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コラム

企業価値担保権で融資を受けるには?必要な準備と手続きの流れを5ステップで解説

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企業価値担保権で融資を受けるには|準備と手続き5ステップで解説

不動産や個人保証に頼らず、自社の技術やノウハウ・顧客基盤といった「無形資産」を含む事業全体を担保に融資を受ける――そんな新しい選択肢が「企業価値担保権」です。これを定めた事業性融資の推進等に関する法律(事業性融資法/令和6年法律第52号)は、2026年5月25日に施行されました。本記事は、企業価値担保権を実際に使ってみたい法人経営者に向けて、申請にあたって何をどう準備すればよいのかを、5つのステップに沿って整理します。なお本記事は執筆時点(2026年6月)の情報であり、対象は会社法上の「会社」に限られます。個人事業主は対象外で、利用には法人化が前提となる点を先に押さえてください。

前提:企業価値担保権を使えるのは「会社」だけ

企業価値担保権(事業性融資法第7条)は、会社の総財産を一体として担保にできる新しい担保権です。ここでいう財産には、土地や設備のような有形資産だけでなく、ノウハウ・顧客基盤・ブランド・将来キャッシュフローといった無形資産や、将来取得する財産まで含まれます。一方で、対象となるのは会社法上の「会社」(株式会社・持分会社)に限られ、個人事業主は対象外です(第2条)。物上保証は禁止され(第13条)、経営者の個人保証についても権利行使が原則として制限されます(第12条。ただし虚偽報告等の例外あり=第12条4項)。

もう一つの前提が「現状」です。施行直後のため、企業価値担保権を取り扱える金融機関はまだ限定的で、無形資産の評価手法も発展途上にあります。後述するとおり、対応金融機関の確認は早い段階で行うことが望ましいといえます。

手続きの全体像:三者の信託スキーム

企業価値担保権は、債務者・担保権者・貸し手の三者による信託の形で設定されます。具体的には、借り手である会社が委託者、内閣総理大臣の免許・監督を受ける企業価値担保権信託会社が受託者(担保権者)、そして貸し手が受益者(特定被担保債権者)という構造です。この企業価値担保権信託契約(第8条)によって担保権が設定されます。貸し手に制限はなく、銀行・信用金庫のほか、ベンチャーファンドや再生ファンド等も想定されています。

設定にあたっては取締役会の決議等が必要で(第10条)、第三者に対する対抗要件は債務者本店所在地での商業登記です(第15条)。大まかには「企業価値の整理 → 事業計画 → 金融機関・支援機関への相談 → 信託契約・登記」という順で進む、と捉えておくとよいでしょう。以下、準備の流れを5ステップで見ていきます。

企業価値担保権で融資を受けるための5ステップ

ステップ1:自社の「企業価値」を可視化する

結論:まず、何が自社の強みかを言葉にすることから始めます。企業価値担保権では無形資産が評価対象になるため、技術・ノウハウ・顧客基盤・取引関係・ブランドなどを棚卸しし、第三者に伝わる形で言語化しておくことが出発点になります。なぜなら、これらは決算書には載りにくく、説明できなければ評価の俎上に乗らないからです。つまずきやすいのは「自社では当たり前すぎて強みと認識していない」点です。社内で当然視している業務フローや顧客との関係性こそ、棚卸しの対象になります。

  • 独自の技術・製法・ノウハウ(属人化している知見も含む)
  • 主要顧客・リピート構造・継続的な取引関係
  • ブランド・許認可・データ・知的財産
  • 将来の収益の源泉になっている仕組み

ステップ2:実現可能で成長性のある事業計画を策定する

結論:「これからどう稼ぐか」を根拠づける事業計画が評価の軸になります。企業価値担保権は将来キャッシュフローを含む事業価値を担保とする発想のため、過去の実績よりも、将来の収益見込みをどれだけ説得力をもって示せるかが問われます。実績が乏しい段階でも、計画の合理性で評価される余地があるのがこの制度の特徴です。一方で、根拠の薄い右肩上がりの計画は逆効果になりかねません。市場・前提・施策と数字のつながりを丁寧に組み立てることが期待されます。

ステップ3:簡易なキャッシュフローを説明できるようにする

結論:将来キャッシュフローを「自分の言葉」で説明できる状態を目指します。精緻なモデルを作り込むことよりも、お金がどこから入りどこへ出ていくのか、その流れの要点を経営者自身が語れることが大切です。元金融機関の実務知見としても、行員に対して将来キャッシュフローを自分の言葉で説明できると、事業の理解が伝わりやすくなる傾向があるといわれます(断定はできません)。資料の数字と口頭の説明が食い違うと不安材料になりやすいため、両者の整合を意識しておくとよいでしょう。

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ステップ4:認定事業性融資推進支援機関や金融機関に相談する

結論:一人で抱えず、支援機関と金融機関に早めに相談します。事業性融資法は、主務大臣が認定する「認定事業性融資推進支援機関」を設けています(第232条)。この機関は、中小企業者向けに経営実態の把握や事業計画策定の支援、定期的なフォローアップや計画変更時の助言を行い、金融機関向けには企業価値を見極める目利きの助言を行う役割を担います。認定を受けられるのは原則として一般社団法人・一般財団法人その他主務省令で定める法人とされ(第233条の欠格条項)、株式会社等が対象になるかは今後の主務省令次第です(2026年6月時点)。実務では税理士・中小企業診断士等の専門家が関与することが想定されます。あわせて、取引のある金融機関に企業価値担保権の取り扱い可否を確認しておきましょう。対応金融機関はまだ限られるため、この確認は早いほど安心です。

ステップ5:信託契約・商業登記など設定の手続きを進める

結論:最後に、信託契約と登記など「設定」の手続きへ進みます。具体的には、企業価値担保権信託契約の締結(第8条)、設定に必要な取締役会の決議等(第10条)、そして対抗要件としての本店所在地での商業登記(第15条)が必要になります。ここで重要なのは、登記申請書の書き方や税務処理の具体的な進め方は専門領域だという点です。本記事ではどのような手続きが必要かという全体像にとどめ、登記・税務など具体の手続きは司法書士・税理士等の専門家と進めることを前提としてください。手続きの種類が多いため、ステップ4の段階から専門家に伴走してもらうとスムーズです。

準備でつまずきやすい点

最後に、進める際に注意したい点を整理します。第一に、無形資産の評価手法は発展途上で、評価の考え方が金融機関ごとに異なる可能性があります。第二に、企業価値の言語化から事業計画、信託契約・登記までは一定の時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールが前提になります。第三に、施行直後で対応金融機関が限定的なため、まず取り扱い可否を確認することが結果的に近道になります。第四に、登記・税務は専門家の領域であり、自己流で進めず早めに専門家へ相談することが望まれます。

まとめ:まずは企業価値の可視化と事業計画から

企業価値担保権で融資を受けるための準備は、(1)企業価値の可視化、(2)事業計画の策定、(3)キャッシュフローの説明準備、(4)支援機関・金融機関への相談、(5)信託契約・登記の手続き、という5つのステップで進みます。いずれも「必ず融資が受けられる」ことを保証するものではありませんが、無形資産を含む事業の価値を言葉にし、将来の見通しを根拠づけることが評価の前提になります。まず着手すべきは、ステップ1とステップ2――自社の企業価値の可視化と事業計画の整理です。そのうえで、認定事業性融資推進支援機関や金融機関、司法書士・税理士等の専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。本記事は執筆時点(2026年6月)の情報であり、今後の主務省令や金融機関の対応状況によって運用が変わる可能性がある点にご留意ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。

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