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コラム

メインバンクの決め方|開業直後に選ぶ4つの基準と、あとから移すときの順番

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メインバンクの決め方|開業直後に選ぶ4つの基準と、あとから移すときの順番

メインバンクは開業のときに決まらない|起業直後に自分で決められること

開業して半年から2年ほど経つと、口座がいくつかある状態のまま「うちのメインバンクはどこなのか」がはっきりしない、ということが起こります。創業融資は日本政策金融公庫から借りていて、売上の入金は開業前に作った口座、家賃や仕入の引落は別の口座、という分かれ方も珍しくありません。

この記事では、開業して間もない事業者に向けて、メインバンクという言葉をどう扱えばよいのかを5つの質問に答える形で整理します。選ぶときに見る4つの観点と、あとから移すときに実際に何が動いて何が動かないのかまで扱います。数字は執筆時点のもので、条件によって変わります。

「メインバンク」は制度の名前ではありません

最初に前提をそろえます。法律や制度の中に「メインバンク」という区分はありません。日々の入出金と借入がいちばん集まっている先を、実務でそう呼んでいるだけの言葉です。届出をして決まるものでも、どこかに登録されるものでもありません。

ここが分かると、質問の立て方が変わります。「どこをメインバンクに決めるか」ではなく、「どこに口座を置き、どこに相談に行くか」を自分で決める、という話になります。メインバンクという呼び方のほうは、取引が積み上がった結果として後からついてきます。開業の時点で自分の側で動かせるのは前者だけです。

Q1. メインバンクは開業のときに決めておくものですか

開業の段階で決まるのは、日々の入出金をどこに通すかまでです。売上をどの口座で受け、家賃や仕入の引落をどこから出し、人を雇っていれば給与をどこから振り込むか。ここは開業の準備として先に決める必要があります。

一方で、借入の主たる相手がどこになるかは、開業時点では決まりません。開業直後は返済の実績も月々の推移もこれからで、相手の側にも見るものがないからです。決算や試算表が積み上がり、資金が必要になる場面を何度か一緒に通ってから、結果として濃い取引先ができていきます。

ですから開業時にやることは、決めることではなく置き場所を選ぶことです。あとで動かせる前提で選んでかまいません。

Q2. 選ぶときは何を見ればよいですか

開業して間もない段階で比べられるのは、次の4つです。

1. 事業所の場所

民間金融機関には営業する地域の範囲があります。地域に根ざした金融機関ほどその範囲がはっきりしていて、事業所や住まいがどこにあるかで、相談できる先が変わります。信用金庫のように会員になることが前提となる形態もあるため、候補を挙げる段階で自分が範囲の中に入るかを確認しておくと、あとで空振りになりません。

2. 日々の入出金の使い勝手

売上がどの経路で入るのか、引落や振込をどの手段で行うのか、締めや反映のタイミングはどうか。ここは毎月・毎週触る部分なので、合わないと手間がそのまま残り続けます。開業直後は取引の件数が少なく判断しづらいのですが、想定している月の件数を書き出してから比べると差が見えます。

3. 事業の話ができる相手がつくか

窓口で手続きができることと、事業の状況を聞いてくれる相手がいることは別です。担当がつくかどうかは事業の規模や取引の状況によって変わるため、開業直後に必ずつくとは限りません。ただ、相談に行ったときにどこまで話を聞いてもらえたかは、その場で分かります。

4. 自治体の制度融資を使う可能性があるか

制度融資は自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、融資の実行主体(お金の出し手)は民間金融機関です。信用保証協会は保証を付ける役割で、協会が直接貸すわけではありません。自治体は利子補給や預託などで関与します。

つまり制度融資を検討するなら、候補は「その制度を取り扱っている民間金融機関」になります。開業予定地の自治体にどの制度があり、どの金融機関が窓口になっているかは、候補を絞る前に確認しておくと順番が前後しません。

Q3. 公庫から創業融資を受けています。公庫がメインバンクになりますか

日本政策金融公庫の位置づけは、株式会社日本政策金融公庫法の第一条(目的)に書かれています。

株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)は、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担うとともに、内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な金融を行うほか、当該必要な金融が銀行その他の金融機関により迅速かつ円滑に行われることを可能とし、もって国民生活の向上に寄与することを目的とする株式会社とする。

冒頭に「一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ」とあります。補完する立場だと法律の目的規定に書かれている、ということです。

そのため、創業融資を公庫から受けていても、日々の入出金の口座を公庫に置くことにはなりません。借入の一部は公庫、日々の決済は民間金融機関、という状態は開業初期には自然に生まれます。公庫からの借入があること自体は、民間金融機関との取引を育てない理由にはなりません。

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Q4. あとから移せますか。いまの借入はどうなりますか

移せます。ただし、宣言して切り替わるものではありません。日々の入出金や給与の振込が先に移り、そのあと新しい資金需要が出たときに新しい先で借入が積み上がる、という順で、時間をかけて入れ替わっていきます。

いまある借入は、契約に沿って返済が続きます。日々の取引を別の先に移したからといって、残っている借入をその場で全額返すことになるわけではありません。返済の条件は契約で決まっているもので、取引量の増減で自動的に変わるものではないからです。

動かす順番としては、まず日々の入出金です。ここが移ると、相手の側にも自社の動きが見えるようになります。そのうえで、次に資金が必要になった場面で新しい先に相談します。借入の主たる相手が移るのはその先で、早くても年単位の話になります。

Q5. いまの取引先には何を伝えればよいですか

伝える内容は、不満ではなく事実で足ります。どこと新しく取引を始めるのか、日々の入出金をどう分けるのか、いまの借入の返済はこれまでどおり続けること。この3つが伝わっていれば、相手の側は状況を把握できます。

黙って移した場合、相手は理由が分からないまま取引が細ることだけを見ることになります。関係が薄くなってから資金が必要になると、事業の中身を一から説明し直すところから始まります。

時間の面でも同じことが言えます。融資は書類を提出してから実行までおおむね3週間から1か月、準備を含めると合計で2か月ほどを見ておくと安全です。資金が必要になった月に初めて訪ねた先で間に合わせるのは、この所要時間からすると難しくなります。移した先で借りるつもりなら、借りる予定がない時期から取引を始めておくことになります。

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相手を替えれば結果が変わる、と考えて動く方がいます。ただ、否決された直後に原因を潰さないまま次へ出し直しても、結果は変わりません。自己資金の不足、事業計画の説得力の不足、斯業経験の説明の不足など、どこで止まったのかを先に特定してから出し直す。順番はこちらが先です。相手を増やす話は、そのあとでも間に合います。

開業1〜2年の段階で、先に手を動かせること

いまの段階でできることを4つに分けます。

  1. いくつ口座があり、どこに何が動いているかを1枚に書き出します。売上の入金先、家賃・仕入の引落、給与の振込、公庫への返済の引落を並べます。
  2. 事業所の場所から見て、相談に行ける距離にある民間金融機関を挙げます。ここで営業する地域の範囲と、会員資格の有無を確認します。
  3. 自治体の制度融資を使う可能性があるなら、その制度を取り扱っている窓口かどうかを確認します。
  4. 公庫からの借入は返済予定表で残りの期間と月々の額を確認し、そのうえで民間側の取引をどこから増やすかを決めます。

この4つが埋まると、「どこをメインバンクにするか」という問いは「どの順番で取引を増やすか」という問いに変わります。後者のほうが、いまの段階では手が動きます。

まとめ

メインバンクは制度上の区分ではなく、取引が集まった結果の呼び方です。開業のときに自分で決められるのは、口座の置き場所と相談に行く先までで、そこから先は取引の積み上がりで決まっていきます。

選ぶときは、事業所の場所・日々の入出金の使い勝手・事業の話ができる相手がつくか・制度融資を使う可能性があるか、の4つで比べます。公庫は一般の金融機関を補完する立場だと法律に書かれているとおり、日々の決済の相手にはなりません。あとから移すこともできますが、日々の入出金が先で借入は後、という順に時間がかかります。

どの金融機関と、どの順番で取引を増やしていくかは、事業の中身や資金が必要になる時期によって変わります。判断に迷う場面があれば、事業計画の作り方や面談で聞かれる論点の整理を含めて、専門家にご相談ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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