
マツエクサロンの開業資金は創業融資でどう組む?設備・材料・運転資金の分け方
マツエクサロン開業の資金計画と創業融資|美容所の開設から逆算する申請の順番
サロン勤務のアイリストとして経験を積み、そろそろ自分の店を持ちたい。そう考えたとき、最初につまずきやすいのが「開業資金をいくら、どうやって用意するか」です。
マツエクサロンは、飲食店や大型のエステサロンに比べると初期投資を抑えやすい業態です。そのぶん「そんなに借りなくても始められそう」と考えて資金計画を粗く作ってしまい、開店後の運転資金が足りなくなるケースが少なくありません。また、まつげエクステのサロンは美容所としての手続きが必要になるため、内装工事や融資申請のスケジュールが手続きに引っ張られる点も見落とされがちです。
この記事では、マツエクサロンの開業資金を3つの費目に分けて積み上げる方法と、美容所の開設手続きから逆算した融資申請の順番を整理します。制度の数字は2026年8月時点の情報にもとづくもので、金利や条件は変わることがあるため、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。
開業資金は「設備/材料・消耗品/運転資金」の3つに分けて積み上げます
資金計画を「だいたい○百万円くらい」とざっくり置くと、審査でも自分の判断でも根拠が持てません。次の3つの箱に分けて積み上げると、必要額と借入額の説明がしやすくなります。
1. 設備資金
店舗の内装・区画工事、施術ベッドやチェア、器具の消毒設備、拡大鏡や施術用ライト、受付まわりの什器、看板などが入ります。テナントを借りる場合は物件取得費もここに関わってきます。マツエクサロンは1〜2席から始められることが多く、席数をいくつにするかで設備資金は大きく変わります。
2. 材料・消耗品
グルー、エクステの毛材、ツイーザー、リムーバー、テープ、使い捨ての衛生用品などの初期在庫です。ここは1点あたりの単価が小さいため計画から抜け落ちやすいのですが、施術のたびに減っていく費目で、開店直後から継続的に出ていきます。取り扱うメニュー(シングルラッシュ、ボリュームラッシュ、ラッシュリフトなど)を増やすほど、そろえる材料の種類も増えます。
3. 運転資金
家賃、水道光熱費、スタッフを雇う場合の人件費、広告宣伝費、予約システムの利用料など、毎月出ていく費用です。予約が埋まるまでには時間がかかるため、軌道に乗るまでの数か月分を見込んでおく必要があります。資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提となるため、判断に迷う支出があれば申請先や専門家に確認しながら整えるのが確実です。
この3分けが効いてくるのは、借入の設計です。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内と分かれています(据置期間はいずれも5年以内)。設備資金と運転資金をまとめて「開業資金」として申し込むより、費目ごとに切り分けて申請したほうが、返済期間の設計に無理が出にくくなります。
中心になる制度は日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」
個人事業主として開業するアイリストにとって、まず検討先になるのが日本政策金融公庫の創業融資です。主力となる制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、2024年3月までは「新規開業資金」という名称でした。無担保・無保証の特例だった「新創業融資制度」は2024年3月に廃止されており、現在は各融資制度に無担保・無保証の枠組みが組み込まれています。
融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、マツエクサロンの規模であれば上限が問題になることはほとんどありません。
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
もう一つの選択肢が、自治体の制度融資です。こちらは自治体・金融機関・信用保証協会の三者が連携する仕組みで、実際にお金を出すのは民間の金融機関、信用保証協会は保証を付ける役割を担い、自治体が利子補給などで関与します。窓口や手続きが公庫とは異なるため、開業予定地の自治体の制度も早めに調べておくと選択肢が広がります。
美容所の開設手続きと融資申請は並行で進めます
マツエクサロンの資金計画で見落とされやすいのが、手続きと融資のスケジュールがかみ合っていないケースです。
まつげエクステの施術は、まつ毛への薬剤や接着剤の使用を伴うため、美容師免許を持つ人が行う必要があるとされています。そして施術を行う場所は、美容所として保健所に開設の届出をし、確認を受けたうえで営業を始める流れが一般的です。作業室の区画、器具の消毒設備、採光・換気といった構造設備の基準は自治体の条例で定められているため、内装のプランが基準を満たしていないと、工事のやり直しが発生します。
一方で融資のほうは、書類提出後おおむね3週間〜1か月で実行されるのが目安です。創業計画書、自己資金のエビデンス、見積書などを整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。
この2つを重ねると、順番は次のようになります。
- 物件を決める前後に保健所へ事前相談:構造設備の基準を確認し、内装プランに反映する
- 内装・設備の見積を取る:ここで設備資金の金額が固まり、融資申請の根拠資料になる
- オープン予定日の約2か月前までに融資を申し込む:見積書がそろってから申し込む流れが自然です
- 工事完了後に保健所の確認を受け、営業開始
保健所の事前相談を後回しにすると、内装の見積が確定せず、融資申請そのものが止まります。手続きと資金調達は別々のタスクではなく、1本のスケジュールとしてつなげて考えてください。
売上根拠は「席数×回転×単価×リピート周期」で積み上げます
創業計画書で最も差が出るのが、売上予測の作り方です。「月商○○万円を目指します」と目標だけを書くと、根拠のない数字と受け取られてしまいます。マツエクサロンの場合は、次の要素に分解すると説明しやすくなります。
- 席数:1席なのか2席なのか。自分ひとりで回すのか、スタッフを雇うのか
- 1人あたりの施術時間:メニューによって変わります。装着本数の多いメニューほど時間がかかり、1日にこなせる人数が減ります
- 1日の施術可能人数と営業日数:施術時間と営業時間から、物理的な上限が決まります
- 客単価:メニュー構成と、オプション(ラッシュリフト、まつげ美容液の物販など)をどう組み合わせるか
- リピート周期:まつげエクステは付け替えの周期が比較的短く、リピート前提のビジネスです。新規客が何か月目からリピートに乗るかを織り込むと、売上の積み上がり方が現実的になります
ここで大事なのは、開店初月から予約が埋まる前提で組まないことです。新規集客にどれくらいの期間と広告費をかけるのか、そのあいだの資金をどう持たせるのかまで書けていると、計画の説得力が変わります。
自己資金とみなし自己資金を整理しておきます
公庫の創業融資では、制度上、自己資金の額や割合の要件は決まっていません。旧「新創業融資制度」にあったような固定の要件は、現行制度にはないためです。ただし自己資金の額は審査の重要な判断材料になり、多いほど有利になりやすい傾向があります。「○分の1が必須」といった要件があるわけではない、と理解しておいてください。
自己資金は、面談の時点で口座に確認できる形にしておきます。
あわせて整理しておきたいのが、みなし自己資金です。創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、一定範囲で自己資金として評価されることがあります。アイリストの場合、開業準備として先に買った施術用の機材や練習用の材料、講習の受講費などが該当し得ます。領収書を必ず保管しておきましょう。
創業期の審査で見られるポイント
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。実績がない分、計画の作り込みが結果を左右するという考え方です。
一方で、創業融資だからといって決算書をまったく見ないわけではありません。法人を設立して開業する場合、一期でも決算が締まっていればその決算書が確認されますし、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。該当する場合は、その内容も踏まえて説明できるよう整理しておくと安心です。
また、アイリストとしての施術経験はあっても、店舗経営そのものが初めてというケースは多くあります。経験の不足を補う方法として、事業経験者を役員として迎えるなど、事業運営に直接関わる体制を整えることが有効です。
よくある質問
Q. 自宅の一室をサロンにする場合でも融資は受けられますか
A. 物件の形態だけで融資の可否が決まるわけではなく、事業計画の内容や自己資金などをもとに総合的に判断されます。ただし自宅サロンの場合も、美容所としての構造設備の基準を満たす必要があり、居住スペースとの区画などが求められることがあります。基準は自治体の条例によって異なるため、開業予定地の保健所に事前相談しておいてください。
Q. 開業前に機材や材料を買ってしまいました。自己資金として見てもらえますか
A. 創業前に自費で購入した設備や備品は、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。領収書を保管し、何にいくら使ったかを説明できる状態にしておいてください。
Q. 一度審査に落ちると、次回の審査に影響しますか?
A. 日本政策金融公庫は個人信用情報機関に加盟していますが、審査に落ちたこと自体が信用情報に記録されることはありません。一方で、公庫内には審査に落ちた記録が残ります。そのため次の審査では、落ちたことを考慮に入れた形になるため、慎重に扱われる可能性があります。
Q. 否決された直後にすぐ再申請してもよいですか?
原因を潰さずに再申請しても、結果は変わりません。自己資金不足、事業計画の説得力不足、業界未経験への対策不足など、否決の理由を具体的に特定し、そこを改善したうえで再申請することが必要です。
まとめ
マツエクサロンの開業資金と創業融資について、要点を整理します。
- 開業資金は「設備資金/材料・消耗品/運転資金」の3つに分けて積み上げます。特に材料・消耗品は計画から抜けやすい費目です
- 設備資金は返済期間20年以内、運転資金は原則10年以内と条件が異なるため、費目を分けて申請すると設計に無理が出にくくなります
- 中心となる制度は日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」。限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です
- 美容所の開設手続きと融資申請は並行して進めます。保健所への事前相談が遅れると内装の見積が固まらず、融資申請まで止まります
- 売上根拠は席数・施術時間・客単価・リピート周期に分解して積み上げます。開店初月から予約が埋まる前提の計画は避けます
- 自己資金に制度上の額・割合の要件はありませんが、重要な判断材料です。みなし自己資金になり得る支出は領収書を残しておきます
制度や金利は変わりやすいため、実際に動き出す段階では最新の公式情報を確認しながら進めてください。手続きと資金調達の順番に不安があれば、早めに専門家に相談することをおすすめします。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























