
開業数年目の美容室が内装・設備更新の資金を融資でどう組み立てるか
開業から数年が経ち、椅子やシャンプー台の老朽化、内装の色あせが気になり始めた美容室は少なくありません。リニューアルには数百万円単位の資金が必要になることも多く、「融資・リース・自己資金のどれをどう組み合わせればよいか」で迷う経営者が多いテーマです。この記事では、開業数年目という前提に絞って、資金調達の考え方をステップで整理します。
開業数年目の美容室が使う融資は「創業融資」ではない
資金調達の記事は開業前の創業融資を扱うものが大半で、開業後のリニューアル資金がどの融資区分になるかはあまり整理されていません。日本政策金融公庫の融資では、税務申告を2期終えていない「創業期」の方向けに、無担保・無保証人での利用や利率の引下げが案内されています。開業から数年が経ち税務申告を2期以上終えている美容室は、この創業期向けの区分ではなく、通常の融資区分で審査されることになります。
2026年6月1日現在の基準利率は、無担保・税務申告2期以上完了の場合で年3.50〜5.20%です。無担保・2期未了(創業期)の場合は年3.45〜5.15%とわずかに優遇されております。同じ日本政策金融公庫でも、開業直後に借りるときと数年後にリニューアル資金を借りるときとでは適用される利率区分が異なる点を押さえておきましょう(実際の適用利率は審査・条件により変動するため、必ず時点付きの最新情報で確認してください)。
内装・設備更新の資金使途を「設備」と「運転」に分けて考える
リニューアルにかかる費用は、内装工事・什器購入などの「設備資金」と、工事期間中の売上減少をカバーする「運転資金」に分けて考えると、融資の組み立てがしやすくなります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を例にすると、設備資金は返済期間20年以内、運転資金は原則10年以内で、いずれも据置期間は5年以内です(この返済期間・据置期間の例は新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合のものです。開業数年目で通常の融資区分を利用する場合は、制度ごとに条件が異なるため個別に確認してください)。工事費と当面の運転資金をひとつの申込みにまとめるか分けるかによって、審査の見え方が変わることもあるため、事前に金融機関へ相談しておくと安心です。
内装・設備更新にかかる費用のイメージ
更新費用は店舗の規模・グレード・工事範囲によって大きく変わるため一律の相場は示せませんが、考え方の目安として、部分的な模様替え(クロス・照明・小物什器の入れ替え程度)は数十万円〜100万円台に収まることが多く、床・水回りまで含む内装全面リニューアルや、シャンプー台・セット椅子など主要什器の総入れ替えが重なると数百万円規模になりやすいというのが実務上の感覚です。開業時の内装工事費用は開業資金全体のうちでも大きな割合を占めることが一般的で、リニューアルもその延長で考えると、資金計画の初期段階で概算の見積もりを複数の業者から取っておくことが欠かせません。
融資・リース・自己資金をどう組み合わせるか(ステップ)
ステップ1:更新する項目を棚卸しする
内装(床・壁・照明・待合スペース)、什器(シャンプー台・セット椅子・ミラー台)、設備(給湯設備・空調)など、更新したい項目を洗い出し、それぞれの概算費用を把握します。項目によって「所有した方がよいもの」と「入れ替え前提で借りた方がよいもの」が分かれてきます。
ステップ2:リースと融資の向き・不向きを整理する
初期費用を抑えたい、数年ごとに新しい機種へ入れ替えたいという場合はリースが選択肢になります。一方、長期間使い続ける前提の内装工事や、資産として所有したい設備は融資で調達する方が向いていることが多いです。どちらが自社にとって有利かは、資金繰りの状況や会計・税務上の扱いによっても変わるため、最終的な判断は税理士に相談しながら決めることをおすすめします。
ステップ3:自己資金の位置づけを確認する
公庫の融資では、自己資金の額や割合について制度上の要件は決められていません。ただし自己資金が多いほど審査で有利になりやすいとされているため、リニューアル費用の一部を自己資金でまかなえるよう、日頃から準備しておくと選択肢が広がります。
ステップ4:事業計画(返済計画)を数字で示す
開業数年目の場合、すでに実績のある売上・客数データを使って、リニューアル後にどう数字が改善する見込みかを説明できると説得力が増します。「なんとなく古くなったから」ではなく、客単価・リピート率・稼働率など具体的な数字で投資の根拠を示すことが重要です。
ステップ5:申請書類を準備し、金融機関に相談する
見積書、直近の決算書、事業計画(返済計画)などを準備し、取引のある金融機関や日本政策金融公庫の窓口に相談します。書類提出後、実行までの目安はおおむね3週間〜1か月です。準備段階を含めると、合計で2か月程度を見込んでおくと安全です。
よくある質問
Q. リースと融資はどちらが得ですか
一概にどちらが得とは言えません。初期費用・資産計上・中途解約のしやすさなど観点が複数あるため、自社の資金繰りと更新サイクルに合わせて、税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
Q. 開業数年目でも自己資金なしで借りられますか
制度上、自己資金の額や割合の要件は決められていません。ただし自己資金の有無・多寡は審査の重要な判断材料になるため、無いよりはある方が有利に働きやすいと考えておきましょう。
まとめ
開業数年目の美容室が内装・設備をリニューアルする際は、創業融資とは異なる利率区分が適用される点をまず理解し、設備資金と運転資金を分けて考えることが出発点になります。そのうえで、更新項目の棚卸し→リースと融資の向き不向きの整理→自己資金の確認→数字で示す事業計画→申請という順番で進めれば、無理のない資金計画を組み立てやすくなります。
資金計画の組み方に迷ったら専門家に相談を
融資・リース・自己資金のどれをどの割合で組み合わせるべきかは、店舗ごとの状況によって最適解が変わります。ひとりで判断に迷ったときは、早めに専門家へ相談し、返済計画まで含めた無理のない資金計画を一緒に組み立てることをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























