
飲食店開業の融資審査で重視される項目は何ですか
飲食店を開業するには、物件取得や内装・厨房設備などにまとまった資金が必要です。自己資金だけでまかなえることは少なく、多くの開業者が日本政策金融公庫などの創業融資を利用します。ただし融資は申し込めば必ず通るものではなく、審査でいくつかの項目をチェックされます。本記事では、これから飲食店を開業する個人事業主・中小企業の方に向けて、飲食店の融資審査で重視される項目と、通過率を高めるための準備を、実務目線でわかりやすく解説します。
飲食店の開業融資はどこで受けるのが基本か
飲食店の開業でまず検討したいのが、政府系金融機関である日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)です。これから事業を始める方や開業して間もない方が利用でき、実績の少ない創業期でも相談しやすいのが特徴です。あわせて、都道府県や市区町村の制度融資(信用保証協会付き融資)も選択肢になります。いずれも審査で見られる観点は共通する部分が多く、事前に押さえておくことで準備がスムーズになります。
飲食店の融資審査で重視される項目
1. 自己資金の準備状況
審査で特に重視されるのが自己資金です。かつての「自己資金は融資希望額の10分の1以上」という要件は撤廃されていますが、自己資金がゼロでよいという意味ではありません。コツコツ貯めてきた自己資金は、開業への計画性と本気度を示す材料として評価されます。実務上は、開業資金総額の2〜3割程度を自己資金で用意できると、審査で有利に働きやすいといえます。通帳でお金の流れを確認されることもあるため、出所の説明できないお金(いわゆる「見せ金」)は避けましょう。
2. 事業計画書(特に売上の根拠)
審査の中心になるのが事業計画書です。飲食店では「客席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数」で売上を積み上げ、現実的な数字になっているかが見られます。希望的観測で過大な売上を掲げるのではなく、立地の客層や近隣の競合状況を踏まえた、無理のない計画にすることが信頼につながります。
3. 本人の経験・経歴
飲食業界での勤務経験や、店長・料理長としてのマネジメント経験は、事業を続けていける根拠として評価されます。未経験での開業がただちに不利になるわけではありませんが、その場合は経験者の協力体制や研修歴などで、運営できる裏付けを補うことが大切です。
4. 信用情報
個人のクレジットカードや各種ローンの延滞、税金や公共料金の滞納は、返済能力への懸念材料として審査に影響します。申し込み前に、自分の支払い状況に問題がないかを確認しておきましょう。
5. 資金使途の妥当性
借りたお金を何に使うのか(設備資金・運転資金の内訳)が、見積書などの根拠とともに明確になっているかも確認されます。設備資金だけでなく、開業後に売上が安定するまでの運転資金(最低3〜6か月分が目安)を見込んでおくことも重要です。
飲食店ならではの審査で見られるポイント
飲食店は開業件数が多い一方で廃業も少なくない業種のため、収支のバランスが現実的かどうかが丁寧に見られます。特に意識したいのが、原価率と人件費を合わせた「FLコスト」です。一般に、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計は売上の55〜60%程度に収めるのが健全とされ、ここに家賃を加えた水準が高すぎると、計画段階で利益が出にくいと判断されます。
また、客単価と席数・回転数の設定が立地に見合っているか、ランチ・ディナーの想定や客層が地域の実態と整合しているかも確認されます。数字同士が矛盾なくつながっているほど、計画の説得力が高まります。
審査に通りやすくするための準備
- 自己資金を計画的に貯めておく:開業直前に一括で用意したお金より、時間をかけて積み立てた資金のほうが評価されやすい
- 売上根拠を数字で固める:席数・回転数・客単価・営業日数を、競合や立地データと合わせて説明できるようにする
- 見積書・物件資料をそろえる:資金使途を裏づける資料を準備し、内訳を明確にする
- 信用情報を整えておく:申し込み前に延滞や滞納を解消しておく
- 余裕を持ったスケジュールで動く:物件のめどが立った段階で早めに相談を始める
飲食店の開業融資でよくある質問
自己資金なしでも融資は受けられますか?
制度上の自己資金要件は撤廃されているため、申し込み自体は可能です。ただし自己資金がまったくない状態では計画性や返済能力の評価が下がりやすく、希望額の満額融資は難しくなる傾向があります。可能な範囲で準備しておくことをおすすめします。
未経験でも飲食店の融資は通りますか?
未経験がただちに不利になるわけではありませんが、運営できる裏付け(経験者の協力、研修歴、綿密な計画など)で補うことが重要です。経験の有無にかかわらず、事業計画書の完成度が鍵を握ります。
融資の相談はどこにすればいいですか?
公庫の窓口に直接相談することもできますが、事業計画書の作成や金融機関とのやり取りに不安がある場合は、創業融資にくわしい専門家に相談することで、準備の精度とスピードを高められます。
まとめ
飲食店の融資審査では、自己資金の準備状況、現実的な売上根拠を備えた事業計画書、本人の経験、信用情報、資金使途の妥当性が重視されます。さらに飲食店ならではの視点として、FLコストや客単価・回転数の整合性も確認されます。これらは事前の準備で大きく差がつくポイントです。なお融資制度の金利・限度額・要件は変更されることがあるため、最新の情報は日本政策金融公庫など公式の窓口で確認してください。「いくら借りられるか」「何から準備すればよいか」で迷ったら、早めに専門家へ相談することで、開業までの道のりをより確実なものにできます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























