
畜産農家の6次産業化、加工と生産で使う補助金の枠はどう分かれるか
畜産農家が牛乳やお肉を加工して売る方向に進むと、使える補助金の候補が一気に増えます。ただ、候補の中には「加工の場を作るための枠」と「生産側の省力化に使う枠」が混ざっています。どの枠を使うかで、対象になる経費も、準備する書類も変わります。この記事では、精肉・チーズ・ジェラートを例に、加工側と生産側で枠がどう分かれるのか、設備と経費をどう見分けるのかを整理します。
ここで扱う補助金は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の新事業進出枠と、中小企業省力化投資補助金(一般型)です。上限額は従業員の規模によって変わるため、金額よりも、どの経費が対象になり、どの経費が対象外になるかに絞って解説します。公募の内容は回ごとに変わることがあるので、最新の公募要領も必ず確認してください。
①畜産の6次化で、精肉・チーズ・ジェラートをどう選ぶか
6次化で何を作るかは、設備の重さ、人手、売り先の3つで比べると整理しやすくなります。品目ごとに、補助金の枠との相性も少しずつ違います。
精肉加工は、加工の場所をどう確保するかが論点になります
精肉は、解体や加工を行う場所をどう確保するかが最初の論点です。加工のための場所を新たに建てる計画なら、建物の扱いが補助金の検討に大きく関わるため、新事業進出枠の中身を確かめることになります。建物費は枠の中でも条件が限られるので、次の②で詳しく見ます。
チーズは、熟成と保管の設備が中心になります
チーズは、乳を加工する設備に加えて、熟成や保管のための設備が必要になりやすい品目です。どこまでが機械装置として扱えるのか、どこからが建物や付帯工事になるのかを、見積の段階で分けておくと計画が組み立てやすくなります。
ジェラートは、製造と販売の設備がセットになりやすい品目です
ジェラートは、製造の設備と、冷凍した製品を売るための販売設備がセットになりやすい品目です。販売の場所を新たに作るなら建物費の話になります。既存の建物を使う場合は、建物を単に購入したり賃貸したりする費用は対象外になる点に注意してください。どの機械が良いかは、この記事では比べません。
加工側の判断は「新製品か、新しい市場か」で分かれます
新事業進出枠は、今ある品目をそのまま増産するだけの計画では、非該当になり得る枠です。既存事業に活用する経費や、既存事業と補助事業で共用される経費は対象外と明記されています。「新しい品目を、新しい売り先に出す」計画になっているかが判断の分かれ目になります。最終的な判断は、公募要領の要件と事務局の審査によるもので、個別の可否はこの記事では断定できません。
②対象になりうる設備と経費の見分け方
設備と経費は、補助事業の中で専ら使うものかどうかで大きく分かれます。加工のための機械装置は、対象になり得る代表的な経費です。建物費を計上する場合は、機械装置かシステム構築費のいずれかと組み合わせることが必要です。
対象になり得るもの
新事業進出枠では、専らその事業で使う加工施設や販売施設を建設・改修する費用が建物費として対象になり得ます。その建物に付随する構築物の建設費も、同じ条件で対象になり得ます。建物の建設や改修は、入札または相見積もりが必要とされています。一般型の経費の区分には建物費がないため、建物を建てる計画は新事業進出枠で検討することになります。
対象外になりやすいもの
- 土地・建物の取得費用、建物の単なる購入や賃貸、ビニールハウスやコンテナなどの簡易建物
- 自動車等の車両(軽トラックなど)、船舶、航空機の購入費・修理費
- 中古品の購入費。一般型では対象外です。新事業進出枠では、中古市場で広く流通していない中古機械などは対象外ですが、3者以上の古物商から型式や年式の書かれた相見積もりを取る場合などは例外になり得ます
- 事務所の家賃、通信費、光熱水費、事務用品、パソコンやタブレットなどの汎用品
- 設置場所の整備工事や基礎工事の費用
- 事業に係る自社の人件費や旅費
- 国の他の制度で、既に補助や委託の対象になっている経費
経費で迷ったときは、「補助事業のための機械や建物として専ら使うか」「既存の業務と共用するか」の2点で確かめると整理しやすくなります。計上した経費の大半が対象外だと、申請の段階で不採択になる可能性があります。事業計画の中心がどの経費なのかを、先に決めておいてください。
③生産側の省力化は、省力化投資補助金(一般型)の枠で考えます
生産側の省力化は、中小企業省力化投資補助金(一般型)の枠で考えるのが基本です。この枠は、加工の新製品や新市場を狙う枠とは目的が違い、今ある現場の作業を省力化することが中心になります。ここでは枠の考え方だけに留め、機械の種類や性能の比較は扱いません。
一般型では、土地・建物の取得費用、車丼、中古品は対象外です。建物費は新事業進出枠の経費区分なので、一般型の中で加工場を建てる計画は組めないと考えておくと、加工側との切り分けがしやすくなります。加工側と生産側の両方を検討する場合は、他の制度で既に受給の対象になっている経費が対象外になる点にも注意してください。どの経費をどの枠で検討するかを、先に整理しておくと安心です。
💬 執筆者の三浦から一言
補助金の審査で見ているのは、計画の中心がどの経費かという点です。加工場を建てたいのか、機械を入れて作業を減らしたいのかで、使える枠も書類の組み立ても変わります。まずはやりたい加工の形を決め、その経費がどの区分に入るかを確かめてから資金計画を組むと、話が早くなります。
④よくある質問
従業員がいないと申請できませんか
申請する時点で、従業員が1人以上いることが必要です。ここでいう従業員には、代表取締役や役員、専従者は含まれません。家族で経営している場合も、本人や家族の専従者を従業員として数えることはできません。試用期間中の人や、短期の雇用も数えられない扱いになります。人を雇う前提の計画なら、採用の時期を資金計画の最初の段階に置いてください。
土地や建物は補助金で買えますか
土地や建物の取得費用は対象外です。一方、新事業進出枠では、加工施設や販売施設を建設・改修する費用が建物費として対象になり得ます。ただし、機械装置かシステム構築費と組み合わせること、入札または相見積もりが必要なことなどの条件があります。建物は補助事業の目的以外に転用できないため、将来の使い道も計画に含めてください。
中古の機械は使えますか
一般型では、中古品の購入費は対象外です。新事業進出枠では、中古市場で広く流通していない中古機械などは対象外になります。一方で、3者以上の古物商から型式や年式の書かれた相見積もりを取る場合などは例外になり得ます。中古を検討する場合は、公募要領と事務局の案内で条件を確かめてください。
補助金はいつ受け取れますか
補助金は原則として、事業が終わり、実績報告を出して金額が確定してから支払われる精算払いです。機械や工事の代金は、まず自分で支払うことが前提になります。補助金が入る前に支払う資金を、どこから用意するかを資金計画の最初の段階で決めておいてください。
衛生や許認可の細かい条件はどこで確認しますか
加工の衛生管理や、食品・乳製品に関する許認可、家畜の衛生の細かい条件は、この記事では扱いません。事業を始める前に、専門家や管轄の窓口に相談してください。補助金の申請書類と合わせて確認すると、準備の順番が整理しやすくなります。
まとめ
畜産の6次化では、加工側と生産側で使う枠が分かれます。加工側は新事業進出枠、生産側は中小企業省力化投資補助金(一般型)の枠で考えるのが基本です。設備と経費は、補助事業の中で専ら使うかどうか、既存の業務と共用しないかで見分けます。まずは精肉・チーズ・ジェラートのどれを選ぶかを決め、その経費がどの区分に入るかを確かめてください。そのうえで、従業員の確保と資金計画の順番を組みましょう。最新の公募要領や事務局の情報も合わせて確認し、判断に迷う部分は専門家や管轄の窓口に相談してください。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























