
美容室は創業融資と補助金を併用できる?開業資金の組み合わせ方と後払いの注意点【2026年版】
美容室の創業融資と補助金は併用できる?賢い組み合わせ方と資金計画の考え方
美容室の開業資金を準備するとき、「創業融資と補助金は一緒に使えるのか」「補助金がもらえるなら融資は少なくて済むのか」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。自己資金だけでは足りず、できるだけ有利に資金を集めたいと考えると、両方を組み合わせられるかどうかは大きな関心事です。
この記事では、これから美容室・ヘアサロンを開業する個人事業主・小規模事業者の方に向けて、創業融資と補助金を併用する際の考え方と、美容室ならではの組み合わせ方、注意点までを整理します。なお、融資の金利や補助金の内容は変わりやすいため、本記事は執筆時点(2026年)の情報です。申請前には日本政策金融公庫や各補助金の公式情報で最新の内容をご確認ください。
美容室の創業融資と補助金は併用できる?
結論から言うと、創業融資と補助金は併用できます。両者はまったく別の制度で、目的も仕組みも異なるため、条件を満たせば同時に活用することが可能です。実際、開業時の資金を融資で確保しつつ、対象になる経費の一部を補助金を活用する、という組み合わせは珍しくありません。
ただし「補助金がもらえるから融資はいらない」と考えるのは危険です。後で詳しく触れますが、補助金は原則として後払いのため、開業時の支払いはいったん自己資金や融資でまかなう必要があります。まずは、それぞれの性格の違いを押さえておきましょう。
創業融資と補助金は性格が違う
創業融資:開業時にまとまった資金を確保できる
創業融資は、主に日本政策金融公庫が提供する、起業時の資金調達を目的とした融資制度です。現在の主力制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。原則として無担保・無保証人で利用でき、創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金をもとに審査が行われます。
2026年6月1日現在の基準利率は、無担保・創業期(税務申告を2期終えていない場合)で年3.45〜5.15%です。創業期に無担保で利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引き下げが適用される可能性があります。元金返済の据置期間は最大5年以内で設定でき、据置期間中は利息のみの支払いとなるため、売上が安定しない開業初期の資金繰りに余裕を持たせられます。借りたお金は返済が必要ですが、開業時にまとまった資金を確保できるのが最大の強みです。
補助金:採択が必要で「後払い」が基本
補助金は、国や自治体が政策目的に沿った事業を支援するために、原則返済不要で交付するお金です。美容室が活用しやすい例としては、小規模事業者の販路開拓や店舗改装などを支援する小規模事業者持続化補助金(補助上限250万円)や、予約システムなどのITツール導入を支援するデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)などがあります。ただし、対象経費や補助上限、公募のスケジュールは公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で必ず確認してください。
補助金には、融資と大きく異なる2つの特徴があります。1つは、申請すれば必ずもらえるわけではなく、審査を経て採択される必要があること。もう1つは、多くの補助金が「後払い(精算払い)」で、対象経費をいったん自分で支払い、事業完了後の実績報告を経てから交付される点です。この「後払い」の性質が、資金計画では特に重要になります。
美容室での融資と補助金の組み合わせ方
創業融資と補助金は性格が違うからこそ、役割を分けて組み合わせると効果的です。美容室の開業では、次のような整理が考えられます。
まず、内装工事費やシャンプー台・セット面・椅子などの什器、ドライヤーやスチーマーといった開業に不可欠な設備資金や、開業後しばらくの運転資金は、まとまった額を確実に確保できる創業融資でまかなうのが基本です。そのうえで、チラシやホームページなどの販路開拓・広報にかかる経費や、予約・顧客管理システムの導入費用など、補助金の対象になりやすい部分を補助金の申請対象として組み立てます。こうすると、事業の土台となる資金は融資で固めつつ、補助金で一部の負担を後から軽減できます。どの経費がどの補助金の対象になるかは制度によって異なるため、事業内容に合わせて見極めることが大切です。
併用するときに気をつけたい3つのポイント
融資と補助金を組み合わせるときは、次の3点を押さえておくと失敗を防ぎやすくなります。
1つ目は、補助金の「後払い」に備えたつなぎ資金です。補助金は事業完了後に交付されるため、対象経費もいったんは自分で支払わなければなりません。手元資金が不足していると、補助金の対象事業を実行すること自体ができなくなります。開業時の資金を融資と自己資金でしっかり確保し、補助金は「後から戻ってくるもの」として資金計画に組み込むことが大切です。
2つ目は、同じ経費を二重に使えないことです。1つの経費に対して、補助金と融資を重ねて充てるような二重取りはできません。資金計画では、「補助金の対象にする経費」と「融資でまかなう費用」を明確に分けて整理しておく必要があります。この切り分けが曖昧だと、補助金の実績報告でつまずくことがあります。
3つ目は、スケジュールの調整です。補助金は、交付決定を受ける前に発注・契約した経費が対象外になるのが原則です。開業を急ぐあまり先に設備を発注してしまうと、補助金の対象から外れることがあります。融資の実行時期、補助金の公募・交付決定の時期、そして開業日を、あらかじめ逆算して組み立てておきましょう。
資金計画を立てる流れ
併用を前提にした資金計画は、次の順序で考えると整理しやすくなります。まず、美容室の開業に必要な資金の総額を、設備資金と運転資金に分けて洗い出します。次に、そのうち補助金の対象になりそうな経費を切り出し、残りを自己資金と融資でどうまかなうかを組み立てます。
このとき、運転資金は厚めに見積もっておくことが大切です。開業直後は売上が安定しないうえ、補助金が入金されるまでにも時間がかかります。その間の家賃・人件費・材料費を賄えるだけの余裕を持たせておくと、資金ショートを防げます。なお、敷金・礼金・仲介手数料や保証会社費用は融資の資金使途には含めません。また、経営者自身の生活費も運転資金の対象にはならない点に注意してください。
補助金の会計処理や税務上の取り扱いは、事業の状況によって異なり、専門的な判断が必要になる場合があります。具体的な処理については、税理士などの専門家に確認するようにしてください。
よくある質問
Q. 補助金が採択されれば、融資は受けなくても大丈夫ですか
多くの補助金は後払いのため、開業時の支払いには融資や自己資金が必要です。補助金は「後から一部を取り戻すもの」と位置づけ、開業資金そのものは融資・自己資金で確保しておくのが基本です。
Q. 融資の審査に、補助金の採択見込みは影響しますか
補助金はあくまで後払いで、採択が確約されているわけではないため、融資の審査は補助金に頼らない返済計画で見られるのが基本です。補助金が入る前提の甘い計画にせず、融資と自己資金で事業が回る計画を示すことが大切です。
Q. どの補助金が自分の美容室に使えるか分かりません
補助金は対象経費や要件が制度ごとに細かく決まっており、公募回によっても変わります。開業内容に合う制度があるかは、最新の公募要領を確認するか、資金調達に詳しい専門家に相談すると整理しやすくなります。
まとめ
美容室の創業融資と補助金は併用できます。開業時にまとまった資金を確保できる融資で事業の土台を固め、販路開拓や設備の一部を補助金で軽減する、という役割分担が基本です。ただし、補助金は採択が必要で「後払い」が原則のため、開業資金そのものは融資と自己資金で確保しておく必要があります。
併用を成功させる鍵は、経費を「補助金の対象」と「融資でまかなう分」に切り分け、後払いに備えたつなぎ資金とスケジュールを含めて資金計画を組むことです。なお、創業融資に「必ず借りられる」方法はありません。初めての開業で計画づくりに不安がある場合は、創業融資と補助金の両方に詳しい専門家へ早めに相談し、計画の精度を高めていきましょう。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























