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コラム

食品製造の創業融資で通る事業計画書とは?販路と原価から組み立てる5つのステップ

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食品製造の創業融資で通る事業計画書|販路と原価から組み立てる5つのステップ

食品製造・加工業で独立するとき、創業融資の可否を大きく左右するのが事業計画書です。ところが「創業計画書の書き方」を調べて出てくる解説の多くは、どの業種にも当てはまる一般的な様式の埋め方にとどまっています。

食品製造には、飲食店や小売とは違う固有の論点があります。つくる量ではなく売り先の確度で読まれること、原材料費だけでは原価が説明しきれないこと、機械が高額なため資金の区分が計画の骨格になることの3点です。この記事では、工場や加工場を借りて自社製造を立ち上げる方、受託製造から始める方を想定して、事業計画書を5つのステップで組み立てる順番を整理します。制度の数字は2026年8月時点の情報です。

ステップ1:先に「売り先」を決める

食品製造の計画書で最初に組むべきなのは、製造能力ではなく販路です。同じ設備を入れても、誰に売るかで売上の裏付けの作り方がまったく変わります。販路は大きく3つに分かれます。

  • 受託製造(OEM):取引先から製造を請け負う型。売上の根拠は取引先の内示・引き合い・想定ロットと単価になります。1社への依存度が高くなりやすい点は、計画の中で触れておく論点です
  • 自社ブランドの卸:スーパー・小売・飲食店へ卸す型。商談の進捗、展示会や問屋経由の見込み、採用が決まっている店舗数などが根拠になります
  • 直販・EC:自社サイトや催事で売る型。1件あたりの単価は高く取れますが、立ち上がりに時間がかかるため、月次の伸び方をどう置くかが論点になります

多くの計画書は「月間◯◯食を製造できます」という製造能力から売上を逆算していますが、これは審査の場では根拠として弱くなります。つくれることと売れることは別だからです。まず売り先の確度を並べ、そこから必要な製造量を決めて、その量に見合う設備を選ぶという順番にすると、あとのステップが崩れにくくなります。

ステップ2:原価を「歩留まり・仕込みロット・ロス」に分解する

食品製造の原価は、原材料費の単純な積み上げでは実態に合いません。次の3つを分けて置くと、数字の根拠が具体的になります。

  • 歩留まり:仕入れた原材料のうち、実際に製品になる割合です。カット・下処理で目減りする分を見込まないと、原価が過小に出ます
  • 仕込みロット:製造は1個単位ではなく、釜やラインの容量に合わせた単位で動きます。ロットの端数がそのままロスになる構造を、月次の数字に反映させます
  • 保存期間とロス:賞味期限・消費期限があるため、売れ残りが在庫として残らず廃棄になります。冷凍か冷蔵か常温かで、この前提は大きく変わります

この3つを分けておくと、粗利率を「業界平均」で置かずに自社の製造条件から説明できます。設備投資の効果を説明するときにも同じ数字が使えます。たとえば急速冷凍の設備を入れる理由を、保存期間が延びることでロス率がどう変わるかという形で書けば、機械の性能ではなく事業の数字として伝わります。

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ステップ3:見積を設備資金と運転資金に分ける

食品機械は特注やオプションが多く、見積書が「製造ライン一式」のような形で出てくることがあります。この状態のままでは、資金使途として計画書に落とせません。見積を費目ごとに分解し、設備資金と運転資金に割る作業が要ります。

この区分が重要なのは、返済期間が違うためです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ資金を利用する場合の例では、設備資金の返済期間は20年以内、運転資金は原則10年以内とされています。今年の据置期間はいずれも5年以内で据置中は利息のみの支払いになります。

融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円という内枠があります。設備と運転は自由に振り替えられる関係ではありませんので、内訳の付け方がそのまま返済設計になります。長く使う機械や設備工事は長く返せる設備資金で組み、原材料の仕入れ・人件費・光熱費といった回していくための資金は運転資金として、必要な月数分を積み上げます。

なお資金使途は、事業に必要な支出であることが前提です。個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。

ステップ4:自己資金と、経験の説明を整える

自己資金については、誤解が残っている情報が多い部分です。制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧「新創業融資制度」にあった自己資金の割合要件は、現行制度にはありません。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利になりやすいという関係にあります。「総額の3分の1が必須」といった説明を見かけても、要件として受け取らないほうが実態に合います。

自己資金は、面談時点で口座に確認できる形にしておきます。また、創業前に自費で購入した設備や備品、試作にかけた費用などは、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。食品製造は開業前の試作が積み上がりやすい業種ですので、領収書を保管しておくと説明の材料になります。

経験面については、審査では事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。判断材料はこの2つに限られるわけではなく、経験・資金使途・面談の内容なども含めて総合的に見られます。業界未経験で始める場合、同業のメンターから助言を受ける、経理や製造を業務委託で任せるといった対策は、経営への関与としては弱く、カバー策としては十分とは言えません。事業経験者を役員に迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えるほうが説得力が出ます。

もう一点、創業融資でも決算書は見られます。新しく設立した会社でも、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合はその会社の決算書も対象になります。「創業だから決算書は関係ない」という前提で準備を進めないほうが安全です。

小峰精公

💬 執筆者の小峰から一言

信用金庫で融資を出す側にいたころ、食品製造の計画で見え方が分かれたのは、最初から自社で設備を持つ型か、しばらく他社に製造を委託する型かという点でした。委託から始めると設備資金は小さくなりますが、そのぶん資金使途の説明は運転資金が中心になります。どちらが有利という話ではなく、選んだ型に合わせて内訳の組み方を変える必要がある、という順序の問題です。

ステップ5:スケジュールを逆算する

最後に時間軸を組みます。融資は、書類提出後おおむね3週間から1か月で実行されるのが目安です。創業計画書・自己資金の確認資料・見積書などの準備期間を含めると、申請準備に1か月、審査と実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと安全です。

食品製造で注意したいのは、この2か月の手前に「仕様を固めて見積を取る」期間が乗ることです。設備の仕様が決まらないと見積が出ず、見積が出ないと設備資金の内訳が書けません。物件の広さやレイアウトによって導入できる機械が変わりますので、物件・仕様・見積・申請の順に前から積み上げていく形になります。

また食品製造業は、営業許可をはじめとした許認可が必要な業種です。施設基準を満たす工事が必要になることもあり、許認可の段取りと融資の申請は並行して進む関係にあります。具体的な許可の要否や施設基準は、扱う品目と自治体によって変わりますので、保健所や行政書士にご確認ください。

金利・条件の前提

計画書に返済計画を書く際の前提として、現在の条件を挙げておきます。2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。担保を提供する場合は年2.50〜4.80%と、水準が変わります。

創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。なおこの引下げは、担保の有無によって対象が変わるものではありません。

制度や金利は変わりやすいため、申請の際は日本政策金融公庫の公式情報で最新の内容をご確認ください。

まとめ

食品製造の創業融資で事業計画書を組み立てる順番を、5つのステップで整理しました。

  • 製造能力からではなく、売り先の確度から売上を組む(受託製造・自社ブランド卸・直販ECで根拠の作り方が変わります)
  • 原価は歩留まり・仕込みロット・保存期間とロスに分解し、業界平均ではなく自社の製造条件で説明する
  • 見積を費目ごとに割り、設備資金(返済20年以内)と運転資金(原則10年以内)に区分する。限度額7,200万円のうち運転資金は4,800万円という内枠があります
  • 自己資金に制度上の割合要件はないが重要な判断材料になる。未経験は事業経験者を役員に迎える形で補う。決算書があれば見られる
  • 準備1か月+審査実行1か月の手前に、仕様確定と見積取得の期間が乗る

事業計画書は、様式を埋める作業ではなく、販路と原価と資金使途をひとつの流れでつなぐ作業です。自社の数字をどう置けばよいか判断がつきにくい場合は、見積を取る前の段階からご相談ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

多胡藤夫

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】

税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1,000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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