
飲食店創業融資の審査に通るポイント
「自己資金が少ないけれど飲食店を開きたい」「日本政策金融公庫の審査に通るか不安」――独立開業を目指す方から、創業融資についてこうした相談を数多くいただきます。飲食店は他業種に比べて初期投資が大きく、開業後の競争も激しいため、金融機関は事業計画の現実性をとくに丁寧に見ます。この記事では、これから飲食店を開業する個人・小規模事業者の方に向けて、創業融資の審査で実際に重視されるポイントと、審査落ちを防ぐ準備の進め方を、わかりやすく整理します。
※本記事は執筆時点の制度・一般的な実務に基づいています。融資制度の要件や金利は改定されることがあるため、申し込み前に必ず日本政策金融公庫など公式の最新情報をご確認ください。
飲食店の創業融資はどこで借りるのが基本か
これから開業する飲食店が資金を調達する場合、実績がまだない段階でも申し込みやすいのが日本政策金融公庫の創業融資です。公庫は政府系金融機関で、創業期の事業者を支援する役割を担っているため、民間銀行ではまだ取引実績のない開業前後の事業者でも相談しやすいのが特徴です。
もう一つの選択肢が、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して提供する制度融資です。利子や保証料の一部を自治体が補助してくれる場合もあり、地域によって条件が異なります。実務上は、公庫と制度融資を比較し、自分の開業計画に合うほうを選ぶ、あるいは両方を検討するのが一般的です。いずれにしても、審査で見られる本質的なポイントは共通しています。
飲食店の創業融資審査で見られる5つのポイント
1. 自己資金
かつて公庫の新創業融資制度には自己資金要件がありましたが、制度改定により形式的な要件は緩和されています。とはいえ、自己資金は今も審査で重視される要素です。理由は、自己資金の額と貯め方から「計画的にお金を準備できる人か」が読み取れるためです。コツコツ貯めてきた預金は評価されやすく、逆に直前に一括で入金された資金(いわゆる「見せ金」)はマイナスに働くことがあります。総事業費の2〜3割程度を自己資金で用意できると、計画に説得力が出やすくなります。
2. 飲食業の経験・キャリア
飲食店の審査では、申込者自身が同業種でどれだけ経験を積んできたかが重視されます。調理・店舗運営・数値管理などの経験があるほど、事業の継続可能性が高いと判断されやすくなります。未経験で開業する場合は、研修受講や勤務経験の補強、信頼できるスタッフの確保など、経験不足を補う工夫を計画書で示すことが大切です。
3. 事業計画書の具体性
創業計画書は審査の中心となる書類です。客単価×席数×回転数×営業日数から導いた売上の根拠、原価率・人件費・家賃などの固定費、返済額を差し引いても資金が回るかどうか――こうした数字に一貫性があるかが見られます。「繁盛すれば返せます」という希望的観測ではなく、控えめな前提でも返済が成り立つことを示せると評価が高まります。
4. 信用情報(個人の借入・返済履歴)
創業期の融資は事業実績がない分、申込者個人の信用が重視されます。クレジットカードやローンの延滞、税金・公共料金の滞納などがあると、審査に影響することがあります。心当たりがある場合は、申し込み前に状況を整理しておきましょう。
5. 物件・立地と資金計画の整合性
店舗物件の家賃・保証金・内装工事費が、想定する売上規模に対して過大でないかも確認されます。立地と客層、席数と人件費のバランスが取れているか、見積書などの根拠資料とあわせて整合性が問われます。
審査に落ちやすい飲食店の特徴
審査が通りにくくなる典型的なパターンを知っておくと、事前の対策がしやすくなります。
- 自己資金がほとんどなく、借入だけで開業しようとしている
- 売上予測が根拠に乏しく、希望的な数字になっている
- 家賃や内装費が売上規模に対して過大で、返済原資が見えない
- 飲食業の経験が浅く、それを補う体制も示せていない
- 個人の信用情報に延滞・滞納の履歴がある
これらは一つでも当てはまると不利になりますが、いずれも準備段階で改善できる項目です。
審査通過率を上げる準備ステップ
申し込み前にやっておきたい準備を、順を追って整理します。
- 自己資金を計画的に準備する:通帳の入出金で「コツコツ貯めてきた」ことが分かる状態にしておく
- 創業計画書を数字で固める:売上根拠・原価・固定費・返済計画を一貫させ、控えめな前提でも黒字化できる絵を描く
- 見積書・物件資料をそろえる:内装・設備の見積りや物件概要で、必要資金の妥当性を裏づける
- 信用情報を整理する:延滞・滞納があれば申し込み前に解消・説明できるようにしておく
- 面談に備える:計画書の数字を自分の言葉で説明できるよう準備する
飲食店の創業融資に関するよくある質問
自己資金がなくても飲食店の創業融資は受けられますか?
形式的な自己資金要件は緩和されていますが、自己資金がまったくない状態では計画の説得力が弱く、審査は厳しくなる傾向があります。少額でも自己資金を準備しておくことをおすすめします。
いくらまで借りられますか?
借入可能額は事業計画の内容・自己資金・返済能力によって個別に判断されます。一律の上限で決まるものではないため、必要資金と返済計画を具体的に示すことが重要です。
創業融資と補助金は併用できますか?
融資と補助金は仕組みが異なり、要件を満たせば併用できる場合があります。ただし補助金は原則あと払いで、つなぎ資金として融資が必要になるケースもあるため、資金繰り全体で設計することが大切です。
まとめ
飲食店の創業融資審査では、自己資金・飲食業の経験・事業計画書の具体性・信用情報・物件と資金計画の整合性が主に見られます。いずれも申し込み前の準備で改善できる項目であり、根拠のある計画書と整った自己資金を用意できれば、審査通過の可能性は高まります。「必ず借りられる」という保証はありませんが、ポイントを押さえた準備が結果を大きく左右します。判断に迷うときは、融資の実務に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























