
ハウスクリーニング開業の創業融資、申込額はどう決めるか
ハウスクリーロンング会社を立ち上げるにあたって「開業にいくら必要か」を調べている方は多いはずです。ただ、創業融資で実際に動くお金を考えるときは、必要な資金の総額とは別に、もう一つ押さえておきたい視点があります。それが、実際に申し込む金額をどう決めるかという点です。開業に必要な資金の目安は各種の情報でつかめても、その金額をそのまま申込額として提出してよいわけではありません。本記事では、清掃の実務経験を活かして会社として創業する前提で、設備資金と運転資金の区分、申込額の積算根拠の作り方、法人として創業する場合に変わる点を整理します。数字は執筆時点の情報であり、制度・金利は変わることがあるため、申込前に必ず最新情報をご確認ください。
「開業に必要な資金」と「借りられる資金」は同じではありません
開業にかかる費用の総額を洗い出すことと、融資でいくら申し込むかを決めることは、似ているようで別の作業です。融資の申込額は、事業として何にいくら使うのかを説明できる範囲で組み立てる必要があり、必要な資金の総額をそのまま申込額にできるとは限りません。ここを分けて考えないまま準備を進めると、見積もりの集め方や書類の整理でつまずきやすくなります。
創業融資は「設備資金」と「運転資金」に分けて申し込みます
日本政策金融公庫の創業融資では、申込みの時点で資金使途を「設備資金」と「運転資金」のいずれかに分けて示すのが前提になっています。設備資金は車両や清掃機材など形のある投資に、運転資金は仕入れや人件費など事業を回すための支出に対応します。この区分は書類上の分類にとどまらず、返済期間や据置期間にも影響します。
資金使途によって返済期間・据置期間が変わります
新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例では、設備資金は返済期間20年以内、運転資金は原則10年以内とされ、いずれも据置期間は5年以内です(利用する制度により異なります)。設備資金のほうが返済期間を長く取れる分、月々の返済負担を抑えやすい一方、運転資金は事業を回すサイクルに合わせて期間が組まれます。どちらの区分に寄せて申し込むかは、その後の返済計画にそのまま影響するため、開業資金の内訳を作る段階からこの区分を意識しておくと、後の書類準備がスムーズになります。
ハウスクリーニング業は設備が軽く、運転資金に寄りやすい業種です
飲食店や美容室のように内装・厨房設備・専門機器に初期投資がかさむ業種と比べると、ハウスクリーニング業は設備投資そのものが軽い部類に入ります。車両や清掃道具一式は必要ですが、店舗を構える業種ほどの規模にはならないケースが多く、結果として開業資金全体に占める運転資金の比重が相対的に大きくなりやすいのがこの業種の特徴です。この配分の違いを理解しておくと、設備資金と運転資金のどちらに重心を置いて積算するかを判断しやすくなります。
💬 執筆者の小峰から一言
信用金庫で融資を出す側にいたころは、資金使途を設備資金と運転資金のどちらかに先に仕分けてから返済計画を組む相談者ほど話がスムーズでした。新規開業・スタートアップ支援資金の例では、設備資金は返済20年以内、運転資金は原則10年以内、据置はいずれも5年以内です。区分を後回しにすると計画全体を組み直す手間が増えます。
申込額はどう決まるか―見積もり・積算根拠の集め方
申込額の説得力を左右するのは、総額の大きさではなく、一つひとつの支出に根拠があるかどうかです。車両や清掃機材であれば見積書、運転資金であれば仕入れ先や取引条件をもとにした算定根拠を用意し、資金使途ごとに整理しておきます。設備資金と運転資金を最初から分けて積み上げておけば、事業計画書に落とし込む際の手間も減らせます。
運転資金として認められるもの
運転資金とは、事業を回していくために必要な資金のことです。人件費は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提のため、個別の支出が対象として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。
「会社(法人)」として立ち上げる場合に変わること
法人成りと、新しい会社としての創業は違います
個人事業主が今の事業をそのまま法人化する「法人成り」の場合、原則として創業融資の対象外となり、既に事業実績があるとみなされて通常の融資の扱いになります。一方で、個人事業主が営んでいる事業とは別の、新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため創業融資を使うことができます。ハウスクリーニングの実務経験を活かして初めて会社を立ち上げる場合はこちらに該当しますが、既に個人事業として同じ清掃業を営んでいる方が法人成りする場合は扱いが異なるため、どちらに当てはまるかを事前に整理しておく必要があります。
創業融資でも決算書を見られることがあります
創業融資は事業として創業した実績がなくても申し込めますが、決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。そのため、事業計画書や自己資金などの準備に加えて、すでに決算が済んでいる会社がある場合はその内容も踏まえて説明できるように整理しておくと安心です。判断は個別の状況によって変わるため、詳細は申請先や専門家にご確認ください。
なお、無担保・無保証人で借入ができるという原則は、個人事業として申し込む場合と法人として申し込む場合で変わりません。会社として立ち上げる場合も、代表者個人が連帯保証人になることを前提とせずに検討できます。
金利・据置期間の基礎知識(2026年6月1日時点)
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。金利・限度額・返済期間などの数字は今後変わる可能性があるため、申込みの際は日本政策金融公庫の最新情報とあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 設備資金と運転資金、どちらを多めに見積もるべきですか
A. どちらを多めにするかを先に決めるのではなく、車両や機材など実際にかかる設備の見積もりと、事業を回すために必要な運転資金の算定根拠を、それぞれ別々に積み上げて出すのが基本です。ハウスクリーニング業は設備が軽い分、結果として運転資金の比重が大きくなる傾向はありますが、根拠のない金額を運転資金に寄せて水増しすることはおすすめできません。
Q. 見積書はいつまでに用意すればよいですか
A. 申込みや面談のタイミングで説明を求められるため、事業計画書を作成する段階から並行して集めておくと、後から慌てずに済みます。車両・清掃機材など設備資金にあたる項目から見積もりを取り、運転資金の算定根拠とあわせて整理しておくとよいでしょう。
Q. 個人事業ではなく、最初から会社として創業しても融資は使えますか
A. 使えます。新しく法人を設立して事業を始める場合は、その法人にとっての創業にあたるため、創業融資の対象になります。すでに個人事業として同じ事業を営んでいる方がそのまま法人化する「法人成り」とは扱いが異なる点に注意してください。
Q. 設立直後で決算書が無くても申し込めますか
A. 申し込むこと自体は可能です。ただし、決算が一期でも締まっていればその内容が確認されますし、代表者が他に会社を経営していればその決算書も見られます。決算書が無いからといって審査上のマイナスが確定するわけではありませんが、事業計画書の作り込みで実績の乏しさを補う姿勢は引き続き必要です。
ハウスクリーニング会社としての創業融資は、必要な資金の総額を洗い出すだけでは終わりません。設備資金と運転資金を分けて積算根拠を整理し、会社として創業する場合に変わる点を踏まえて準備を進めることが、申込額を固めるための近道です。制度や数字は変わることがあるため、申込みの前には必ず最新の情報をご確認ください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























