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コラム

家事代行の事業計画書|創業融資に通る稼働率とスタッフ費の置き方を数字で解説

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家事代行の創業融資で使う事業計画書|稼働率とスタッフ費を数字で置く方法

家事代行サービスは、店舗も大きな設備も要らないぶん、開業のハードルが低い業種だと言われます。ところが日本政策金融公庫の創業融資を申し込む段階になると、多くの方が同じところでつまずきます。「売上をどう見積もればよいのか分からない」という壁です。

飲食店なら席数と回転率、美容室なら席数と施術単価で売上を組み立てられます。家事代行にはその型がありません。代わりに軸になるのが稼働率スタッフ費です。この記事では、2026年7月時点の情報をもとに、家事代行の事業計画書で売上とコストをどう置くと説得力が出るのかを、計算の手順にそって整理します。

家事代行の事業計画書は「稼働率」で説得力が決まる

家事代行の売上は、次の式に分解できます。

売上=スタッフ数 × 月間の稼働時間 × 時間あたりの単価

このうち審査の場でいちばん突っ込まれやすいのが、真ん中の「月間の稼働時間」です。スタッフを何人採用する予定かは書けても、そのスタッフが実際に何時間ぶん売上を生むのかは、置き方によって金額が大きく変わります。ここを「フルタイムで働く前提」で置いてしまうと、計画全体が絵に描いた餅になります。

そこで、シフトとして確保した時間のうち、実際に売上になる時間の割合を稼働率として明示します。稼働率を計画書に書いておくと、「なぜこの売上になるのか」の説明が一本の線でつながります。

稼働率を押し下げる3つの要因を織り込む

家事代行の稼働率が100%にならないのには、この業種ならではの理由があります。少なくとも次の3つは計画に織り込んでおきたい要素です。

  • 移動時間:訪問先から訪問先への移動は、原則として売上を生みません。1日に回れる件数は、エリアの密度で決まります。営業エリアを広げるほど移動が増え、稼働率は下がります
  • 当日キャンセル・訪問先の都合:シフトを確保していても、依頼側の都合で作業が発生しない日があります
  • スタッフの確保率と立ち上がり:採用したスタッフがすぐ独り立ちするとは限りません。研修期間中や同行期間中は、シフトに入っていても売上にならない時間が生じます

これらを反映した稼働率は、事業の設計によって幅が出ます。だからこそ、1つの数字で決め打ちにせず、複数のケースで試算しておくと計画が崩れにくくなります。

数字で置いてみる:稼働率10%の差が年間でいくらになるか

仮にスタッフ2名体制で、月に確保できるシフトを合計160時間、時間あたりの単価を3,000円と置いた場合を考えます(金額は計算例としての仮置きで、実際の単価はサービス内容と地域で変わります)。

  • 保守ケース(稼働率60%):実稼働96時間 × 3,000円=月28万8,000円
  • 標準ケース(稼働率70%):実稼働112時間 × 3,000円=月33万6,000円
  • 強気ケース(稼働率80%):実稼働128時間 × 3,000円=月38万4,000円

稼働率が10%違うだけで、月におよそ4万8,000円、年間では約57万円の差になります。この幅の大きさが、家事代行の事業計画書で稼働率の置き方が重視される理由です。

計画書に載せるのは標準ケースでかまいません。ただし面談で「思ったより依頼が入らなかったらどうしますか」と聞かれたときに、保守ケースでも資金が回る見通しを口頭で説明できると、計画の現実味が伝わります。定期契約とスポット依頼の比率をどう想定しているかも、あわせて整理しておくとよいでしょう。

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スタッフ費は「時給×人数」だけで置かない

もう一つの軸がスタッフ費です。ここも単純化しすぎると、開業後に資金繰りが苦しくなります。売上に直結しない支出が、いくつも隠れているためです。

  • 採用にかかる費用:求人媒体への掲載費や紹介手数料。家事代行は人が事業そのものなので、採用は一度きりではなく継続的な支出になります
  • 研修・同行期間の人件費:独り立ちするまでの時間は、支払いが発生しても売上にはなりません
  • 移動にかかる費用:交通費のほか、車両を使うなら燃料費や駐車場代がかかります
  • 備品・保険:清掃用品の補充、万一の破損に備える損害保険料など

なお、スタッフを雇用契約とするか業務委託とするかで、費用の構造も労務上の取り扱いも変わります。移動時間を労働時間としてどう扱うか、社会保険をどうするかといった論点は労働・社会保険関連の専門領域にあたりますので、具体的な設計は社会保険労務士にご相談ください。V-Spiritsグループには社会保険労務士が在籍しており、資金計画とあわせてご相談いただけます。

資金使途との関係では、従業員の給与は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。人件費が先行する家事代行では、この点を踏まえて運転資金を厚めに見ておくと、立ち上がり期の資金繰りに余裕が生まれます。

創業融資の基本数字を押さえて資金計画に落とす

売上とコストの見通しが立ったら、必要な資金額と調達方法に落とし込みます。個人事業主・小規模法人の創業時の代表的な選択肢は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に「新創業融資制度」が廃止され、現在の主力制度となっています。古い記事では旧称のまま紹介されていることがあるため、制度名は最新のものを確認してください。

  • 融資限度額:7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 基準利率:2026年6月1日現在、創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するとき年3.45〜5.15%
  • 利率引下げ:創業期の方が利用する場合、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性があります。適用可否は利用する制度・審査・条件により異なります
  • 担保・保証人:創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用できます
  • 返済期間・据置期間:新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内。据置期間はいずれも5年以内で、据置期間中は利息のみの支払いです

家事代行は設備投資が小さく、資金の中身が人件費や広告費といった運転資金に寄ります。売上が立ち上がるまでの数か月をどう乗り切るかが要になるため、据置期間の設計は資金繰り表とセットで考えておくと安心です。

自己資金と、審査で見られるポイント

自己資金についてよく誤解されているのが「開業資金の10分の1が必須」といった要件の話です。現行制度では、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧「新創業融資制度」にあった要件を、現在も必須条件のように紹介している情報が残っているだけです。

とはいえ、自己資金の額が審査の重要な判断材料であることに変わりはありません。多いほど有利になりやすいと考えて準備するのが現実的です。面談の時点で口座に確認できる形にしておきましょう。

また、創業前に自費で取得した資格や、購入した備品、テストマーケティングにかかった費用などは、「みなし自己資金」として一定範囲で評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。

審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。家事代行の実務経験がある方は、その経験を計画書のどこに反映したのかを具体的に書くと説得力が増します。未経験で始める場合は、事業経験者を役員に迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整える方向で補うのが有効です。

スケジュールは開業日から逆算する

申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月が目安です。創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書などを整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月で、合計2か月程度を見ておくと安全です。

家事代行は物件契約の制約が比較的小さい一方で、スタッフの採用と研修に時間がかかります。「融資が出てから採用を始める」と考えていると、サービス開始が想定より後ろにずれがちです。募集開始の時期と融資実行の時期を並べて逆算しておきましょう。

よくある質問

スタッフを雇わず自分ひとりで始める場合も事業計画書に稼働率は必要ですか

必要です。ひとりで始める場合こそ、1日に回れる件数と移動時間の制約が売上の上限を決めます。「週に何日、1日何件まで対応できるのか」を明示すると、売上の根拠がはっきりします。

売上計画は強気に書いたほうが融資額は増えますか

根拠のない上振れは、面談で説明できなくなるため逆効果になりやすいと考えられます。稼働率や単価の置き方に理由を添え、保守的なケースでも返済が続けられることを示すほうが、計画としての信頼性は高まります。

フランチャイズに加盟する場合も同じ考え方でよいですか

売上を稼働率で組み立てる考え方は同じです。加盟金やロイヤリティが資金計画に加わる点、本部のモデル数値をそのまま転記せず自社のエリア条件で置き直す点に注意してください。

開業後に稼働率が計画を下回ったらどうなりますか

返済が始まった後の資金繰りが厳しくなります。だからこそ据置期間の設定や、当初の運転資金を厚めに見ておく判断が重要になります。計画と実績のズレが見えた段階で、早めに金融機関や専門家へ相談することをおすすめします。

まとめ

家事代行サービスの創業融資では、事業計画書の売上根拠が採否を大きく左右します。スタッフ数と単価だけでなく、移動時間・キャンセル・研修期間を織り込んだ稼働率を明示し、保守ケースでも資金が回る見通しを持っておくことが、計画の説得力につながります。スタッフ費についても、時給だけでなく採用費や非稼働時間を含めて積み上げておきましょう。

本記事の金利・限度額などは2026年7月時点で確認できた情報にもとづいています。制度や利率は変わりやすいため、申請前には必ず日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。数字の置き方に迷われる場合は、創業融資の実務に詳しい専門家に事業計画書を見てもらうことをおすすめします。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲

中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

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