
小規模企業共済制度 完全ガイド〜会社設立前に知っておくべき退職金づくりと節税の仕組み
はじめに:社長にも“退職金”が作れる制度
会社を設立して社長になると、サラリーマン時代のように「退職金制度」が自動的についてくるわけではありません。
ズバリ言います。
社長自身の退職金は、自分で準備しなければならないのです。
そんなとき、心強い味方になるのが小規模企業共済制度。
これは、中小企業の経営者や個人事業主のために国が用意した“経営者の退職金”制度で、節税効果も非常に高い優れものです。
この記事では、会社設立を考えている方に向けて、小規模企業共済の仕組みやメリット・注意点、加入のタイミングや活用法をわかりやすく解説します。
目次
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小規模企業共済制度とは?
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加入できる人の条件
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掛金の仕組みと支払方法
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節税効果とシミュレーション
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共済金の受け取り方
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途中解約の条件と注意点
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加入のタイミングと戦略
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他の制度との比較(iDeCo・企業型DCなど)
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賢い活用法3パターン
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FAQ(よくある質問)
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まとめ
1. 小規模企業共済制度とは?
小規模企業共済制度は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、経営者や個人事業主のための退職金積立制度です。
主な特徴は以下の3つ。
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掛金が全額「所得控除」の対象
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退職時にまとまった共済金が受け取れる
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国が運営しているため安全性が高い
つまり、「退職金準備+節税」を同時に実現できる制度です。
2. 加入できる人の条件
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会社役員(株式会社の代表取締役や取締役など)
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個人事業主
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共同経営者
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会社の役員であれば法人の規模や資本金は不問(ただし、常時使用する従業員数などに上限あり)
一般のサラリーマンは加入できませんが、会社設立後の社長や役員なら対象になります。
3. 掛金の仕組みと支払方法
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月額1,000円〜70,000円まで(500円単位で設定可能)
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年間最大84万円
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掛金額は途中で増額・減額可能
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支払いは口座振替が基本
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前納(1年分まとめ払い)も可能
4. 節税効果とシミュレーション
掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。
たとえば、年間84万円を掛けた場合の節税額(所得税+住民税)は以下のとおり。
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所得税率20%+住民税率10%=30%
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節税額:84万円 × 30% = 約25万2,000円/年
10年間で約252万円の節税効果となります。
5. 共済金の受け取り方
受け取り方法は3種類。
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一括受取
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分割受取
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一括+分割の併用
6. 途中解約の条件と注意点
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240か月(20年)未満で自己都合解約 → 元本割れの可能性あり
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会社廃業・役員退任・死亡などの事由による解約 → 全額受取可
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解約時も非課税ではなく、受取方法により課税される
7. 加入のタイミングと戦略
会社設立直後から加入しておくと、節税効果を長く享受できます。
特に利益が出始めるタイミングで掛金を増額すると、効率的に節税+積立ができます。
8. 他の制度との比較(iDeCo・企業型DCなど)
項目 | 小規模企業共済 | iDeCo(個人型確定拠出年金) | 企業型DC |
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加入対象 | 経営者・個人事業主 | ほぼ全員(条件あり) | 企業従業員 |
掛金控除 | 全額 | 全額 | 全額 |
受給開始年齢 | 退職・廃業時 | 原則60歳以降 | 規程による |
中途引出し | 原則不可 | 原則不可 | 原則不可 |
安全性 | 高い(国運営) | 金融商品による | 企業運営 |
9. 賢い活用法3パターン
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役員報酬の一部を掛金に回す
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節税+退職金準備の両立
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利益が出た年に掛金を増額
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短期で節税効果を高める
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他の節税制度と組み合わせる
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iDeCoや倒産防止共済との併用で節税力アップ
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10. FAQ(よくある質問)
Q1. 掛金はいくらから始めるべき?
A. 無理のない範囲で構いませんが、節税効果を高めるには月額3万円(年間36万円)以上を目安にすると良いでしょう。
Q2. 利益が出ていない年でも加入すべき?
A. 所得が低い年は節税効果は小さいですが、長期積立という観点では早めの加入がおすすめです。
Q3. 倒産防止共済と併用できる?
A. 併用可能です。両方の掛金が全額所得控除になります。
Q4. 掛金の減額や一時停止はできる?
A. 減額は可能ですが、一時停止はできません。
11. まとめ
小規模企業共済は、経営者にとって「退職金づくり」と「節税」を両立できる非常に優秀な制度です。
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国が運営する安全性の高い仕組み
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掛金全額が所得控除
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長期で加入するほど有利
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退職金として受け取れば税負担も軽い
会社設立後の資金戦略に、この制度をうまく組み込み、将来の安心と現在の節税を同時に実現しましょう。
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この記事を書いた人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧困状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一。補助金・助成金支援実績600件超。ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版。累計25万部超。無料相談件数は全国から累計3000件を超す。
この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。