
飲食店開業で創業融資と補助金は両方使える?併用の条件と注意点
飲食店を開業するときは、物件取得費・内装工事費・厨房設備・当面の運転資金など、まとまった資金が必要になります。そこで「創業融資と補助金を両方使えれば、自己負担を抑えられるのでは」と考える方は少なくありません。結論から言えば、創業融資と補助金は併用できます。ただし、それぞれ性質がまったく異なるため、仕組みを理解せずに「両方あてにする」資金計画を立てると、開業直前で資金が回らなくなるリスクがあります。
この記事では、これから飲食店を開業する個人事業主・小規模事業者に向けて、創業融資と補助金の役割の違い、併用するときの条件と注意点、そして実際の進め方をわかりやすく整理します。
結論:創業融資と補助金は併用できる
創業融資(借入)と補助金(返済不要の交付)は、制度上、同時に利用することが可能です。実際、開業資金を融資で確保しつつ、設備投資の一部に補助金を活用する、という組み合わせはよく行われています。両者は「お金の出どころ」も「返済の有無」も違うため、互いに排除し合う関係ではありません。
ただし併用には大切な前提があります。それは、「補助金は基本的に後払い」であり、「同じ経費に二重で公的資金を充てることはできない」という2点です。これを踏まえないと、併用したつもりが資金繰りを苦しくしてしまうことがあります。
創業融資と補助金の役割の違い
創業融資:開業資金そのものを確保する手段
創業融資は、開業に必要な資金を金融機関から借り入れる方法です。代表的なものに、日本政策金融公庫の創業者向け融資や、自治体・金融機関・信用保証協会が連携する制度融資があります。返済が必要ですが、開業前のまだ実績がない段階でもまとまった資金を確保できるのが大きな利点です。物件取得・内装・設備・運転資金まで幅広く充てられます。
なお、融資の金利・限度額・返済期間・要件は制度や時期によって変わります。「必ず借りられる」というものではなく審査があるため、最新の条件は日本政策金融公庫など各機関の公式情報で確認してください。
補助金:特定の経費の一部を後から受給する手段
補助金は、国や自治体が政策目的に沿った取り組みに対して、経費の一部を交付する制度です。返済は不要ですが、次の3つの特徴があります。(1)対象になる経費があらかじめ決まっている、(2)審査があり、申請すれば必ず受け取れるわけではない、(3)原則として後払いで、先に自分で支払い、あとから交付される、という点です。どの補助金が使えるか、何が対象になるかは制度や時期によって変わるため、開業のタイミングで利用できるものがあるかは、その時点の公募内容を確認するのが確実です。
重要なのは、補助金は「開業資金を最初に用意してくれるもの」ではないという点です。あくまで支出した経費の一部を後から補填するものなので、開業時点の資金は別途用意しておく必要があります。
併用するときの注意点
注意点1:補助金は後払い。開業時の資金は融資・自己資金で賄う
もっとも重要なのがこの点です。補助金は経費を支払った後に交付されるため、入金までの間は自分で立て替える必要があります。「補助金が出るから」と当てにして資金を薄く見積もると、開業直後の運転資金が不足しかねません。開業時点で必要な資金は、創業融資と自己資金で確保しておくのが基本です。補助金は「後から戻ってくるボーナス」程度に位置づけると安全です。
注意点2:補助金の対象経費は分けて管理する
補助金を使うときは、どの経費に補助金を充てるのかをはっきり分けて管理することが大切です。補助金には対象になる経費が決まっており、申請した経費については見積書・契約書・請求書・領収書などの書類をそろえておく必要があります。これらは採択後の実績報告で求められます。経費の管理があいまいだと、採択されても交付の段階で減額されたり、対象外と判断されたりすることがあります。
注意点3:自己資金の準備は融資審査にも影響する
創業融資の審査では、自己資金をどれだけ準備できているかが見られる傾向があります。補助金は自己資金の代わりにはなりません(後払いのため)。自己資金・創業融資・補助金の三つを、それぞれの役割に応じて資金計画に正しく位置づけることが、開業を安定させるポイントです。
飲食店開業での具体的な進め方
- 必要資金を洗い出す:物件取得・内装・厨房設備・運転資金(数か月分)を見積もる
- 自己資金と融資で開業資金を組み立てる:まず返済可能な範囲で創業融資を検討し、自己資金と合わせて開業に必要な額を確保する
- 補助金で補える経費がないか確認する:対象になりそうな経費・公募時期を調べ、申請スケジュールを組む
- 補助金の立替分を資金計画に織り込む:交付までの期間、立て替えられるかを確認する
- 事業計画書を整える:融資・補助金のどちらでも、説得力のある事業計画書が共通して重要になる
創業融資の事業計画書(売上予測・返済計画)と、補助金の事業計画書(取り組みの意義・効果)は、求められる視点が異なります。両方を並行して進める場合は、早い段階で全体像を設計しておくとスムーズです。
よくある質問(FAQ)
Q. 補助金が採択されなかった場合、開業できなくなりますか?
A. 開業資金そのものを創業融資と自己資金で確保しておけば、補助金が不採択でも開業計画自体は進められます。だからこそ「補助金ありき」ではなく、融資・自己資金を土台に据えることが大切です。
Q. 創業融資を受けていると補助金の審査で不利になりますか?
A. 融資を受けていること自体が補助金審査で不利になるわけではありません。両者は別の制度であり、評価される観点も異なります。むしろ、資金計画がしっかりしていることはプラスに働く場合があります。
Q. 補助金で受け取ったお金を融資の返済に充ててもいいですか?
A. 補助金は対象経費に充てることが前提の制度です。交付された資金の使途には制度ごとのルールがあるため、返済充当の可否を含め、必ず各補助金の要領を確認してください。判断に迷う場合は専門家に相談すると安心です。
まとめ
飲食店開業において、創業融資と補助金は併用できます。ただし両者の性質は大きく異なります。創業融資は開業資金そのものを確保する手段、補助金は特定経費の一部を後から補填する手段です。補助金は後払い・審査ありという前提を踏まえ、開業時に必要な資金は融資と自己資金で確保したうえで、補助金は「補える部分を後から補う」位置づけにするのが安全な組み立て方です。
自己資金・創業融資・補助金をどう配分すれば無理のない資金計画になるかは、開業する飲食店の規模や立地によって変わります。「いくら借りるべきか」「どの補助金が使えそうか」と迷ったら、融資と補助金の両方に詳しい専門家へ早めに相談することで、開業後の資金繰りまで見据えた計画を立てやすくなります。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























