
コンサルタントの売上予測、顧客単価×契約件数で創業計画書を埋める手順
独立コンサルタントとして開業したばかりの方の中には、創業計画書の「事業の見通し」欄に書く売上予測の数字が、どこから手をつければよいか分からず止まってしまう方が少なくありません。飲食店や小売店のように客単価×客数×営業日数という公式をそのまま当てはめられない業種だからです。
この記事では、コンサルタント業ならではの事情を踏まえ、顧客単価と契約件数から売上予測を積み上げる手順を整理します。
コンサルタントの売上予測は、他業種の作り方をそのまま使えない
「客単価×客数×営業日数」が当てはまらない理由
店舗型のビジネスでは、客単価に来店客数と営業日数を掛け合わせる公式がよく使われます。しかしコンサルタント業には、店舗も来店客数もありません。売上は「誰と、どんな条件で契約するか」の積み上げで決まるため、契約単位で組み立てる必要があります。
在庫も仕入もない=売れる量の上限は自分の稼働時間になる
コンサルタント業は在庫を持たず、仕入れも発生しません。その代わり、提供できる量には物理的な上限があります。1人で対応できる時間には限りがあるため、契約件数をどこまでも増やせるわけではありません。この上限を先に押さえておくことが、売上予測の説得力を左右します。
売上予測を作る前に押さえておきたい前提
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。数字そのものの正しさよりも、その数字をどう説明できるかが重要になります。
売上予測は、創業してすぐの時期と、事業が軌道に乗った後とで分けて考えます。開業初月から満稼働の数字を書くのではなく、段階を追って積み上がっていく形にする方が、実態に近い計画になります。
ステップ1:提供メニューを契約形態ごとに分ける
コンサルタントの契約には、主に3つの形があります。まずこの3つを分けて整理します。
月額顧問(リテナー)契約
毎月定額で継続的に相談・支援を行う契約です。一度契約すると翌月以降も売上として積み上がっていく特徴があります。
スポット・時間単位のコンサルティング
単発の相談や、時間単位で提供するコンサルティングです。契約が終わればそこで完結するため、翌月はまたゼロから積み直す必要があります。
プロジェクト単位の一括契約
期間や成果物を決めて一括で請け負う契約です。プロジェクトの期間に応じて売上が計上されるタイミングが変わります。
ステップ2:契約形態ごとに顧客単価を決める
単価の根拠として示せるもの
前職での実績、同業者の相場、これまでに受けた見積もり相談などを根拠に、契約形態ごとの単価を決めます。
リテナーとスポットを平均して1つの単価にしない
リテナーとスポットは積み上がり方が違うため、平均して1つの単価にまとめてしまうと、売上予測の根拠があいまいになります。契約形態ごとに単価と件数を分けて計算し、最後に合算する形にします。
ステップ3:契約件数を「稼働可能件数」から逆算する
1件あたりに必要な稼働時間を出す
契約形態ごとに、1件あたりどれくらいの稼働時間が必要かを見積もります。
営業・移動・資料作成の時間を差し引く
1か月の稼働可能時間の全てをコンサルティング提供時間に充てられるわけではありません。営業活動、移動、資料作成などの時間を差し引いたうえで、実際に提供できる時間を出します。
積み上げた件数が上限を超えていないか確認する
ステップ2で決めた単価に件数を掛け合わせる前に、その件数が稼働可能な範囲に収まっているかを確認します。ここで上限を超えていれば、件数か単価のどちらかを見直します。
ステップ4:見込み客を確度で分けて創業当初に反映する
確度の段階(契約済み/内諾/打診段階/リストのみ)
創業当初の売上予測には、既に契約済みの案件、内諾を得ている案件、打診している段階の案件、名刺交換をしただけのリストなど、確度の異なる見込み客が混ざりがちです。確度の段階を分け、確度の高いものから優先して創業当初の数字に反映します。
前職のネットワークを当て込むときに確認しておきたいこと
前職の顧客とのつながりを見込み客として数字に組み込む場合は、前職との契約に競業避止や守秘義務に関する取り決めがないかを、あらかじめ確認しておく必要があります。契約内容によっては、そのまま引き継げない場合もあります。
ステップ5:創業当初と軌道に乗った後の2段階に落とす
継続契約は積み上がり、スポットは毎月積み直す
リテナー契約は月を追うごとに積み上がっていく一方、スポット契約は毎月ゼロから件数を積み直す必要があります。この違いを踏まえて、創業当初は保守的に、軌道に乗った後は契約形態のバランスを見ながら伸ばしていく、という2段階の数字にします。
売上が立ってから入金までのずれも見ておく
契約が成立し売上が立っても、実際の入金はそこから一定期間後になることがあります。売上予測とあわせて、入金のタイミングにもずれがあることを意識しておくと、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
ステップ6:経費と利益まで通して整合をとる
コンサルタント業は仕入れがないため、売上原価はほとんど発生しません。その分、外注費や交通費、広告費といった経費と、そこから残る利益の説明が計画の中心になります。売上予測の数字と、経費・利益の見通しに矛盾がないかを最後に確認します。
売上予測の自己チェックリスト
- 契約形態(リテナー・スポット・プロジェクト)ごとに単価と件数を分けているか
- 契約件数が、営業・移動・資料作成の時間を差し引いた稼働可能件数を超えていないか
- 見込み客を確度の段階で分け、確度の高いものから創業当初の数字に反映しているか
- 前職の顧客を当て込む場合、契約上の取り決めを確認したか
- 創業当初と軌道に乗った後を分けて、開業初月から満稼働の数字にしていないか
参考:創業融資の基本条件(2026年6月1日現在)
融資限度額・返済期間・据置期間
創業融資の融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円、制度による)です。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、設備資金は返済期間20年以内・据置5年以内、運転資金は返済期間原則10年以内・据置5年以内という数字が示されています(利用する制度により異なります)。
基準利率と創業期の利率引下げ
2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。
申請から融資実行までの目安
申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月が目安です。創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの準備を含めると、合計で約2か月を見込んでおくと安全です。
V-Spiritsの創業融資支援実績
V-Spiritsグループは、これまでに712件(2026年6月時点)の創業融資を支援してきました。飲食店や美容関連、フランチャイズをはじめ、幅広い業種の創業者をサポートしており、コンサルティング業も51件(構成比7.2%、2026年6月時点)含まれています。
よくある質問
Q. 顧客がまだゼロでも売上予測は書けますか
はい。審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。顧客がまだいない段階でも、契約形態ごとの単価と稼働可能件数から積み上げる形で売上予測を作ることができます。
Q. 売上予測が計画どおりにならなかったらどうなりますか
売上予測はあくまで見通しであり、必ずその通りになると保証するものではありません。数字の正しさよりも、その数字をどのような根拠で組み立てたかを説明できることが重要です。
Q. 創業融資でも決算書は見られますか
創業融資だからといって、決算書を見ないわけではありません。新しく設立した会社であっても、一期でも決算が締まっていれば、その決算書が確認されます。また、代表者が他に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。
まとめ
コンサルタントの売上予測は、店舗型ビジネスの公式をそのまま使うのではなく、契約形態ごとに単価を決め、稼働可能件数から件数を逆算し、見込み客を確度で仕分けたうえで、創業当初と軌道に乗った後の2段階で積み上げることが基本になります。数字そのものより、その数字を説明できる状態を作ることを意識して、創業計画書の売上予測欄を埋めてみてください。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

この記事を監修した人

中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























