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コラム

弁護士・弁理士の独立資金は事務所の形で決まる|設備資金と運転資金の割り付けと返済期間

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弁護士・弁理士が独立するときの創業融資|事務所の開き方3タイプで変わる資金設計

独立を考え始めた弁護士・弁理士の方から、「開業にいくら必要ですか」というご質問をよくいただきます。ただ、金額そのものより先に決まるものがあります。それは事務所をどの形で開くかです。開き方が変わると、必要な資金の総額だけでなく、そのお金の性質が変わり、結果として創業融資の組み方まで変わります。この記事では、開設形態を3つに分けて、資金使途の区分と返済期間の設計、そして弁護士・弁理士に固有の見落としやすい支出を整理します。なお、記載している制度・数字は執筆時点のものです。

資金は「いくら必要か」より先に「事務所をどの形で開くか」で決まる

開設形態が変わると、お金の性質が変わります

創業融資では、借りたお金の使いみち(資金使途)を設備資金運転資金に分けて計画します。ここが重要で、後述するとおり、この区分によって返済できる期間の上限が変わります。そして設備資金と運転資金のどちらが厚くなるかは、事務所の開き方でほぼ決まります。

3つのタイプを並べて考える

  • タイプA:自宅や小規模なスペースで始める — 最初にまとまって出る費用は小さく、資金の中心は運転資金になります
  • タイプB:既存の事務所の一部を借りて独立する — 席料や共益費といった費用が、受任の有無にかかわらず毎月出ていきます。資金はやはり運転資金が中心です
  • タイプC:独立した賃貸オフィスを構える — 物件の取得や内装、什器の整備で設備資金が厚くなります

タイプ別に見る資金の組み立て方

タイプA|自宅・小規模スタート

初期に大きな支出が出にくい分、事業が回り始めるまでの期間を支える運転資金が主役になります。設備といえる支出は事務機器や書籍、業務用ソフトなど限られるため、融資の申込額も運転資金に寄ります。

タイプB|既存の事務所の一部を借りて独立する

いわゆる「軒先を借りる」形の独立です。ただし、この形は実態がかなり多様で、席料と共益費だけを納める契約もあれば、共同受任を前提に報酬を分ける形もあります。何をどこまで負担するかは契約内容によって異なりますので、独立採算として自分の事業をどこから区切るのかを先に整理してください。創業融資の対象になるかどうかも含め、判断に迷う場合は申請先や専門家に確認しながら進めるのが確実です。

タイプC|独立した賃貸オフィスを構える

3つのなかで最も設備資金が厚くなる形です。物件の取得にかかる費用、内装や什器、通信環境の整備などが必要になります。信用面での見え方を重視して最初からこの形を選ぶ方もいますが、その分だけ開業直後の固定費も重くなります。設備資金が大きい分、返済期間を長く取れる可能性があるのはこのタイプの利点です。

資金使途の区分で、返済期間が変わります

設備資金と運転資金は、返済期間の上限が異なります

運転資金とは、事業を回していくために必要な資金のことです。人件費や役員報酬は、事業活動に必要な経費として運転資金の対象になります。資金使途はあくまで「事業に必要な支出」であることが前提のため、個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えることをおすすめします。

新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合の例として、返済期間は次のように示されています(利用する制度により異なります)。

  • 設備資金:返済期間20年以内/据置期間5年以内
  • 運転資金:返済期間は原則10年以内/据置期間5年以内

つまり、タイプCのように設備資金の比重が高い計画は長期で組める余地があり、タイプA・Bのように運転資金が中心の計画は返済期間が短くなりやすい、という違いが出ます。同じ金額を借りても、毎月の返済額は変わってくるわけです。

据置期間は5年以内で設定できます

元金の返済を待ってもらう据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いになります。受任が積み上がるまでに時間がかかる独立初期とは、相性のよい仕組みです。

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創業融資の基本条件と申請スケジュール

主な制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」です

日本政策金融公庫の主力制度は新規開業・スタートアップ支援資金です。2024年3月までは「新規開業資金」という名称で、2024年4月から現在の名称に改称・拡充されています。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、担保・保証人は原則として無担保・無保証人で借入が可能とされています。

対象となる「創業期の方」とは、新たに事業を始める方、または事業開始後に税務申告を2期終えていない方を指します。勤務弁護士・勤務弁理士として給与を受け取っていた期間は、事業としての税務申告には当たりません。

限度額・基準利率・引下げ

2026年6月1日現在の基準利率は、創業期(税務申告を2期終えていない時期)に利用する場合で年3.45〜5.15%です。創業期の方が利用する場合は、原則0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げが適用される可能性がありますが、適用可否は利用する制度や審査・条件により異なるため、必ず下がると考えず申請先で確認してください。元金返済の据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いとなります。

「新創業融資制度」「自己資金は10分の1」は現行制度の話ではありません

独立の情報を集めていると、いまだに「新創業融資制度」を前提にした解説に行き当たります。この制度は2024年3月に廃止されており、そこにあった自己資金の10分の1要件のような固定要件は、現行制度にはありません。自己資金の額が審査の重要な判断材料になることは変わりませんが、割合が要件として決まっているわけではない、と理解しておいてください。

申請から実行までの目安

申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間〜1か月程度が目安です。創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、申請準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。

見落とされやすい3つの落とし穴

1. 会費などの固定費は、受任がなくても毎月出ていきます

登録・入会にかかる費用や月々の会費は、所属する会や登録区分によって異なります。共通しているのは、受任がゼロの月でも同じように発生するという点です。開業前に自分の所属会の金額を確認し、事務所の家賃や通信費と並べて「毎月必ず出ていく額」を把握しておいてください。この額が、運転資金を何か月分見ておくべきかの土台になります。

2. 着手金・報酬の入金サイクルは、案件の長さに引きずられます

訴訟や審判のように解決までに時間がかかる案件では、着手金を受け取ってから報酬が入るまでの間隔が長くなります。受任件数が伸びていても、手元の資金が薄い時期が続くことは珍しくありません。売上の見込みではなく、入金がいつ立つのかで資金繰りを見ておく必要があります。

3. 弁理士は、特許庁に納める手数料などの立替が先に出ます

弁理士の場合、自身の報酬とは別に、特許庁への出願手数料や審査請求料などが発生します。これらを事務所がいったん立て替え、後から報酬とあわせて請求する形をとることがあり、その分の資金が先に出ていきます。件数が増えるほど立替の残高も膨らむため、運転資金を考えるうえでは見過ごせない要素です。なお、立替金の会計処理や税務上の扱いについては、税理士にご相談ください。

よくある質問

弁護士法人・弁理士法人を設立してから融資を申し込むべきですか

順番には注意が必要です。個人事業として営んでいる事業をそのまま法人化する「法人成り」の場合、原則として創業融資の対象外となり、通常の融資の扱いになります。一方、個人で営んでいる事業とは別の新しい事業を行う法人を新たに設立する場合は、その新法人にとっては創業にあたるため、創業融資を使うことができます。ご自身のケースがどちらに当たるかは、申請前に確認しておいてください。

独立前に買ったパソコンや書籍は自己資金として見てもらえますか

創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入費用などは、一定範囲で自己資金として評価されることがあります。領収書は必ず保管しておいてください。

創業融資なら決算書は関係ありませんか

そうとは限りません。新設した法人でも一期でも決算が締まっていればその決算書を見ますし、代表者が他に会社を経営している場合は、その会社の決算書も審査の材料になります。

まとめ

弁護士・弁理士の独立で最初に決めるべきは、金額ではなく事務所の形です。自宅・小規模なら運転資金が中心になり、既存事務所の一部を借りる形は契約内容で負担が大きく変わり、独立賃貸オフィスは設備資金が厚くなります。そして設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内という返済期間の違いがあるため、同じ借入額でも毎月の負担は変わります。会費などの固定費、案件の長さに左右される入金、弁理士であれば立替の資金——この3点を運転資金の月数に翻訳したうえで、資金使途を組み立ててみてください。制度や金利は変わりやすいため、申請時は必ず最新の情報をご確認ください。

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小峰

この記事を書いた人

小峰精公/Kiyotaka Komine

元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人

多胡藤夫/Fujio Tago

元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。 約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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この記事を監修した人


中野裕哲/Nakano Hiroaki

税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授

税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。

経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。

【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。

中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。

【主な実績】

  • 起業支援・経営支援の豊富な実績
  • 起業相談件数3,000件以上
  • 資金調達支援1000件以上
  • 大企業Webサイト多数監修
  • 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)

V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。

税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。


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