
ハンドメイド販売の法人化と創業融資|個人事業のまま借りるか、法人にしてから借りるか
ハンドメイドマーケットプレイスでの販売実績が積み上がり、「そろそろ法人化して本格的に展開したい」と考えるハンドメイド作家が増えています。法人化を検討する段階でぶつかるのが、材料費・撮影機材・EC出店費用などの資金調達をどう組み立てるかという問題です。この記事では、これから起業・法人化を目指すハンドメイド作家向けに、創業融資の活用法と、個人事業のまま借りるか法人化してから借りるかの考え方を整理します。制度・金利は変わりやすいため、本記事は執筆時点の情報をもとにしています。
ハンドメイド販売の起業・法人化にかかる主な資金
- 材料費・仕入れ費(素材、パーツ、包装資材などのまとめ買い)
- 制作用の機材・工具(ミシン、3Dプリンター、レーザーカッターなど、扱う商品による)
- 撮影・ブランディング費用(商品写真、ロゴ、ネットショップのデザイン)
- ECサイト・モール出店費用(自社ECの構築費、モール出店の初期費用・月額費用)
- 法人設立にかかる諸費用(定款認証・登録免許税など)
- 当面の運転資金(受注生産の場合は入金までのタイムラグを埋める資金)
ハンドメイド販売は初期の設備投資額が業種によって大きく異なり、アクセサリーのように材料費中心のケースもあれば、レザークラフトや木工のように工具・機材への投資がかさむケースもあります。副業から本業へ切り替えるタイミングでは、これまで自己資金でまかなってきた材料費・機材費に加え、法人化と事業拡大に伴う新たな支出が重なりやすいため、創業融資の活用を検討する場面が出てきます。
創業融資とは
創業融資とは、主に日本政策金融公庫が提供する、起業時の資金調達を目的とした融資制度のことです。政府系金融機関が提供するため、民間金融機関では対応できないような場合でも積極的に取り組むのが大きな特徴です。
無担保・無保証人での借り入れが原則として可能であり、事業の実績がなくても事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。融資限度額は最大7,200万円程度(制度による)です。ハンドメイド販売の起業であれば、この上限に達することはまずないため、限度額そのものを心配する必要はほとんどありません。
個人事業のまま借りるか、法人化してから借りるか
創業融資は、個人事業主・法人いずれの立場でも申請できます。「法人化してからでないと融資を受けられない」という決まりはなく、個人事業主のまま創業融資を申請し、その後のタイミングで法人化する進め方も可能です。
法人化の手続きそのもの(定款作成・登記申請など)は司法書士の専門領域にまたがるため、この記事では踏み込みません。法人化のタイミングを融資の申請スケジュールとどう合わせるかは、資金調達に詳しい専門家に相談しながら進めると、手続きの重複や遅れを避けやすくなります。
創業融資の特徴(制度・金利・スケジュール)
主な制度:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
個人事業主・中小企業の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主制度となりました。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。
金利・据置期間
2026年6月1日時点の基準利率は、無担保・創業期(税務申告2期未了)で年3.45〜5.15%です。創業期の方が無担保で利用する場合は、原則として0.65%(雇用拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、開業初期のキャッシュフローに余裕を持たせることができます。
※金利・限度額・据置期間などの数字は変更される場合があります。申請時は日本政策金融公庫の公式情報で最新の内容を必ずご確認ください。
ハンドメイド販売ならではの資金使途の考え方
創業融資では、資金使途を「設備資金」と「運転資金」に分けて整理します。ミシンやレーザーカッターなどの制作機材は設備資金、材料費の仕入れやEC出店費用などは運転資金として計画に組み込みます。人件費や外注費(撮影・梱包の外注など)は運転資金の対象になりますが、創業者自身の生活費は対象になりません。生活費を運転資金に紛れ込ませると、事業計画書の信頼性を損ねてしまうため、事業に直接必要な支出だけで組み立てることが基本です。
自己資金とみなし自己資金
創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になるため、多いほど審査で有利になりやすい傾向があります。自己資金は、面談時点で口座に確認できる形にしておくのが原則です。
ハンドメイド販売の場合、開業前に自費で購入した材料・工具・撮影機材の費用や、副業時代に自己資金で行ってきたテストマーケティング(試験販売)の費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておきましょう。
事業計画書で示したいこと
実績が浅い創業時は、事業計画書の説得力がそのまま審査結果に直結します。ハンドメイド販売の場合、これまでのモール販売実績(販売点数・リピート率・客単価など)を根拠として示せると、計画の信頼性が高まります。受注生産が中心の場合は、受注から納品・入金までのタイムラグを踏まえた運転資金の見積もりも欠かせません。希望的な売上目標だけを並べるのではなく、実績データに基づいた無理のない計画を組み立てることがポイントです。
よくある質問
Q. 個人事業主のままでも創業融資は受けられますか
はい、創業融資は個人事業主のままでも申請できます。法人化を先に済ませる必要はなく、事業の状況に応じて法人化のタイミングを検討して構いません。
Q. 副業として続けてきた実績は審査で評価されますか
副業時代の販売実績(販売点数、売上、リピート率など)は、事業計画の説得力を高める材料になり得ます。実績データを整理して事業計画書に反映するとよいでしょう。
Q. 自己資金があまり多くなくても申請できますか
自己資金の額や割合に制度上の要件はありませんが、自己資金は審査の重要な判断材料です。「必ず借りられる」とは言えないため、みなし自己資金も含めて計画的に準備し、不安があれば専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
ハンドメイド販売の起業・法人化では、材料費・機材費・EC出店費用など業種特有の資金項目を整理したうえで、日本政策金融公庫の創業融資を活用する方法があります。個人事業のまま借りるか法人化してから借りるかは事業の状況次第で、どちらが正解というものではありません。副業時代の販売実績を根拠にした事業計画書と、みなし自己資金の準備が審査の鍵になります。資金計画や法人化のタイミングに迷ったら、融資に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























