
鍼灸院の開業融資で審査される5つのポイント|創業前に準備したいことを解説
「国家資格は取ったが、自分の鍼灸院を持つための資金をどう借りればいいのか」「開業融資の審査では何を見られるのか」——独立を考える鍼灸師・はり師きゅう師にとって、創業融資の審査基準は気になるところだと思います。施術の腕に自信があっても、融資審査は別の物差しで判断されるため、何が評価されるのかを知っておくと準備がぐっと進めやすくなります。
この記事では、鍼灸院の開業融資で重視されるポイントを5つに整理し、創業前に準備しておきたいことや申請の流れを解説します。なお、融資制度や金利は変わりやすいため、本記事の数字は2026年時点の目安です。申請時は日本政策金融公庫など公式の最新情報を必ず確認してください。
鍼灸院の開業融資はどこから借りる?まず押さえる基本
創業時の資金調達でまず候補になるのが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。政府系金融機関のため、実績のない創業者にも比較的取り組みやすいのが特徴です。
- 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)。鍼灸院の開業規模であれば十分カバーできる設計です
- 担保・保証人:創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます
- 金利:2026年6月1日現在、無担保で創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合の基準利率は年3.45〜5.15%です。創業期は原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は制度・審査・条件により異なります
- 据置期間:元金返済の据置を5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いです。開業初期の資金繰りに余裕を持たせられます
かつての「新創業融資制度」は2024年3月に廃止され、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。古い制度名で情報を探すと混乱しやすいので注意しましょう。
審査で重視される5つのポイント
鍼灸院に限らず、創業融資の審査では主に次の5点が見られます。
1. 事業計画書の説得力
創業時は過去の事業実績がないため、事業計画書の作り込みが審査結果を大きく左右します。「どんな患者層を、どのくらいの単価・来院頻度で見込むのか」「月にどれだけの売上が立ち、いつ黒字化するのか」を、根拠のある数字で示せるかが重要です。鍼灸院なら、施術メニューと料金、1日の対応可能人数、リピート率の想定などを具体的に組み立てましょう。
2. 自己資金
自己資金の額は審査の重要な判断材料になります。ただし、現行制度では「総額の何分の1が必須」といった自己資金の割合要件は決まっていません。額や割合に固定のルールはないものの、自己資金が多いほど計画への本気度が伝わり、審査で有利になりやすいと考えておくとよいでしょう。自己資金は面談時点で口座に確認できる形にしておきます。
また、開業前に自費で購入した施術用ベッドや器具、取得した資格関連の費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておきましょう。
3. 経験・経歴
鍼灸師としての実務経験や、これまで勤めた治療院での経験は、事業の継続性を裏づける材料として評価されます。国家資格を持っていること、開業する分野での施術経験があることは強みです。経歴と開業する事業内容に一貫性があると、計画の実現可能性が伝わりやすくなります。
4. 資金使途と返済可能性
借りたお金を何に使うか(資金使途)が明確で、事業に必要な支出であることが前提です。鍼灸院なら、内装工事費・施術機器・物理療法機器・予約システムなどの設備資金と、家賃・人件費・広告費などの運転資金に分けて示します。なお、経営者の個人的な生活費は運転資金の対象になりません。人件費や役員報酬は事業に必要な経費として運転資金に含められます。
5. 信用情報・過去の借入状況
過去にローンやクレジットの延滞がないか、現在の借入状況なども確認されます。気になる場合は、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3機関で自己開示して現状を把握しておくと安心です。
鍼灸院ならではの審査の見られ方
鍼灸院の開業融資では、業種特有の事情も計画の説得力に関わってきます。
- 設備資金の妥当性:施術ベッド・電気治療器・物理療法機器などは、過剰投資になっていないか、開業当初の患者数に見合っているかが見られます。見積書を揃え、必要な投資であることを説明できるようにしましょう
- 集患計画の現実性:鍼灸院は立地と集患が経営を左右します。商圏の人口や競合、ホームページ・予約システムなどの集客手段をどう用意するかまで踏み込めると、計画の信頼性が高まります
- 運転資金の余裕:開業直後は患者数が安定するまで時間がかかります。軌道に乗るまでの数か月分の運転資金を見込んでおくと、資金繰りの不安を抑えられます
申請の流れと審査までのスケジュール
開業融資は、おおむね次の流れで進みます。
- 事業計画書・創業計画書の作成(施術メニュー・売上計画・資金使途を整理)
- 自己資金のエビデンス(通帳など)や設備の見積書、本人確認書類などの準備
- 日本政策金融公庫への申し込み・面談
- 審査(書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安)
- 融資実行・入金
書類準備を含めると、申請準備に約1か月、審査・実行に約1か月、合計で約2か月程度を見ておくと安全です。開業日から逆算して、早めに動き出すことをおすすめします。
審査に向けた準備チェックリスト
- 施術メニュー・料金・想定来院数にもとづく売上計画を数字で示せる
- 自己資金を口座で確認できる状態にしている
- みなし自己資金になりうる支出の領収書を保管している
- 設備・内装の見積書を取得している
- 資金使途を設備資金と運転資金に分けて整理している
- 信用情報の現状を把握している
よくある質問
Q. 審査に落ちると信用情報に傷がつきますか?
A. 日本政策金融公庫の審査に落ちても、そのこと自体が信用情報に記録されることはありません。公庫は個人信用情報機関に加盟しておらず、申し込みや否決の記録が信用情報に残るわけではないためです。ただし、過去の延滞や債務整理など別の事由による情報が信用情報に登録されている場合は、それが審査に影響することがあります。
Q. 自己資金はいくら用意すればよいですか?
A. 制度上、自己資金の額や割合に決まった要件はありません。ただし自己資金は審査の重要な判断材料であり、多いほど有利になりやすい傾向があります。開業に必要な資金の全体像を踏まえ、無理のない範囲でできるだけ準備しておくとよいでしょう。
Q. 自宅の一室で開業する場合も融資は受けられますか?
A. 開業形態にかかわらず、事業計画の説得力や資金使途の妥当性で判断されます。自宅開業はテナント開業より初期費用を抑えやすい一方、施術所としての要件や集患の見せ方を計画でしっかり示すことが大切です。
まとめ
鍼灸院の開業融資では、事業計画書の説得力・自己資金・経験・資金使途・信用情報の5つが主に重視されます。施術の経験に加えて、数字で根拠を示せる事業計画と、設備・運転資金の妥当な見積もりを用意することが、審査を前に進めるカギになります。融資制度や金利は変わりやすいため、2026年時点の情報をもとに、申請前には公式の最新情報を確認しましょう。創業融資の進め方や事業計画書の作り込みに不安がある場合は、早めに専門家へ相談することで準備をスムーズに進められます。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























