
構造計算ソフトに使える補助金4制度|設計事務所は「従業員5人以下」で選べる制度が変わる【2026年度】
構造計算ソフトの導入に補助金は使える?設計事務所がつまずく対象判定を整理
構造計算ソフトの導入を検討していると、ソフトメーカーのサイトで「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象製品です」という案内を目にすることがあります。ただ、その案内は自社製品を買ってもらうための説明なので、「そもそも自分の事務所がその補助金の対象なのか」「他の制度と比べてどれが筋なのか」までは書かれていません。
ここでつまずくのは、たいてい制度の名前ではなく対象判定のほうです。従業員が何人か、何の業種として数えられるか、その支出がどの経費区分に入るか。この3つで結論が変わります。この記事では、構造設計事務所や小規模な設計事務所、設計部門を持つ工務店を想定して、構造計算ソフトの導入に関わる4つの制度を一問一答の形で整理します。数字はいずれも2026年8月時点の公募要領・社内参照資料に基づくもので、申請時は最新の公募要領で確認してください。
Q1. 構造計算ソフトは補助金の対象になりますか
結論から言うと、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)がもっとも素直な候補です。この制度は、業務効率化やDXのために事務局に登録されたITツール(ソフト・クラウド等)を導入する投資を支援するもので、対象経費にソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)が含まれます。加えて、設定・研修・マニュアル作成・保守サポート等の導入関連費も対象経費に入ります。
補助上限は枠によって分かれていて、通常枠が450万円、インボイス枠が350万円、複数者連携デジタル化・AI導入枠が3,000万円です。構造計算ソフト1本の導入であれば、通常枠の範囲に収まることがほとんどでしょう。
ただし、この制度には他にない前提が1つあります。事務局に登録されたIT導入支援事業者(ベンダー等)の支援を受けて申請する前提で、導入するツールも登録品であることが前提になっている点です。つまり「気に入ったソフトを見つけたので補助金で買おう」という順番ではなく、「そのソフトが事務局に登録されているか」「その販売代理店がIT導入支援事業者として登録されているか」を先に確認する必要があります。ソフトメーカーのサイトに補助金の案内が出ているのは、この登録を済ませているからです。
ハードをセットで買いたい場合
構造計算ソフトは動作が重く、導入と同時にワークステーションを更新したくなる場面が出てきます。この点は注意が必要な線引きで、PC・タブレット等のハード単体購入は対象外です(対象ソフトとセットの類型で一部対象になります)。ハードを主役にした計画は立てられない、と考えておくほうが安全です。
Q2. 小規模事業者持続化補助金でも買えますか
ここが、多くの案内ページで飛ばされている分岐点です。小規模事業者持続化補助金は補助率2/3・補助上限50万円(インボイス特例で最大100万円、賃金引上げ特例で最大200万円、両特例の併用で最大250万円)と使い勝手がよく、真っ先に候補に挙がります。ただ、構造計算ソフトとの相性で見ると、2段階の壁があります。
1つ目は「小規模事業者」に入るかどうかです。この制度の従業員数の上限は業種で分かれていて、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、製造業その他は常時使用する従業員20人以下と定められています。設計事務所はサービス業として数えられるため、判定ラインは5人以下になります。同じ建設まわりでも、工務店のように「その他」で数えられる事業者は20人以下ですから、隣の会社が使えたからといって自分の事務所も使えるとは限りません。なお、会社役員・個人事業主本人・同居の親族従業員などは人数にカウントしません。
2つ目は経費区分です。この制度の対象経費は機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費という構成で、そもそも「販路開拓」が主題の制度です。設計業務を社内で効率化するためのソフト導入は、この主題からずれやすく、通常の営業活動扱いになると対象外になりやすい、という性格があります。使えるかどうかは計画の書き方次第の面がありますが、「安いから持続化で」と決め打ちすると、経費区分の段階で組み直しになる可能性があります。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、制度名から入る方と、投資規模と投資目的から入る方では、その後の手戻りの量がだいぶ違います。ソフト1本の導入なのか、体制ごと作り替える投資なのか。そこを先に決めてから制度を当てにいくと、経費区分でつまずく場面が減ります。
Q3. 中小企業省力化投資補助金(一般型)は使えますか
補助上限1億円と規模が大きいため候補に挙げたくなる制度ですが、構造計算ソフト単体の導入では筋が悪くなります。理由は対象設備の要件です。
この制度で対象になるのは「オーダーメイド性のある設備」(ICT・IoT・AI・ロボット等を活用した専用設備等)で、次のいずれかに該当すれば汎用設備でもオーダーメイド設備とみなされます。省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合。あるいは、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合です。
逆に言えば、単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外です。この制度には単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れるという要件もありますが、金額要件を満たしていてもそれだけでは足りず、複数設備の組み合わせ等でオーダーメイド性を示す事業計画が必要になります。市販の構造計算ソフトを1ライセンス買うだけの計画では、この要件に届きません。
加えて、3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均+4.0%以上伸ばす計画が必要で、賃上げ目標が要件になっており、未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる制度です。設計業務のシステムを丸ごと入れ替えるような投資であれば検討の余地がありますが、ソフト1本の話であれば、リスクに見合わないという判断になりやすいところです。
Q4. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は候補になりますか
2026年度から「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合され、公募要領上の正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。別々の制度として説明している情報がまだ残っているので、名称で混乱しないようにしてください。
このうち構造計算ソフトに関係しうるのは革新的新製品・サービス枠です。ただし、この枠は自社の技術力等を活かして顧客等に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組が対象で、単なる設備・システム導入、既存製品・サービスの生産プロセス改善、同業で既に相当程度普及している開発は対象外と明記されています。構造計算ソフトの導入それ自体は「単なるシステム導入」に見えるため、この枠に乗せるには、そのソフトを使って何の新サービスを開発するのかを示す必要があります。
金額面も確認しておきましょう。補助上限は従業員規模別で、1〜5人750万円、6〜20人1,000万円、21〜50人1,500万円、51人以上2,500万円です(大幅賃上げ特例適用時は各850万円/1,250万円/2,500万円/3,500万円)。よく見かける「上限3,500万円」は最大規模かつ特例適用時の最大値なので、5人以下の事務所が同じ数字を見込むことはできません。また補助下限は100万円で、補助率は中小企業者1/2、小規模企業・小規模事業者は2/3です。ソフト代だけでは下限に届かないケースが出てきます。第1回公募は2026年6月29日から締切2026年9月30日18:00、採択発表は2026年12月頃の予定です。
Q5. 申請計画で「生産性が上がる」をどう説明すればいいですか
ここが実務でいちばん差がつくところです。構造計算ソフトの導入を「作業時間の短縮」だけで説明しようとすると、計画が痩せます。設計者が1人の事務所で計算時間が2割減っても、それが売上や付加価値にどうつながるかを説明しにくいためです。
そこで軸にしたいのが内製化です。これまで外部の構造設計事務所へ外注していた構造計算を自社で行えるようになる、という組み立てであれば、外注費の削減額という形で数字が出ます。さらに、構造計算を伴う案件を自社で受けられるようになることで、これまで断っていた規模・用途の物件を受注対象にできる、という売上側の説明も立ちます。時短の話より、金額に翻訳しやすいのがこの軸です。
内製化を書くなら、体制の前提を先に確認する
ただし、内製化のストーリーには前提があります。構造計算の内容を判断できる有資格者が社内にいるかという点です。建築士法上の資格要件があるため、ソフトを導入しただけで内製化が完結するわけではありません。計画の中で「誰がその業務を担うのか」を書けないと、審査側から見て実現性が薄い計画に見えます。
採用や資格取得の予定を含めて体制を示すか、あるいは当面は外注と併用しながら段階的に内製比率を上げる計画にするか。どちらにしても、ソフトと人をセットで書くことが必要になります。逆に言えば、すでに有資格者が在籍していて外注に出さざるを得ない案件がある事務所は、この計画をもっとも書きやすい立場にあります。
制度別の向き不向きを整理する
- デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金):構造計算ソフト1本の導入ならまずここ。ただし登録ツール+IT導入支援事業者の支援が前提
- 小規模事業者持続化補助金:設計事務所はサービス業区分で従業員5人以下が判定ライン。加えて「販路開拓」が主題の制度なので、社内効率化目的のソフト導入は筋を通しにくい
- 中小企業省力化投資補助金(一般型):単体導入は対象外。複数設備の組み合わせ等でオーダーメイド性を示せる規模の投資向け
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠:新製品・新サービスの開発が伴う場合。補助下限100万円という金額面の確認も必要
なお、どの制度でも共通する注意点として、交付決定前に行った契約・発注・購入は対象外になります。ソフトの見積を取るところまでは進めても、発注は交付決定を待つ、という順番を崩さないようにしてください。制度ごとに細部の扱いが異なるため、実際の段取りは最新の公募要領で確認することをおすすめします。
まとめ
構造計算ソフトの導入に補助金が使えるかどうかは、制度の名前を覚えることではなく、自社が「何人の」「何業種の」事業者として数えられるかと、その支出がどの経費区分に入るかで決まります。構造計算ソフト1本の導入であれば、デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)が現実的な出発点になり、登録ツールとIT導入支援事業者の確認が最初の一手です。
そのうえで、規模の大きい投資や新サービスの立ち上げを伴うのであれば、中小企業省力化投資補助金(一般型)や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠が視野に入ります。いずれの制度でも、申請計画では「時短」ではなく「内製化によって外注費と受注機会がどう変わるか」を軸に書くほうが、数字で示しやすくなります。ソフトと人をセットで描けるかどうかが、計画の説得力を左右します。
本記事の数字・要件は2026年8月時点のものです。制度は公募回ごとに要件が変わるため、申請前には必ず最新の公募要領で確認し、自社の状況に当てはまるかどうかは専門家にも相談しながら進めてください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























