
居抜き物件が見つかったら、創業融資の相談と契約はどの順番で進めるか
料理人として独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。
💬 料理人の方からのご相談
最近、希望しているエリアで良さそうな居抜き物件を見つけました。不動産会社からは『すぐ決めないと他の人に取られる』と言われていますが、融資が通るかどうかも、内装や厨房にあといくらかかるかも分かりません。物件を押さえてから融資を申し込むのか、契約前に相談するのか、どの順番なら大きな失敗を避けられますか?

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。
小峰からの回答
結論から言うと、物件の契約より前に、融資の相談を済ませておく順番をおすすめします。「先に物件を押さえて、それから融資を申し込む」形にすると、契約後に資金が足りないと分かったときに引き返せなくなるためです。ただし、審査の結果は金融機関が判断するもので、相談をしたからといって融資が受けられると約束できるものではありません。この点を前提に、順番と確認点をお伝えします。
「契約してから」が危うい理由
不動産会社の「すぐ決めないと」というスピードと、融資が実行されるまでのスピードは別のものです。申込から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安で、書類の準備を含めると合計で約2か月を見ておくと安全です(2026年9月時点で当社が整理している目安です)。契約を先に済ませると、この期間の資金繰りや契約条件を、後から自分で背負うことになります。契約後に資金が足りないと気づいた時点では、契約の内容や工事の段取りがすでに動いていて、計画を立て直せる余地が小さくなりがちです。
もう一点、金融機関側から見ると、審査では資金使途と調達額の整合が判断材料の一つになります。内装や厨房にいくらかかるのか分からないまま「足りない分を貸してほしい」と相談しても、金額の根拠を示せません。契約前に総額の見取り図を作ることが、融資の面でも先に必要になります。
契約前に固めておきたい3つのこと
順番の考え方は、次の3つに整理できます。
- 資金の総額を把握する
- 自己資金を確認する
- 物件を押さえる前に申込先へ相談する
1. 資金の総額を把握する
物件の取得にかかる費用に加えて、内装や厨房設備は設備資金にあたる支出です。居抜き物件は既存の設備を活用できる一方で、設備の状態によっては入れ替えや追加の工事が必要になることもあります。契約前に現地で設備の状態を確認し、内装や厨房の業者から見積書を取っておくと、追加工事費のぶれを小さくできます。見積書は、融資の申込でも創業計画書、自己資金を確認できる資料、本人確認書類などとあわせて求められる書類の中心になります。
2. 自己資金を確認する
公庫の創業融資には、自己資金の額や割合を定めた制度上の要件はありません。それでも自己資金の額は審査の重要な判断材料で、多いほど有利になりやすいとされています。原則として、面談の時点で口座に確認できる形にしておく必要があります。総額が見えれば、手元の資金でまかなう部分と、借入で必要になる部分が分かれてきます。
3. 物件を押さえる前に申込先へ相談する
順番の要は、ここです。審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。料理人の方であれば、これまでに勤めた店、勤務年数、役職を整理しておくと、経験欄の説明がしやすくなります。あわせて、総額の見取り図と自己資金を持って申込先に相談すれば、契約前の段階で、自分の計画のどこを詰めるべきかが見えてきます。
相談の際には、物件の概要が分かる資料、見積書、自己資金の額が分かる資料、これまでの経歴をまとめたものを手元に用意しておくと、話が具体的に進みます。
追加工事費に備えるための見積書の見方
居抜き物件で資金が足りなくなる原因は、追加工事費が読めないことにあります。見積書を受け取ったら、金額だけでなく、どこまでの工事や設備が含まれているのかを業者に確認してください。含まれていない項目を洗い出しておくと、後から想定外の費用が出にくくなります。あわせて、現地で見えにくい部分に不具合があった場合に、見積が変わる可能性があるかどうかも、契約前に業者へ聞いておくと安心です。
融資の面でも、申込後に必要な金額が大きく変わると、資金使途と調達額の整合を改めて説明することになります。見積の前提が固まってから相談したほうが、計画の数字に一貫性を持たせやすくなります。
融資特約と契約書で確認したいこと
契約書の中に、融資が受けられなかった場合の扱いを定める条項がある場合があります。一般に融資特約と呼ばれるものです。ただし、条項があるかどうか、どう書かれているか、どこまで効力があるかは契約ごとに異なります。私から具体的な内容を断定することはできません。
確認したい点としては、融資が受けられなかったときに契約を白紙に戻せるのか、すでに支払った金銭はどう扱われるのか、いつまでに融資の結果を出す前提になっているのか、といったところです。不動産契約の法的な判断は、宅地建物取引業者や弁護士などの専門家の領域です。契約書の文面を見てもらったうえで、口頭ではなく書面で確認しておいてください。
「他の人に取られる」焦りとの付き合い方
良い物件を逃したくない気持ちは自然なものです。ただ、目の前の1件が最後の1件とは限りません。私たちのグループ代表・中野裕哲の著書『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』によると、飲食店では150件の物件を検討すべきといわれています。1社あたり5件を紹介してもらうとして、30社を回れば150件の情報が揃い、150件あればだいたい2〜3件は良さそうな物件があるという経験則です。もちろん、必ず見つかるという保証ではありません。
融資の相談をしてから決めたいと伝えたときに、不動産会社がどう対応するかも、その会社との付き合い方を考える材料になります。
まとめ
物件の契約より先に、内装や厨房を含めた総額を見積書で確かめ、自己資金を整理して、申込先に相談する。この順番で進めると、契約後に資金が足りなくなる不安を減らしやすくなります。まずは気になる物件の設備の状態を見て、業者に見積もりを依頼するところから始めてみてください。
物件の契約前に、内装や厨房を含めた資金の全体像と、申込から実行までのスケジュールをどう組み立てるかで迷っている方は、私たちの相談窓口をご利用ください。事業計画や資金計画づくりを、ご自身で進める前提で専門家と一緒に整理でき、数字の組み立て方からご相談いただけます。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























