
事業融資と年齢の関係とは?
高齢の経営者が資金調達を成功させるために知っておくべきこと
今回は、**事業融資と「年齢」**の関係について解説します。
なお、本記事でいう年齢とは、
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個人事業主の場合:事業主本人の年齢
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法人の場合:代表者(社長)の年齢
として読み進めてください。
相談現場では、
「今まで普通に借りられていたのに、急に融資が厳しくなった」
「業績は悪くないのに、年齢の話をされるようになった」
という声をよく耳にします。
これは決して珍しい話ではなく、
一定の年齢を超えると、金融機関の見方が変わる
という明確な理由があります。
目次
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年齢は融資審査の重要なポイント
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なぜ高齢だと融資が厳しくなるのか
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年齢制限が緩和される2つのケース
3-1. 社内外に後継者が見込める場合
3-2. 大幅に資産超過である場合 -
準備不足が命取りになる理由
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経営者の責務としての承継と資金調達
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高齢になってからでは遅い理由
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よくある質問(FAQ)
年齢は融資審査の重要なポイント
事業融資は、短期の運転資金であっても数ヶ月、
設備資金であれば5年〜10年程度の返済期間を設定することが一般的です。
つまり金融機関は、融資を行う際に、
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完済まで事業が続くか
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安定した返済が継続できるか
という視点で審査を行います。
この「完済までの事業継続性」を判断するうえで、
社長の年齢は避けて通れない審査項目となります。
なぜなら、中小企業では、
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経営判断
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取引先との関係
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技術・ノウハウ
の多くが、社長個人に集中しているケースが非常に多いからです。
なぜ高齢だと融資が厳しくなるのか
金融機関や信用保証協会は、
「万一のとき、返済はどうなるのか?」
という最悪のケースを必ず想定します。
融資の返済原資は、
あくまで事業が生み出す利益です。
ところが、社長が高齢になると、
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健康リスクが高まる
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判断スピードが落ちる
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体力的に現場対応が難しくなる
といったリスクが、どうしても現実味を帯びてきます。
特に日本の中小企業では、
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社長が営業の要
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社長が技術の要
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社長が意思決定の中心
という構造が多く、
社長の不在=事業停止リスクにつながりやすいのです。
金融機関としては、
完済前に事業が立ち行かなくなる可能性はないか
返済が滞るリスクはないか
この点を無視するわけにはいきません。
その結果として、
「社長はこの年数、健康に経営を続けられるか?」
という視点で年齢が審査されるのです。
年齢制限が緩和される2つのケース
ただし、ここで重要なのは、
年齢は絶対条件ではないという点です。
金融機関は、年齢だけで機械的に判断するわけではありません。
個別事情を総合的に見て判断します。
代表的な「年齢ハードルが下がるケース」を見ていきましょう。
社内外に後継者が見込める場合
まず一つ目が、後継者の存在が明確な場合です。
後継者とは、例えば、
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家族(子ども・親族)
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社内の役員・従業員
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同業経験のある外部人材
などが該当します。
重要なのは、
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名前が挙がっているだけ
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形式的に決めただけ
では足りない、という点です。
金融機関が見るのは、
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すでに事業に関与しているか
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実務経験・業界経験があるか
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現社長がいなくなっても回る体制か
という実態です。
事業計画の中で、
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承継の時期
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承継後の役割分担
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教育・引き継ぎの進め方
を具体的に示すことで、
事業継続性が担保され、年齢の壁は大きく下がります。
大幅に資産超過である場合
二つ目は、
法人・個人を問わず、大幅な資産超過の状態にある場合です。
金融機関が年齢を問題にする本質は、
事業が止まったとき、返済できるか?
という一点です。
仮に、
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廃業
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解散
となったとしても、
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現預金
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売掛金
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不動産
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換金性の高い資産
によって一括返済が可能と判断されれば、
年齢要件は大きく緩和されます。
ここで重要なのは、
「担保を取っているかどうか」ではありません。
決算書上、資本超過であるかどうか
これ自体が、金融機関にとって強力な安心材料になります。
準備不足が命取りになる理由
現実問題として、
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後継者が未定
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財務体質が弱い
という企業は、決して少なくありません。
中には、
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高い技術力
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長年築いた取引先
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優秀な従業員
を持ちながら、
「準備不足」だけを理由に廃業に追い込まれる企業もあります。
これは、
経営者個人にとっても、
社会全体にとっても、非常に大きな損失です。
経営者の責務としての承継と資金調達
社長が何十年もかけて築いてきたものは、
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技術
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人材
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信用
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ブランド
といった、数字に表れにくい資産です。
これらを守るためには、
事業を止めないことが何より重要です。
そして事業を止めないためには、
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計画的な事業承継
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安定した資金調達
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健全な財務体質
をセットで考える必要があります。
事業承継と融資は、
別々のテーマではなく、一体で考えるべき経営課題なのです。
高齢になってからでは遅い理由
ズバリ言います。
「借りられなくなってから準備する」では遅い
これが、現場で数多くのケースを見てきた実感です。
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後継者育成には時間がかかる
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財務改善も一朝一夕ではできない
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信用力は積み上げるもの
だからこそ、
「まだ元気だから」
「まだ先の話だから」
と先送りせず、
動けるうちに準備を始めることが最大のリスクヘッジになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 何歳から融資が難しくなりますか?
A. 明確な基準はありませんが、60代後半〜70代になると慎重に見られる傾向があります。
Q. 高齢でも新規融資は可能ですか?
A. 後継者計画や資産状況次第で十分可能です。
Q. 最初にやるべき準備は何ですか?
A. 財務状況の整理と、後継者候補の洗い出しから始めましょう。
【無料相談のご案内】
起業の手続きって何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
補助金コンサルタント、融資・資金調達コンサルタント、
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


























