
飲食店の設備投資は補助金・リース・融資のどれ?後悔しない選び方と判断軸
厨房機器の入れ替えや券売機・セルフ設備の導入など、飲食店を続けていくうえで設備投資の資金をどう用意するかは避けて通れないテーマです。手段としてよく挙がるのが「補助金」「リース」「融資」の3つですが、どれか1つが常に正解というわけではありません。それぞれ得意な場面とつまずきやすい落とし穴が異なるため、投資の目的と自店の資金繰りに合わせて選ぶことが大切です。
この記事では、数年経営してきた飲食店が設備投資を検討するときに、補助金・リース・融資をどう比べ、どう組み合わせて考えればよいのかを、判断の軸に沿って整理します。なお、制度や金利の条件は変わりやすいため、本文の数字は執筆時点(2026年7月)の情報として確認したうえで、申請先や金融機関の最新情報も併せてご確認ください。
3つの手段は「役割」が違う
まず押さえておきたいのは、補助金・リース・融資は同じ土俴で優劣を競うものではなく、役割が異なるという点です。おおまかには次のように整理できます。
- 補助金:投資額の一部を後から補ってもらい、自己負担を軽くする仕組み。ただし原則は後払いで、審査・採択というハードルがある
- リース:初期費用を抑えて設備を使い始められる仕組み。毎月の賃貸借費用として平準化できる一方、総支払額や契約の縛りに注意が必要
- 融資:まとまった資金を先に確保できる仕組み。手元資金に余裕を持たせられるが、返済と利息の負担が生じる
「初期の持ち出しを減らしたいのか」「トータルの負担を減らしたいのか」「手元の資金繰りを厚くしたいのか」——どこを重視するかで、向いている手段が変わってきます。
補助金:自己負担を減らせるが「後払い」と「採択」が前提
補助金は、対象となる設備投資に対して費用の一部が補助される制度です。飲食店の設備投資と相性がよい代表的な補助金には、次のようなものがあります。いずれも正式名で押さえておくと、対象や条件を調べやすくなります。
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)(補助上限1,500万円):あらかじめ登録された製品から選んで導入する形式で、券売機やセルフレジ、配膳ロボットなど人手不足対策の機器と相性があります
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)(補助上限1億円):現場に合わせた省力化・自動化を、オーダーメイドで進めたい場合に検討できます
- 小規模事業者持続化補助金(補助上限250万円):販路開拓の取り組みに伴う店舗改装や設備などを、小規模事業者が幅広く対象にできます
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 革新的新製品・サービス枠:新しいメニューやサービスの開発につながる設備投資に向く枠です。補助上限は従業員規模により異なり、最大で3,500万円(大幅賃上げ特例を適用した最大規模の場合)とされています
補助金の最大のメリットは、返済不要で自己負担を圧縮できることです。一方で、設備投資の資金計画を立てるうえで見落としがちな注意点が3つあります。
1つ目は「後払い」が原則である点です。多くの補助金は、いったん自分で設備代金を支払い、後から補助金が入金される流れになります。つまり申請しても、支払いのタイミングでは全額を用意しておく必要があります。
2つ目は交付決定より前の発注は対象外になりやすい点です。「採択されそうだから」と先に契約・発注してしまうと、補助の対象にならないことがあります。設備の入れ替え時期が決まっている場合は、このスケジュールの制約が大きな論点になります。
3つ目は採択されるとは限らない点です。補助金は審査を経て採択される制度のため、申請すれば必ず受けられるものではありません。「補助金ありき」で投資計画を固めてしまうと、不採択のときに計画全体が揺らぎます。
リース:初期費用を抑えられるが契約の縛りに注意
リースは、リース会社に設備を購入してもらい、それを毎月の賃貸借費用を払いながら使う仕組みです。まとまった初期費用をかけずに新しい設備を使い始められるのが大きな魅力で、厨房機器やPOSレジなど、飲食店で導入されるケースも多くあります。
ただし、初期費用の軽さだけで判断すると見落としがちなデメリットもあります。融資と比較して検討するときは、次の点も併せて確認しておくと安心です。
- 連帯保証人が必要になる
- 機器の所有権が持てない
- 契約期間中の中途解約が難しい
- 故障時の修理負担が借主側になる契約が多い
特に「中途解約が難しい」点は、業態変更や店舗の移転を考える可能性がある飲食店では見過ごせません。また、リース料の総額は設備を一括購入する場合より大きくなることが一般的です。リースは月々の負担を平準化できる代わりに、トータルの支払いや契約の自由度で制約が生じる、という理解が必要です。なお、リース費用の会計上・税務上の扱いは個別の事情で変わるため、資産計上や経費処理の判断は税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
融資:手元資金を厚くできるが返済負担を見込む
融資は、金融機関からまとまった資金を借り入れて設備投資にあてる方法です。設備代金を先に確保できるため、補助金の後払いを待つ間の立て替えにも使えますし、設備投資と同時に運転資金の余裕も持たせやすいのが特徴です。
創業期や事業の初期段階では、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」などが代表的な選択肢になります。政府系金融機関のため民間で対応しづらいケースにも取り組みやすく、原則として無担保・無保証人での借り入れが可能とされています。据置期間を設けられる制度もあり、返済開始までの負担をやわらげられる場合があります。
金利については、2026年6月1日現在、無担保・創業期(税務申告を2期終えていない場合)に利用するときの基準利率が年3.45〜5.15%とされています。数年経営してきた店舗が設備資金を借りる場合は、適用される制度や条件が異なることもあるため、実際の金利や返済期間は申請先で確認することが必要です。いずれにしても、融資は返済と利息の負担が生じるため、投資後の売上や利益の見通しと返済計画がかみ合っているかが判断のポイントになります。
どう選ぶ?投資目的別の判断軸
3つの手段は排他的なものではなく、目的に応じて組み合わせるのが実務的です。判断の軸を整理すると、次のように考えられます。
- 自己負担を最も減らしたい:まず補助金の対象になるかを確認する。ただし後払い・交付決定前発注NG・採択の不確実性を前提に、支払い時の資金を融資などで確保しておく
- 初期費用を抑えて早く使い始めたい:リースが候補になる。ただし総支払額と中途解約・修理負担の条件を確認する
- 手元資金を厚くして経営の安定を優先したい:融資でまとまった資金を確保する。返済計画と投資回収の見通しをセットで立てる
- 省力化・人手不足対策が目的:券売機・セルフレジ・配膳ロボットなどは中小企業省力化投資補助金の対象になり得るため、補助金を軸に検討する
よくある組み立て方は、「補助金で自己負担を軽くしつつ、後払いの立て替え分は融資でカバーする」という補助金と融資の併用です。リースについても、補助金の対象になりにくい設備をリースでそろえ、対象になる設備は補助金や融資でまかなう、といった役割分担が考えられます。大切なのは、手段ありきではなく、投資の目的と自店の資金繰りから逆算して選ぶことです。
よくある質問(FAQ)
Q. 補助金が採択されるまで設備投資は待つべきですか?
設備の入れ替え時期に余裕があるなら、交付決定を待ってから発注するのが原則です。多くの補助金は交付決定前の発注が対象外になりやすいためです。ただし、故障などで待てない事情がある場合は、補助金に頼らず融資やリースで対応する判断も必要になります。スケジュールに制約があるときほど、早めに手段を検討しておくと安心です。
Q. リースと融資はどちらが得ですか?
一概にどちらが得とは言えません。初期費用を抑えて月々の負担を平準化したいならリース、まとまった資金を手元に置いて所有権も確保したいなら融資が向きます。ただしリースは総支払額が大きくなりやすく、中途解約が難しいなどの制約があるため、賃貸借費用の総額や契約条件も含めて比較することをおすすめします。
Q. 補助金と融資は同時に使えますか?
役割が異なるため、組み合わせて使うのが一般的です。補助金は後払いで自己負担を軽くする仕組み、融資は資金を先に確保する仕組みなので、「融資で支払い資金を用意し、後から入る補助金で負担を圧縮する」という組み立てが実務的です。ただし、補助対象経費と融資の資金使途の整理が必要になるため、資金計画は専門家に相談しながら固めると進めやすくなります。
まとめ
飲食店の設備投資における補助金・リース・融資は、優劣ではなく役割の違いで選ぶものです。補助金は自己負担を減らせる反面、後払い・交付決定前発注NG・採択の不確実性という前提があります。リースは初期費用を抑えられる代わりに、総支払額や中途解約・修理負担の制約があります。融資は手元資金を厚くできる一方で、返済と利息の負担を見込む必要があります。
実際には、これらを組み合わせて自己負担と資金繰りのバランスを取るのが現実的です。どの設備にどの手段を当てるかは、投資の目的と自店の状況によって変わります。判断に迷うときは、補助金の対象可否や資金計画の組み立てを含めて、早い段階で専門家に相談してみることをおすすめします。
【無料相談のご案内】
弊社では、補助金専門行政書士法人V-Spiritsが補助金支援を行っております。元補助金審査員の三浦を中心とした各種専門家チームが全面的にサポートいたします。このケースは補助金の対象になるのか?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。無料相談も行っているので、ぜひいちどご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
三浦高/Takashi Miura
元創業補助金(経済産業省系補助金)審査員・事務局員
中小企業診断士、起業コンサルタント®、
1級販売士、宅地建物取引主任者、
融資・資金調達コンサルタント
行政書士法人V-Spirits 補助者
産業能率大学 兼任教員
2024年現在、各種補助金の累計支援件数は300件を超える。
融資申請のノウハウも蓄積し、さらに磨きを掛けるべく日々事業計画書に向き合っている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























