
執筆:多胡藤夫(元日本政策金融公庫支店長・V-Spirits総合研究所株式会社 取締役)
📹 動画でも解説しています(約5分)
記事の内容を多胡が動画でも話しています。読む前にざっと見ていただくと、流れが頭に入りやすいです。
「60過ぎてから起業したいけど、年齢で融資を断られないか不安」——相談に来られる方から、よくこういう話を聞きます。
先に答えだけ言ってしまうと、年齢そのものが可否の理由になることはまずありません。ただ、「年齢は全く関係ない」かといえば、それも正確ではない。
私は公庫で30年以上、約63,000社の融資審査に携わりました。60代・定年後の方の申請も数えきれないほど見てきました。その経験から、審査の現場で実際に何が起きているかをお話しします。
📌 この記事を書いたのは?
- 元日本政策金融公庫支店長(約63,000社の融資審査に従事)
- 支店長時代にベンチャー企業支援審査会委員長・企業再生協議会委員を歴任
- 現在はV-Spiritsグループで、融資を受ける側を支援
- 税理士・中小企業診断士・社労士・行政書士が揃うワンストップ体制
- 経済産業省「DREAMGATE」にて相談件数12年連続日本一
- オフィスは日本政策金融公庫 池袋支店と同じビル(池袋駅徒歩3分)
この記事でわかること
1. 年齢が「有利」「不利」に働く、それぞれの場面
「何歳だから通る・通らない」という話ではありません。ただ、年齢が審査に影響する場面はあります。
不利に働きやすい場面
公庫の融資は、短いもので数ヶ月、設備投資なら10年近い返済期間になります。審査担当者は「完済まで事業が持つか」を必ず考えます。そのため、
- 返済期間が長い場合、完済時の年齢が気になる
- 後継者がいないと、廃業リスクとして映る
- 体力を使う仕事で、継続性に疑問符がつくことがある
差別ではなく、「お金が返ってくるか」を見ているだけです。
有利に働く場面
60代の方には、若い起業家が持っていないものがあります。
- 長年の業界経験と人脈——「売れる」根拠が具体的
- 既存の取引先や顧客——開業初日から売上が立つ可能性がある
- 退職金を自己資金に充てられる——資金比率が上がる
- 業界の価格感覚・商慣習を知っている——計画書に現実味がある
審査する側から見ると、「30年働いた業界で独立する人」の計画書は、それだけで別格の説得力があります。
「年齢が高い=不利」ではない。年齢に見合った経験・準備・資金が揃っているか——審査の本質はここです。
——多胡藤夫
2. 60代の申請に独特の説得力がある理由
私が公庫にいた頃、60代の創業融資は珍しくありませんでした。そして正直に言うと、年配の方の申請書の方が中身が濃いことが多かったです。
「経験」が担保になる
たとえば、メーカーで30年営業をやってきた方が退職後に独立する場合を考えてみてください。
- 電話一本で話を聞いてくれる顧客が何十社もいる
- 業界の相場、仕入れ先、競合の動きを全部知っている
- 「なぜ自分が選ばれるのか」を自分の言葉で説明できる
これは、20代の起業家がいくら準備しても埋められないものです。計画書を読んだ瞬間、審査担当者も「この人は本物だ」とわかります。
退職金が自己資金になる
公庫の審査で必ず見られるのが、自己資金の額と出どころです。「コツコツ貯めてきたお金か」を確認します。
退職金はそのままこれに使えます。金額も大きいことが多く、融資希望額に対する自己資金比率が上がる分、審査はかなり楽になります。
「なぜ今このタイミングで起業するのか」という問いに対して、「定年を機に長年温めてきたアイデアを形にしたかった」——これ以上わかりやすい動機はありません。
3. 審査で実際に見ている3つのポイント
年齢を問わず、公庫の創業融資で必ず確認されるのはこの3つです。
① 事業計画の中身
「何を」「誰に」「いくらで」売るのか。それが数字と根拠で書いてあるかどうかです。
60代の方に特に伝えたいのは、「経験を数字に変える」ことです。「30年のキャリアがある」だけでは審査書類になりません。「そのキャリアで月◯◯万円の売上が見込める、なぜなら〜」という形にして初めて計画書になります。
② 自己資金の額と出どころ
前項でも触れましたが、自己資金は「見せ金」では通りません。直前に親族から借りたお金、一時的に口座に入れたお金——これらは担当者にすぐわかります。
退職金を使う場合は隠す必要がまったくありません。退職金の活用は、出どころがはっきりしていて、金額も大きい、理想的な自己資金です。
③ 面談での話し方
書類だけで融資が決まることはありません。必ず面談があります。担当者は「この人は本気か」「準備してきたか」を見ています。
「なぜこの事業をやるのか」を、自分の言葉で話せるかどうか。60代・70代の方には、長い社会人経験に裏打ちされた「なぜ」があるはずです。それが伝わるかどうかが、最後の分かれ目です。
4. 健康・体力面はどう扱われるか
「高齢だと健康面で不利になるのでは」——これもよく聞かれます。
健康診断書の提出を求めることは、通常の創業融資審査ではありません。健康状態を申告する欄もないです。
ただ、業種によって話が変わります。
- デスクワーク中心(コンサル・士業・執筆・IT系):健康面はほぼ気にされない
- 体を使う仕事(建設・物流・飲食の現場など):「続けて働けるか」が事業継続性の問題として出てくる場合がある
体力を使う業種で申請するなら、「自分が倒れても事業が回る体制」を計画書に書いておくのが得策です。スタッフの採用計画、業務を任せられるパートナーの存在など、具体的に書けるほど安心感が出ます。
5. 55歳以上が使える公庫の優遇制度
これは多くの方が知らないのですが、公庫にはシニア起業家を金利面で優遇する制度があります。
女性、若者/シニア起業家支援資金
新規開業・スタートアップ支援資金のうち、55歳以上の方を対象にした優遇枠です。通常の新規開業資金より金利が低く設定されており、無担保・無保証人で使えるケースもあります。
年齢がハンデになるどころか、55歳以上であることが優遇条件に変わる制度です。申請する際は、この枠を使わない手はありません。
⚠️ 制度の金利・条件は変更される場合があります。最新情報は公庫の公式サイト、またはV-Spiritsへの無料相談でご確認ください。
6. よくある質問
Q. 60歳を超えても公庫の融資は受けられますか?
受けられます。上限年齢の制限はありません。事業計画と自己資金が整っていれば、60代・70代でも融資を受けているケースはたくさんあります。
Q. 退職金を自己資金にしても大丈夫ですか?
大丈夫です。出どころが明確で金額も大きい、審査上の理想的な自己資金です。定年退職をきっかけにした起業は「動機が明確」として、むしろプラスに評価されるケースもあります。
Q. 未経験の業種でも60代から融資は通りますか?
未経験業種は年齢を問わずハードルが上がります。ただ、経験者をスタッフやパートナーとして迎える計画があれば、それを事業計画に書くことで評価が変わります。
Q. ITが苦手だと不利になりますか?
苦手な部分を外注・パートナーで補う計画があれば、不利にはなりません。「自分の弱いところを把握して手を打てる」のは、経営者として当たり前の話。むしろ冷静な自己分析として評価されます。
Q. 相談から融資実行まで、どのくらいかかりますか?
申込から融資実行まで1〜2ヶ月が目安です。事業計画書の準備に思いのほか時間がかかるケースが多いので、起業の予定が固まったら早めに動いてください。
「自分の場合、融資は通るのか」——まず話だけでも聞かせてください
V-Spiritsには、元日本政策金融公庫支店長・多胡藤夫が在籍しています。
「年齢・経験・資金の状況で、融資が現実的かどうか」を無料でお伝えします。
60代・定年後の相談も多く受けています。
電話でも:フリーダイヤル 0120-335-523
【無料相談のご案内】
60代・定年後の起業、公庫融資のご相談(融資の可否診断・事業計画書の作成・申請サポートなど)も無料で承っております。
「年齢的に大丈夫なのか」「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも構いません。お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。




























