
人手不足で廃業する前に検討したい選択肢|採用・定着・外部活用で事業を続ける方法
「人が採れない」「採っても辞めてしまう」「もう廃業するしかないかもしれない」――そう感じている中小企業・個人事業主の経営者の方は、近年急速に増えています。しかし、人手不足を理由に廃業を決めてしまう前に、まだ取れる選択肢が残っているケースは少なくありません。この記事では、人手不足で事業の継続に悩む経営者の方に向けて、廃業を決断する前に確認したいことと、事業を続けるための具体的な選択肢を整理します。なお制度や統計は時点によって変わるため、本記事は執筆時点の情報をもとにしています。
人手不足で廃業を考える企業が増えている
帝国データバンクの調査によると、2025年度の人手不足倒産は441件と過去最多を更新し、3年連続で最多を更新し続けています。その多くは従業員10人未満の小規模な企業で、建設業や物流業など特定の業種で特に深刻です。さらに、中小企業の後継者不在率は全国平均で約50%にのぼり、「人がいない」ことと「継ぐ人がいない」ことが重なって、廃業を選ばざるを得ない経営者が増えています。
つまり、人手不足による事業継続の悩みは、決して特別なことではなく、多くの経営者が直面している共通の課題です。だからこそ、感情的に「もうだめだ」と判断する前に、選択肢を冷静に並べて比較することが大切になります。
廃業を決める前に確認したいこと
廃業は、一度決めると後戻りが難しい決断です。決断の前に、まず次の点を整理してみましょう。
- 本当に「人手不足」だけが原因か:採用ができない理由が、給与水準・求人の出し方・職場環境のどれにあるのかを切り分ける。
- 必要な人数は本当にその数か:業務の一部を効率化・自動化すれば、今より少ない人数でも回せないかを検討する。
- 事業そのものに価値があるか:黒字、または顧客がついているなら、第三者に引き継ぐ(事業承継・M&A)道もある。
- 使える公的支援を確認したか:採用・定着の助成金や、省力化の補助金など、原資を補える制度がないかを調べる。
これらを整理すると、「廃業しかない」と思っていた状況に、いくつかの打ち手が見えてくることがあります。
事業を続けるための選択肢
人手不足で廃業を考えたとき、事業を続けるために検討できる代表的な選択肢を5つ紹介します。複数を組み合わせることで効果が高まります。
1. 採用のやり方を見直す
「応募が来ない」原因の多くは、求人の内容や出し方にあります。同じ職種・地域の競合より給与や条件が見劣りしていないか、求人票が求職者に伝わる言葉で書けているか、応募が来たときに素早く対応できているか――この3点を見直すだけで、応募数が大きく変わることがあります。採用は「母集団を増やす」より「取りこぼしを減らす」方が即効性が高い場合も多いです。
2. 定着率を上げて辞めない職場をつくる
採用に力を入れても、入った人がすぐ辞めてしまえば人手不足は解消しません。入社直後のオンボーディング(受け入れ・教育)の仕組み、評価や給与の納得感、相談しやすい人間関係づくりなど、「辞めない理由」を増やす取り組みが重要です。採用と定着は両輪であり、定着が改善すると採用コストそのものも下がります。
「採用・定着のどこから手をつければいいか分からない」という段階の場合は、現状分析から伴走してくれる専門家に相談すると、優先順位を整理しやすくなります。
採用課題の整理から定着の仕組みづくりまで、専門家がご支援します
「業績は好調なのに採用ができない・定着しない」という悩みは、採用市場の構造的な変化が背景にあるため、現状分析と施策の優先順位付けから始めるのが近道です。V-Spiritsの採用定着支援士は、一般社団法人採用定着支援協会と連携した全国500以上の専門家ネットワーク、累計2,000社超の支援実績をもとに、労務・財務まで含めた総合的な視点で伴走します。
3. 業務効率化・省力化で必要人数を減らす
「人を増やす」以外に、「少ない人数でも回る仕組みにする」という発想も有効です。手作業を機械化・自動化したり、ITツールで事務作業を減らしたりすれば、必要な人手そのものを減らせます。設備による省力化には、中小企業省力化投資補助金などの活用も検討できます。人を採るのが難しい時代だからこそ、省力化投資は前向きな選択肢になります。
4. 助成金・補助金で原資を確保する
採用・定着の取り組みには、厚生労働省系の雇用関係助成金を活用できる場合があります。たとえば、人材を雇い入れたとき、職場環境を整備したとき、非正規社員を正社員化したときなどに支給される助成金があります。省力化の設備投資には経済産業省系の補助金が使えることもあります。こうした公的支援は、人手不足対策にかかる費用の負担を軽くしてくれます。ただし、要件や金額は制度ごとに細かく、年度によって変わるため、最新情報の確認が欠かせません。
5. M&A・事業承継で引き継ぐ
「自分の代で続けるのは難しいが、事業自体には価値がある」という場合は、廃業ではなく第三者への承継(M&A)という道もあります。後継者不在を理由にした廃業は、従業員の雇用や取引先との関係も同時に失うことになります。引き継ぎ手を探すことで、事業も雇用も残せる可能性があります。
廃業を選ぶ場合に知っておきたいこと
検討したうえで、それでも廃業を選ぶ場合もあります。その際は、計画的に進めることが重要です。従業員への説明と再就職への配慮、取引先・金融機関への連絡、設備や在庫の処分、各種許認可の廃止届、税務上の手続きなど、やるべきことは多岐にわたります。慌てて進めるとトラブルや想定外の費用が発生しやすいため、税理士などの専門家に相談しながら、余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 赤字でも事業を続ける方法はありますか?
A. 一時的な赤字であれば、資金繰りの改善や融資、コスト構造の見直しで立て直せる場合があります。まずは原因を切り分けることが大切です。
Q. 一人で事業をしていて人を雇う余裕がありません。
A. 雇用だけでなく、業務委託や省力化ツールの活用で負担を減らす方法もあります。雇い入れ時に使える助成金もあわせて検討できます。
Q. 採用も定着も自社だけで改善できる自信がありません。
A. 採用定着の専門家に現状分析を依頼し、優先順位をつけてもらうことで、限られた時間と予算でも改善を進めやすくなります。
まとめ
人手不足は多くの中小企業・個人事業主が直面している課題であり、廃業を考える経営者が増えているのも事実です。しかし、廃業を決める前に、採用のやり方の見直し、定着率の改善、業務の省力化、助成金・補助金の活用、M&A・事業承継といった選択肢を一度並べて比較する価値は十分にあります。一人で抱え込まず、採用・定着や資金面の専門家に早めに相談することで、「続ける道」が見つかることも少なくありません。大切な事業を守るために、まずは取れる打ち手を整理することから始めてみてください。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
起業コンサルタント(R)、経営コンサルタント、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、サーティファイドファイナンシャルプランナー・CFP(R)、1 級FP技能士。大正大学招聘教授(起業論、ゼミ等)
V-Spiritsグループ創業者。税理士法人V-Spiritsグループ代表。東京池袋を本拠に全国の起業家・経営者さんを応援!「ベストセラー起業本」の著者。著書20冊、累計25万部超。経済産業省後援「DREAMGATE」で12年連続相談件数日本一。
【まるごと起業支援(R)・経営支援】
起業コンサル(事業計画+融資+補助金+会社設立支援)+起業後の総合サポート(経理 税務 事業計画書 融資 補助金 助成金 人事 給与計算 社会保険 法務 許認可 公庫連携 認定支援機関)など
【略歴】
経営者である父の元に生まれ、幼き頃より経営者になることを目標として過ごす。バブル崩壊の影響を受け経営が悪化。一家離散に近い貧婚状況を経験し、「経営者の支援」をライフワークとしたいと決意。それに役立ちそうな各種資格を学生時代を中心に取得。
同じく経営者であるメンターの伯父より、単に書類や手続を追求する専門家としてではなく、視野を広げ「ビジネス」の現場での経験を元に経営者の「経営そのもの」を支援できるような専門家を目指すようアドバイスを受け、社会人生活をスタート。
大手、中小、ベンチャー企業、会計事務所等で営業、経理、財務、人事、総務、管理職、経営陣等、ビジネスの「現場」での充実した修行の日々を送ったあと、2007年に独立。
ほかにはない支援スタイルが起業家・経営者に受け入れられ、数々の実績を残しています。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。
- 経済産業省「DREAM GATE」にて、面談相談12年連続日本一
- 補助金・助成金支援実績600件超
- ベストセラー含む起業・経営本20冊を出版(累計25万部超)
- 無料相談件数は全国から累計3,000件超
この記事を書いた人
坂井 優介(Yusuke Sakai)
起業コンサルタント® / 採用定着士 / 行政書士法人V-Spirits 補助者
1988年東京都生まれ。転勤族の父の影響で幼少期を愛知・長野・岩手・埼玉で過ごす。転入するたびに方言や文化の違いをからかわれつつも、1週間もあれば現地に溶け込む適応力を身につける。
大学在学中に公認会計士試験にチャレンジするも挫折し、アルバイト先だった埼玉の大手学習塾に就職。塾業界特有の過酷な労働環境の中でも10年間勤務を続けるが、成果を上げても給与が変わらない状況に限界を感じ、在職中に会計士試験に再挑戦。再び挫折するも、学んだ会計知識を活かせる職場を求めて転職活動を開始。2021年にV-Spiritsグループに参画し、2022年よりV-Spirits総合研究所の常務取締役に就任。
現在は、中小企業の経営者向けに補助金・助成金の支援から採用定着の仕組みづくりまで幅広く担当。「制度を使いこなす中小企業を増やす」をテーマに、現場に寄り添ったサポートを行っている。
役職:V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役 / 税理士法人V-Spirits 業務部長 / 社会保険労務士法人V-Spirits 業務部長
担当業務:経済産業省系補助金支援・厚生労働省系助成金支援・マーケティング・人事労務・採用定着支援




























