
ものづくり補助金 製造業の活用事例:NC機械・自動化設備導入の実例
「老朽化した工作機械を入れ替えたいが、数百万円〜数千万円の投資はなかなか踏み切れない」「人手不足で加工が追いつかないので自動化を進めたい」「下請け中心から脱却して、自社製品など新しい事業にも挑戦したい」——中小・小規模の製造業では、こうした設備投資や事業展開の悩みが尽きません。その有力な選択肢になってきたのが、ものづくり補助金と新事業進出補助金です。そして2026年度からは、この2つが統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」という新しい制度として実施される見通しです。
この記事では、まず新制度の全体像を整理したうえで、製造業がNC旋盤・マシニングセンタなどの工作機械や自動化設備を導入する場合の活用事例を、補助金の目的別にわかりやすく整理します。
2026年度からの新制度「新事業進出・ものづくり補助金」とは
これまで、中小企業の設備投資や新規事業への挑戦を支える補助金として、「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」がそれぞれ別の制度として運用されてきました。2026年度からは、この2つが「新事業進出・ものづくり補助金」として統合・再編される方向で進められています。従来それぞれの制度で行われてきた公募は順次最終回を迎え、統合後の新制度の公募要領は2026年内に公開される見通しです。
統合といっても、制度の基本的な考え方が大きく変わるわけではありません。「既存事業の生産性を高める投資」(従来のものづくり補助金が担ってきた領域)と、「新しい事業分野へ進出する投資」(新事業進出補助金が担ってきた領域)という2つの方向性は、新制度にも引き継がれる見込みです。補助上限額や補助率、対象経費の範囲などには見直しが入るとされており、金額や枠組みは今後の公表内容で固まります。申請を検討する際は、必ず最新の公式公募要領で確認してください。
新制度の2つの方向性と製造業での位置づけ
新制度を製造業に当てはめると、投資の目的によって使い方が分かれます。
- 生産性向上の投資(従来のものづくり補助金の領域):NC機械の更新や工程の自動化で、既存事業の加工能力・生産性を高める投資。革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善も含みます。
- 新分野進出の投資(従来の新事業進出補助金の領域):下請け加工から脱却して自社ブランド製品の製造・販売に踏み出すなど、新しい市場・事業分野への挑戦。
同じ設備投資でも、「既存事業の強化か、新規事業への進出か」によって、新制度のどの方向性に当てはまるかが変わります。製造業はもともと機械装置の購入が補助対象の中心になりやすく、いずれの方向性とも親和性の高い業種です。
製造業が新制度で導入できる設備の例
製造業の申請で中心になるのは「機械装置・システム構築費」です。代表的な設備を見ていきましょう。
NC旋盤・マシニングセンタなどの工作機械
金属加工や部品製造の現場で主役になるのが、NC旋盤・マシニングセンタ・複合加工機といったNC(数値制御)工作機械です。古い汎用機から最新のNC機へ入れ替えることで、加工精度の向上、段取り時間の短縮、これまで外注していた工程の内製化などが見込めます。「新しい加工に対応して新規受注を取る」「不良率を下げて生産性を高める」といった、補助金が求める革新性・生産性向上のストーリーに乗せやすい設備です。
自動化・省人化のための設備
人手不足への対応として注目されるのが、産業用ロボット、自動搬送装置(AGV)、ローダー・アンローダー、検査の自動化装置などです。加工機にロボットを組み合わせて夜間の無人運転を実現したり、搬送や検査を自動化して人を付加価値の高い工程に回したりする使い方ができます。単なる「買い替え」ではなく、工程全体の省人化・効率化につながる投資ほど、補助金の趣旨に合致します。
IoT・データ活用とあわせた設備投資
設備にセンサーを取り付けて稼働状況を可視化したり、生産管理システムと連携させて稼働率を改善したりする取り組みも対象になり得ます。機械単体ではなく「データで生産プロセスを改善する」という形にすると、革新性を説明しやすくなります。
※ パソコンや汎用的な事務機器など、どの会社でも使う汎用品は原則として補助対象になりません。あくまで事業の革新・生産性向上に直結する設備が中心です。
各補助金(新制度の各方向性)での活用事例:製造業
製造業がどのように補助金を活用しているか、新制度の2つの方向性に分けて、典型的なパターンを整理します(金額・要件は申請時点の公募回によって異なります)。
生産性向上の投資としての活用事例(ものづくり補助金の領域)
事例1:加工能力の向上で新規受注を獲得
最新のマシニングセンタやNC旋盤を導入し、これまで対応できなかった大型部品や高精度部品の加工に対応。新しい客先・量産品の受注を獲得し、売上拡大と経営基盤の強化につなげるパターンです。「設備がないから断っていた仕事を取りに行く」という前向きな投資ストーリーは、事業計画として説明しやすいのが特徴です。
事例2:工程の自動化で人手不足に対応
加工機にロボットや自動搬送を組み合わせ、これまで人手に頼っていた着脱・搬送・検査の工程を自動化。少ない人数でも生産量を維持し、空いた人材を段取りや品質管理など付加価値の高い業務に振り向けるパターンです。「省人化×生産性向上」は業種を問わず説明しやすいテーマです。
事例3:IoT・データ活用で生産プロセスを改善
設備の稼働データを収集・可視化し、ボトルネック工程を特定して改善するパターンです。設備投資とあわせてシステムを構築し、稼働率や歩留まりを改善することで、投資効果を数値で示しやすくなります。
新分野進出の投資としての活用事例(新事業進出補助金の領域)
事例4:新分野へ進出する設備投資
下請け加工が中心だった金属加工業が、これまで培った技術を活かして自社ブランドの完成品(例:アウトドア用品や医療・介護向け部品など)の製造・販売という新しい事業に進出するケースです。新たな製造ラインや販路開拓に必要な設備投資を、新分野進出の取り組みとして計画できます。既存の加工事業に新しい収益の柱を加える投資です。
どの方向性で申請する?製造業での使い分け
- 既存事業の生産性を高めたい:NC機械の更新や工程の自動化で加工能力・効率を上げる → 生産性向上(ものづくり補助金)の方向性
- 新しい事業分野に進出したい:自社製品・新市場・新サービスに踏み出す → 新分野進出(新事業進出補助金)の方向性
- 投資規模が大きい:新分野進出で大型投資が必要なら、上限額の大きい枠が向く場合がある
同じ設備投資でも、「既存事業の強化か、新規事業への進出か」で適した方向性・申請枠が変わります。新制度では対象経費の範囲や枠ごとの要件が見直される見込みのため、申請枠の選定段階で専門家に相談すると失敗が少なくなります。
申請で押さえるべきポイント
- 革新性・生産性向上を数値で語る:単なる老朽化更新ではなく、「何ができるようになり」「どれだけ効率・売上が上がるか」を具体的な数値目標で示す。
- 賃上げ要件を確認する:給与支給総額や事業場内最低賃金の引き上げが要件になる枠があります。自社が達成できるかを事前に確認する。
- 新規事業は「新しさ」と市場性を示す:新分野進出の枠では、既存事業との違い・新たな市場の見込み・収益化の道筋を具体的に描く。
- 対象経費の範囲を確認する:機械装置が中心で、汎用品や単なる消耗品は対象外。見積もりの取り方にも注意が必要です。
- 公募スケジュールから逆算する:新制度の公募要領が公開されたら、申請期間から逆算して事業計画書の作成・見積取得を早めに進める。
よくある質問(FAQ)
Q. 中古の機械でも対象になりますか?
A. 公募回によって扱いが異なります。原則は新品の設備投資が想定されており、中古品は条件が付くことが多いため、最新の公募要領で確認してください。
Q. 生産性向上と新分野進出はどう使い分けますか?
A. 既存事業の生産性向上なら従来のものづくり補助金の領域、新しい事業分野への進出なら新事業進出補助金の領域が基本です。新制度では投資の目的に応じて申請する枠が分かれる見込みで、同じ経費を重複して申請することはできません。
Q. ほかの補助金と併用できますか?
A. 同じ経費に複数の補助金を重ねることは原則できません。設備ごと・経費ごとに使い分けるのが基本です。
Q. 採択されれば設備代はすぐ振り込まれますか?
A. この補助金は原則として後払い(精算払い)です。いったん自社で支払い、実績報告の後に補助金が入金されるため、つなぎの資金繰りも計画に入れておく必要があります。
まとめ
2026年度からは、「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が「新事業進出・ものづくり補助金」として統合・再編される見通しです。ただし、「既存事業の生産性向上」と「新しい事業分野への進出」という2つの方向性は引き継がれる見込みで、製造業ではNC旋盤・マシニングセンタといった工作機械やロボット・自動搬送などの自動化設備による生産性向上の投資、下請けからの脱却や自社製品など新分野進出の投資、と整理できます。ポイントは、生産性向上の投資なら「老朽化更新」で終わらせず加工能力の向上・省人化・データ活用のストーリーに乗せること、新分野進出の投資なら新分野の市場性と収益化の道筋を描くことです。補助上限額・補助率・要件は新制度の公募要領で確定するため、最新情報を確認しながら早めに事業計画の準備を進めましょう。自社の設備投資がどの方向性・どの枠に当てはまるか迷う場合は、補助金に詳しい専門家に相談するのが近道です。
【無料相談のご案内】
弊社では、元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが補助金支援を行っております。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























