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コラム

創業計画書の取引先が未定でも大丈夫?話の進み具合で書き分ける方法

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創業計画書の取引先が未定のとき、候補と見込みの根拠をどう書くか

創業計画書の「取引先・取引関係等」の欄を前にして、まだ何も決まっていないので書けないと手が止まる人は、飲食店以外の業種でも出てきます。開業前の段階で、販売先や仕入先、外注先との契約まで進んでいないのはふつうのことです。

ただ、「未定」の二文字だけを書いて提出すると、売上が立つ見通しがどこにも示されない計画書になってしまいます。この記事では、決まっていない取引先を、候補・販売経路・見込みの根拠に分けて書く手順を、業種を限定せずに説明します。

取引先欄は「売上が立つ見通し」を確かめる欄

この欄で見られているのは、立派な取引先の名前が並んでいるかどうかではありません。誰に売り、どこから仕入れ、どこに任せるのか。その流れが、取扱商品・サービスの欄や事業の見通しの欄と食い違わずにつながっているかどうかです。

日本政策金融公庫の創業融資では、審査で、同じ業種での勤務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。取引先欄は、このうち事業計画の具体性、つまり売上・原価・人件費の根拠を支える欄にあたります。

様式には、販売先、仕入先、外注先のほか、回収や支払の条件を書く項目もあります。契約が済んでいなくても、自分はどんな条件で代金を受け取り、支払うつもりなのかを考えておくと、資金繰りの説明にもつながります。

創業前は実績で裏づけられない分、計画の書き込みで見られる比重が上がります。取引先が決まっていないこと自体を気にするより、決まっていない部分をどこまで具体的に説明できるかに力を注ぐほうが、申込の準備として前に進みます。

業種に合わせて販売先・仕入先・外注先を読み替える

様式の項目名は飲食店を想定した説明で紹介されることが多く、サービス業や受託業では何を書けばよいか迷いがちです。次のように、自分の事業に置き換えて考えると整理しやすくなります。

  • サービス業:販売先は利用してくれる個人または法人のお客さまです。仕入先は材料が少ない業種なら、道具やソフトの提供元、場所の貸し手などになります。
  • 法人向けの受託業:販売先は仕事を発注してくれる会社や部署です。仕入先は素材や部品、ソフトの提供元、外注先は作業の一部を任せる個人や会社です。
  • 小売:販売先は店舗に来る客層やネット上の購入者、仕入先は卸売業者やメーカーです。

外注を使わない計画なら、使わないと分かる形にしておきます。外注を使う計画なら、誰に・どの範囲を・いくらで任せるのかまで計画に落とします。外注そのものが弱みになるのではなく、金額と担当範囲が書かれていないことが弱さになります。

決まっていない段階を、確定の度合いで書き分ける

「決まっていない」には幅があります。いまの状態がどこにあたるかを、次の段階で整理してみてください。

  • 契約や発注の約束が済んでいる
  • 見積書を出した、条件のやり取りが始まっているなど、話が具体的に進んでいる
  • 連絡を取った、紹介を受けた、候補として検討している
  • 相手の名前はまだ出せないが、どの経路で見つけるかは決めている

書いてよいのは、実際にその段階まで進んでいるものだけです。打診しただけの相手を「取引予定」と書いたり、候補にすぎない先を「契約済み」と読めるように書いたりすることは避けます。段階を正直に分けて書けば、決まっていない部分があること自体は欠点になりません。

多胡藤夫

💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言

取引先欄を、お客さまの名前を並べるだけの欄だと考えている方がいますが、そうではありません。この投資でこれだけ売上が上がり、収益がこれだけ出る、というところまで書いて初めて効果が示せます。機械の生産能力で示せる製造業と違い、店舗や小売、サービスは示しにくい分、販売先と販売経路の説明がその代わりになります。

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多胡藤夫
監修元日本政策金融公庫 支店長 多胡藤夫/執筆 元朝日信用金庫 融資担当営業 小峰精公

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「未定」だけで終わらせない書き足し方

相手の名前が出せなくても、次の三つは書けることが多いはずです。

誰に売るのか

「一般個人」や「法人」とだけ書くのではなく、年代、職種、会社の規模や業種など、具体的な顧客像を書きます。商品・サービスの欄に書いた内容と食い違わないようにします。

どの経路で売るのか

紹介、自社サイト、モールや予約サイト、営業の訪問、既存の知り合いからの依頼など、お客さまと出会う経路を書きます。経路が複数あるなら、中心になるものを先に書きます。

いつまでに決めるのか

開業までのどの時期に、誰と話をして決めていくのかを一文添えます。決まっていない状態を放置しているのではなく、段取りの途中にあることが伝わります。

見込みの根拠に使える材料

根拠は、実際に手元にあるものだけを使います。次のようなものが材料になります。

  • これまでの勤務で築いた取引先や担当者との関係。同じ業種での勤務経験の欄に書いた内容と整合させます。
  • 相談や問い合わせを受けた記録、見積書や提案書の控え。
  • 試作品やサンプルを見せたときの反応のメモ。
  • 販売サイトや卸売業者の取引条件を調べた資料。

数字を使う場合は、自分で調べた範囲の数字に限り、出どころを示せる形にします。取引先欄の客数や件数が、事業の見通しの欄で置いた売上の計算と合っているかも確かめます。ここがずれていると、どちらの欄の説明も弱くなります。

書き方の例

実際の状況に合わせて置き換えてください。名前や数字は、事実と異なるものを入れないようにします。

  • 契約前で話が進んでいる場合:「販売先は法人の発注元です。現在、前職で付き合いのあった会社と見積の段階にあります。契約は開業前の調整を経て決める予定です。」
  • 候補のみの場合:「販売先は個人のお客さまで、自社サイトと予約サイトからの集客を中心に考えています。掲載条件は調べ済みで、開業前に出店先を決めます。」
  • 仕入先が複数ある場合:「仕入先は卸売業者を候補に二つの条件を比べているところです。比較結果は別紙にまとめます。」

決まっていない取引先を、決まったように書かない

計画書を整えたい気持ちから、候補の段階の相手を既に決まった取引先のように書くのは避けてください。面談では、取引先の話が具体的に聞かれます。事実と違う内容は、説明を重ねるほど食い違いが出ます。

申込のあとで取引先の状況が変わった場合は、そのままにせず、申込先に伝えて対応を確認します。契約書の内容や取引条件の取り決めは専門家に相談してください。この記事では扱いません。

次にやること

  1. 販売先・仕入先・外注先それぞれについて、いまの確定の度合いを書き出す。
  2. 顧客像、販売経路、決める時期を一文ずつ言葉にする。
  3. 根拠になる材料を手元から集め、ない部分は開業前にやることとして整理する。
  4. 取引先欄の内容を、取扱商品・サービスの欄、事業の見通しの欄と突き合わせる。

この四つを終えてから創業計画書の取引先欄に書き込むと、「未定」の二文字に頼らず、決まっていることと決まっていないことを分けて説明できます。まず今日、手元にある見積書や相談の記録を一か所に集めるところから始めてください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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