
クリニック開業の医療機器はリースと創業融資どちらが得?CT・レントゲン・電子カルテで判断が変わる理由
クリニックの開業準備を進めていると、必ず直面するのが医療機器の資金調達です。CTやレントゲン、内視鏡、電子カルテなど、開業に必要な機器は1台あたり数百万円から数千万円に及ぶことも珍しくありません。「リースで導入するべきか、創業融資を受けて購入するべきか」——この判断で足が止まる先生は少なくありません。
この記事では、医療機器の資金調達を「リース」と「創業融資での購入」の2つの選択肢に分け、それぞれのメリット・デメリットを整理したうえで、機器の種類によって判断軸が変わる理由を解説します。なお融資の制度・金利は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年度)の情報です。実際の数字は日本政策金融公庫など公式情報で必ずご確認ください。
医療機器の資金調達で選択肢は3つ
クリニック開業で必要になる医療機器は、大きく分けると次のようなものがあります。
- CT・レントゲンなどの画像診断機器(高額・耐用年数が長い)
- 内視鏡・超音波診断装置などの検査機器
- 電子カルテ・レセコンなどのITシステム(更新頻度が高い)
これらの資金調達方法は、主に「リース」「創業融資を受けて購入」「自己資金で購入」の3つに分けられます。実際には1つに絞らず、機器ごとに組み合わせるケースも多くあります。まずはリースと創業融資、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
リースで導入する場合のメリット・デメリット
メリット
リースの最大のメリットは、初期支出を抑えられる点です。機器を一括購入する場合と違い、開業時にまとまった資金を用意する必要がなく、開業直後で手元資金が心もとない時期でも、他の運転資金を温存できます。月々の支払いが一定額に平準化されるため、資金繰りの見通しも立てやすくなります。
デメリット
一方で、リースには次のようなデメリットもあります。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
また、リース料にはリース会社の手数料や固定資産税、保険料などが含まれるため、支払総額で見ると融資で購入するより割高になりやすい点にも注意が必要です。修理負担については、保証期間内の対応範囲や代替機の有無など、契約前に条件を確認しておくと安心です。
創業融資で購入する場合のメリット・デメリット
メリット
創業融資を受けて機器を購入する最大のメリットは、機器が自院の資産になることです。所有権があるため、リースのような契約期間の制約を受けず、自由に運用・更新できます。長期間使う機器であれば、支払総額を抑えられるケースもあります。
さらに、日本政策金融公庫の創業融資には元金返済の据置期間が5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いで済みます。開業直後で収益がまだ安定しない時期のキャッシュフロー負担を軽くできる点は、リースの「月々の支払いを平準化する」メリットとは違う角度から資金繰りを支える方法です。
デメリット
創業融資での購入は、審査を経て借入をする必要があり、リースのように機器を選んですぐ使い始めるという手軽さはありません。また、購入した機器は自院の固定資産となるため、保守・修理の費用も自己負担で管理していく必要があります。
日本政策金融公庫の創業融資の基礎知識
クリニック開業の創業融資で中心になりやすいのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、原則として無担保・無保証人で利用できます。基準利率は2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、これは案内文上の一般的な説明で、実際の適用可否は利用する制度・審査・条件によって異なるため、必ず申請先でご確認ください。
設備資金(機器の購入費用など)の返済期間は20年以内、据置期間は5年以内が目安です(新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例で、利用する制度により異なります)。自己資金については、制度上、額や割合の要件は決まっていませんが、審査の重要な判断材料になるため、多いほど有利になりやすい傾向があります。
リースと購入:判断の軸
リースと創業融資のどちらが向くかは、機器の種類や自院の状況によって変わります。次の軸で整理すると判断しやすくなります。
資金繰り・手元資金の観点
開業直後で手元資金に余裕がない場合は、初期支出を抑えられるリースが選ばれやすい傾向があります。一方、据置期間を活用できる創業融資も、開業初期のキャッシュフロー負担を軽くする選択肢になります。
所有権・更新頻度の観点
電子カルテやレセコンのようにシステムの更新が頻繁な機器は、数年で買い替える前提で考えるとリースと相性がよい場合があります。反対に、CTやレントゲンのように耐用年数が長く、長期間使い続ける機器は、購入して自院の資産にするほうが総支払額を抑えられるケースがあります。
保守・修理負担の観点
リースは契約によって故障時の修理負担が借主側になることが多いため、保証範囲や代替機の有無を事前に確認しておく必要があります。購入の場合は保守費用を自院で管理する前提になります。
中途解約・柔軟性の観点
開業してから診療方針や必要な機能が想定と変わることもあります。リースは契約期間中の中途解約が難しいため、将来の変更可能性がある機器は慎重に検討したほうがよいでしょう。
税務・資産計上の観点
リースと購入では、会計上の資産計上の考え方が異なります。どちらが有利かは資金繰りの状況によっても変わるため、賃貸借費用の負担も含めて、税理士や金融機関に相談しながら判断することをおすすめします。
実務での組み合わせ方
実際のクリニック開業では、すべての機器を一方式にそろえる必要はありません。耐用年数が長く高額なCT・レントゲンは創業融資で購入し、更新頻度の高い電子カルテやレセコンはリースにする、といった組み合わせで資金繰りを滑らかにする考え方もあります。自己資金・創業融資・リースをどう配分するかは、開業後の収益見込みや診療科目によっても変わるため、早い段階で資金計画を整理しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Q. リースと創業融資、どちらか一方を選ばなければいけませんか?
いいえ、機器ごとに使い分ける、あるいは組み合わせることも可能です。耐用年数や更新頻度、資金繰りの状況に応じて機器ごとに判断するとよいでしょう。
Q. 自己資金はどのくらい用意しておくべきですか?
制度上、自己資金の額や割合に決まった要件はありませんが、審査の重要な判断材料になるため、計画的に準備できているほど評価されやすい傾向があります。
Q. 創業融資の審査ではどんな点が見られますか?
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。医療機器の選定理由や、開業後の患者数・収益の見込みを具体的に示せるかがポイントになります。
まとめ
クリニック開業の医療機器は、リースと創業融資のどちらが正解というものではなく、機器の種類・耐用年数・更新頻度、そして自院の資金繰り状況によって適した方法が変わります。初期支出を抑えたいならリース、長期間使う高額機器で総支払額を抑えたいなら創業融資での購入、という基本軸を押さえたうえで、据置期間の活用や機器ごとの組み合わせも検討してみてください。
資金計画や事業計画書の作り込みは、開業準備の中でもつまずきやすいポイントです。判断に迷う場合は、創業融資やクリニック開業の資金調達に詳しい専門家へ早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























