは自分で決める |
| 対象かどうか、経費が使えるかの判断 | 任せない | 公募要領で自分で確認する |
AIは頼まれたことをそれらしい文章にするのが得意ですが、自社の事実や公募要領に合っているかまでは見ていません。この差が、任せる部分と詰める部分の分かれ目です。
公募要領が求めているのは「自ら検討した計画」です
持続化補助金の公募要領の注意事項には、次の趣旨が書かれています。
- この補助金は、小規模事業者が自ら自社の経営を見つめ直し、経営計画を策定したうえで行う販路開拓の取組を支援するものです。
- 事業者自らが検討しているような記載が見られない場合や、自らが検討していなかったことが発覚した場合は、評価に関わらず不採択・交付決定取消となります。
公募要領には、生成AIの利用を認める、あるいは禁じるという記載は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。つまり、AIを使うこと自体が問われているのではなく、書かれた内容を社長が自分で検討し、説明できるかが問われています。
また、審査は提出資料で行われます。公募要領には「採択審査は非公開で提出資料により行います。提案内容に関するヒアリングは実施しません」とあります。口頭で補足する機会がないため、書類の中身がすべてです。
AIに任せてよい部分:メモの文章化と構成案
AIが力を発揮するのは、白紙の状態から最初の文章を作る場面です。手順は次のとおりです。
- 事業の内容、お客様、売れている商品、困りごと、補助金で実現したいことを、箇条書きでメモにします。文章になっていなくて構いません。
- 公募要領の審査の観点(次の章で整理します)を、AIへの依頼文に入れます。
- 章ごとに分けて、下書きを依頼します。まとめて全部を頼むより、1章ずつのほうが内容を確認しやすくなります。
- 出てきた文章は、直す前の素材として使います。
メモの段階で自社の事実を入れておくことが大事です。材料がなければ、AIは業界全般に当てはまる一般論で埋めてしまい、どの会社が出しても同じ内容の計画書になります。
何をAIに入力してよいか、入れないか
下書きを頼むときは、入力する情報を先に仕分けておきます。細かな法令の話には立ち入らず、実務上の目安だけを挙げます。
| 入れて差し支えないと考えやすいもの | 入れないほうがよいもの |
|---|---|
| 自社のホームページや案内に載せている事業内容 | GビズIDのIDとパスワード |
| 公開している商品・サービスの特徴 | 取引先や従業員など、個人が特定できる情報 |
| 公募要領の項目名 | 公表していない売上・利益・契約の内容 |
GビズIDについては、公募要領の注意事項に、アカウントとパスワードを他の人に開示することは利用規約に反する行為だと書かれています。AIの入力欄にも入れないでください。
取引先の名前や未公表の数字を入れてよいかは、使うサービスの設定や社内のルールで変わります。判断に迷う場合は、専門家や事務局、最寄りの商工会・商工会議所に確認してください。迷う情報は伏せて書き、後から自分で書き足す形にできます。
💬 執筆者の三浦から一言
審査する側にいたころは、申請書の文章だけが判断材料でした。ヒアリングがない以上、社長自身が説明できない一般論の文は、読み手に何も伝わりません。自社の固有名、数字、時期が入っているかを見ると、事業者自身が検討した計画かどうかが文面から読み取れます。
自分で詰める3点:数字・自社の強み・要件適合
ここからが、AIに任せずに社長が決める部分です。公募要領の審査の観点と対応させると、次の3点になります。
数字:AIの数値は仮置きとして扱う
審査の観点には、補助事業計画の効果が客観的事実に基づいて目標設定されているか、事業費の計上や積算が正確・明確か、という項目があります。AIが書いた市場の伸びや売上の見込みは、出どころが不明なまま書かれていることがあります。
根拠を説明できない数字は削るか、決算書、見積書、自社の販売記録など、手元の資料の数字に置き換えてください。数字が分からない箇所は、AIに作らせず空欄にして、自分で埋めます。
自社の強み:他社でも言える文を、自社にしか言えない文にする
審査の観点の最初の項目は、自社の経営状況や、製品・サービス、強みと弱みを適切に把握しているか、というものです。さらに経営方針や今後のプランが、その強みと弱みを踏まえているかも見られます。
AIの下書きには、「高品質なサービスで顧客満足を高める」のような、どの会社にも当てはまる文が入りがちです。お客様が実際に何を求めて来るのか、競合と何が違うのかという具体的な内容に書き換えます。ここは社長にしか分かりません。
要件適合:公募要領と1項目ずつ突き合わせる
基礎審査には、補助対象者や補助対象経費などの要件に合致することが含まれ、満たさなければ失格です。AIは別の補助金の条件と混同することもあるため、次の点は公募要領と照らして自分で確認します。
- 広報費とウェブサイト関連費には、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)あり、どちらも単独での申請はできません。
- 交付決定日より前に行った発注・契約・支払は、対象外です。採択通知が届いただけでは、事業を始められません。
- 単価50万円(税抜)超の機械装置等や、50万円(税込)超の発注には、2者以上の相見積が必要です。
ここで挙げたのは一部です。対象かどうかは公募要領の本文で確認してください。
AIの文章を自社の言葉に直す手順と、商工会・商工会議所への持ち込み方
下書きを自社の言葉に直すときは、次の順で進めると抜けが出にくくなります。
- 主語を確認します。「当社は」「当店は」と、自社の話になっているかを見ます。
- 固有の情報を足します。商品名、お客様の層、地域、時期など、自社でなければ書けない情報を入れます。
- 自分の口で説明できない文を削ります。
- 声に出して読み、違和感のある箇所を直します。
持続化補助金は、商工会・商工会議所の支援を受けながら進める制度です。事業支援計画書(様式4)の発行にあたって、計画の内容について、基本情報入力画面に記載の代表者に直接確認する場合があると、公募要領に書かれています。AIが書いた内容を自分で説明できる状態にしておくことが、この場面でも役に立ちます。
第20回は、2026年11月5日(木)に申請受付が始まり、日程は次のとおりです。
- 事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:2026年12月4日(金)
- 申請受付締切:2026年12月15日(火)17:00
様式4は、受付締切以降の発行依頼が、いかなる理由があってもできません。補助対象者の要件を満たしていないと判断された場合も発行されません。12月4日から逆算して、商工会・商工会議所の窓口に余裕をもって相談してください。
よくある質問
AIで下書きしたことを、申請書に書く必要はありますか。
今回確認した公募要領には、生成AIの利用について書かれた箇所は見当たりませんでした。申請前に最新の公募要領と事務局の案内を確認し、迷う場合は商工会・商工会議所に相談してください。
融資用に作った事業計画書を、そのまま使えますか。
そのまま使うのは避けたほうがよいでしょう。補助金の計画書は、公募要領の審査の観点(自社分析、経営方針とプラン、補助事業計画の有効性、積算)に沿って書く必要があります。観点ごとに書き直してください。
まとめ:AIは下書き役、判断は社長が持つ
AIに任せてよいのは、メモの文章化、構成案、言い回しの調整です。数字、自社の強み、公募要領との適合は、社長が自分で決めます。
出典:小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回 公募要領 第8版(2026年7月21日改版)。制度は改定されることがあるため、申請前に最新の公募要領や事務局(J-Grants・各事務局サイト)で必ず確認してください。
【無料相談のご案内】
弊社は、V-Spiritsグループ代表の中野裕哲を中心に、元補助金審査員の三浦をはじめとした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























