
分院と画像を共有したい動物病院へ|画像診断システムの補助金は「買う範囲」で決まります
2院目を出した動物病院から、本院で撮った画像を分院でも見られるようにしたい、そのための画像診断システムに補助金は使えるのか、というご質問をいただきます。検索して出てくるのは「動物病院が使える補助金一覧」がほとんどで、これから買おうとしている一式が制度側でどう見られるのかまでは書かれていません。ここでは、見積を取る前に決めておく4つのことと、そこから制度を当てる順番を整理します。
画像診断システムは「撮る機械」だけの買い物ではありません
院内で「画像診断システム」と呼んでいるものは、制度から見ると3つの層に分かれます。
- 撮る層:レントゲン装置、超音波診断装置、コンピュータ断層撮影装置などの撮影機器
- 貯めて見る層:画像を保存する院内サーバー、または画像を預けるクラウドのサービス、閲覧用のソフト(画像管理システム=PACS)
- つなぐ層:撮影機器とサーバーをつなぐ設定作業、院内の配線工事、分院との回線
補助金の審査は「画像診断システム一式」という商品名では進みません。見積の1行ずつが、専用のものか汎用のものか、買い切りの設備か払い続けるサービス利用料かで仕分けられていきます。つまり、どこまでを1つのシステムとして買うのかを自院で決めない限り、制度を当てる作業そのものが始まりません。以下の4手順は、その「買う範囲」を確定させるためのものです。
手順1:どこまでを1つのシステムとして買うかを決める
最初の分かれ目は、撮影機器の入れ替えと同時に進めるのか、いまある機器はそのままにして貯めて見る層だけを足すのかです。ここで投資額のけたが変わり、乗る制度も変わります。
設備投資が前提の制度には、金額の入口が決められています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠は補助下限が100万円で、機械装置・システム構築費は単価10万円(税抜)以上とされています。中小企業省力化投資補助金(一般型)は、単価50万円(税抜)以上の機械装置等を最低1つ入れる必要があります(いずれも2026年度・執筆時点の公募要領に基づく数字です)。
貯めて見る層だけを足す計画だと、見積の中身がソフトとサービス利用料に寄り、この単価要件を満たす機械装置が1つも立たないことがあります。撮影機器を替えないと決めた時点で、設備投資型の制度は候補から外れる可能性が出てくる、という順番で考えると迷いが減ります。
手順2:いまある撮影機器がそのままつながるかを確認する
次に確認するのは、院内にある撮影機器が画像管理システムと直接つながる形式かどうかです。獣医療で使われている画像の受け渡しにはDICOMという共通形式があり、これに対応した機器であれば、サーバーやクラウドへ画像がそのまま流れます。
一方で、開業時から使っている装置や、画像を紙やフィルムで出力する運用が残っている場合は、変換のための装置や追加のソフトが必要になります。この追加分は、見積の中で撮影機器とも画像管理システムとも別の行として立ちます。ベンダーに構成を依頼するときは、既存機器の型式を先に伝えて、変換が要る機器と要らない機器を分けた見積にしてもらうと、後の仕分けが速く進みます。
💬 執筆者の三浦から一言
事務局で申請書を見ていた立場から言うと、この手の一式見積で先に線が引かれるのは汎用品の行です。閲覧用のパソコンやタブレット端末は、画像診断のために買ったつもりでも汎用品として扱われます。機器の呼び名ではなく、その品目が自院専用の構成の一部かどうかで判断が動くので、構成表を作る段階で汎用品の行を分けておくと話が早く進みます。
手順3:画像を院内に置くか、預けるかを決める
3つ目は保存先です。院内にサーバーを置けば買い切りの設備になり、クラウドに預ければ払い続けるサービス利用料になります。同じ「画像を保存する」でも、制度側での置かれ方が変わります。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)に加えて、設定・研修・マニュアル作成・保守サポートといった導入関連費を対象経費としています。補助上限は通常枠450万円、インボイス枠350万円です。ただし対象はITツールが中心で、パソコンやタブレット端末といったハードの単体購入は対象外とされています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金や中小企業省力化投資補助金(一般型)でも、クラウドサービス利用費は対象経費に含まれますが、後者では補助事業専用の利用であることが前提です。院内の他の業務と共用するクラウド契約をそのまま計上する形にはなりません。5年使うつもりの契約でも、補助が効くのは決められた期間分だけ、という前提で自己負担を試算しておくと、採択後に資金繰りの見込みが崩れずに済みます。
手順4:分院・院外からの閲覧まで含めるかを決める
最後に決めるのが、画像を見る場所をどこまで広げるかです。分院や自宅からも読影したいとなると、回線、利用者ごとの認証、閲覧用の端末が構成に加わります。この「機器が増える」ことは、中小企業省力化投資補助金(一般型)では意味を持ちます。
同制度の対象は、ICT・IoT・AI・ロボット等を活用した専用設備等といったオーダーメイド性のある設備で、汎用設備であっても、省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合や、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合には、オーダーメイド設備とみなされます。単に汎用設備を単体で導入する事業は対象外です。
本院と分院で機器構成が変わり、拠点数に応じて周辺機器の数が変わる計画は、この判定に沿って説明しやすい形といえます。逆に、1台のサーバーを置いて終わりの計画では、単価50万円の要件を満たしていてもオーダーメイド性を示しきれません。
決めた範囲を制度に当てる
手順1から4で買う範囲が決まったら、制度の入口はおおよそ次のように分かれます。
- 貯めて見る層のソフト・クラウドが中心:デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)。事務局に登録されたIT導入支援事業者の支援を受けて申請する前提で、ツールも登録品が前提です
- 撮影機器とサーバーと工事を組み合わせて院内の動きを作り替える:中小企業省力化投資補助金(一般型)。3〜5年の事業計画で労働生産性を年平均4.0%以上伸ばす計画が求められ、賃上げ目標が未達の場合は達成率に応じて返還が発生しうる設計です
- 画像を使った新しい診療サービスを立ち上げる:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠。ただし新製品・新サービスの開発を伴わない単なる導入は対象外で、同業で既に相当程度普及している開発も対象外とされています
- 常時使用する従業員が5人以下の個人開業:小規模事業者持続化補助金。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下が対象範囲で、対象外として列挙されているのは医師・歯科医師・助産師や医療法人などです。ただし販路開拓が主題の制度なので、機器の導入だけを理由にすると筋が通りません
見積を取る前に決めておきたい4項目
- 撮影機器を替えるのか、貯めて見る層だけを足すのか
- 画像を院内サーバーに置くのか、クラウドに預けるのか
- 分院・院外からの閲覧を今回の範囲に含めるのか
- 発注をいつにするのか(交付決定前の契約・発注は対象外です)
まとめ
画像診断システムの補助金は、機器の名前ではなく買う範囲で入口が決まります。撮る層・貯めて見る層・つなぐ層のどこまでを今回の投資にするかを先に決め、そのうえで制度を当てる順番にすると、見積の作り直しが減ります。制度の要件や公募回ごとの扱いは変わることがありますので、実際の申請では最新の公募要領で確認しながら進めてください。自院の構成でどの制度が筋になるかの判断は、補助金の支援実績を持つ専門家に見てもらうと早く固まります。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























