
トリミングサロンの内装・機器費は創業融資の対象か|見積を4つに割り分けて資金使途に落とす手順
トリミングサロンの内装費と機器費を創業融資でどう通すか|見積を分ける4つの手順
トリミングサロンの開業準備を進めると、最初に手元に届くのが内装業者の見積書です。そこには「内装工事一式」と書かれた行が並び、金額だけが大きく載っています。この状態で公庫の窓口に持っていくと、内装費と機器費のどこまでが創業融資で賄えるのかという話が、なかなか前に進みません。
創業融資の申し込みで問われているのは「内装費は対象か、対象外か」という○×ではなく、その支出が事業に必要なものだと見積書のどの粒度まで説明できるか、という部分です。ここでは、賃借物件でトリミングサロンを開こうとしている方に向けて、手元の見積を分解して資金使途に落とすまでを4つの手順で整理します。数字は2026年8月時点の社内資料にもとづく内容で、制度・金利は変わりやすいため申請時には最新の公式情報をご確認ください。
前提:資金使途は設備と運転の2区分しかない
創業融資の資金使途は、設備資金と運転資金の2つに分かれます。内装工事も機器の購入も、事業に必要な支出であれば設備資金の側に入ります。一方で、シャンプー剤やタオルのように開業後に繰り返し買うものは運転資金の側です。
この分け方は、書類上の分類にとどまりません。新規開業・スタートアップ支援資金を利用する場合、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金は原則10年以内とされています。据置期間はどちらも5年以内で、据置中は利息のみの支払いです。融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金は4,800万円という枠があります。
つまり、同じ総額でも内装と機器と消耗品の割り振り方によって、返済にかかる年数と月々の負担が変わる場合があります。見積を分けるという作業は、書類を整えるためではなく、返済の形を決めるための作業です。
手順1:見積書を4つの箱に割り分ける
最初にやるのは、業者から受け取った見積を次の4つに分けることです。
- 造作(物件に残る工事):間仕切り、給排水の配管、電気容量の増設、床の防水、換気設備。退去するときに置いていく部分です。
- 機器・什器(動産):トリミングテーブル、シャンプー台、ドライヤー、ケージ、温浴機。移設できて、中古市場で値が付く部分です。
- 消耗品:シャンプー剤、替刃、タオル、ペーパー類。開業後も繰り返し買う支出です。
- 工事以外の費用:設計料、看板、広告物の制作費など、工事とは性格が違うもの。
実務でつまずくのは1つ目と2つ目の境目です。内装業者の見積は、シャンプー台の設置と給排水工事がまとめて「一式」で書かれていることがあります。この形のままだと、どこまでが物件に残る工事で、どこからが持ち出せる機器なのかを説明できません。業者に依頼して、機器と工事を行ごとに分けてもらうところから始めます。
手順2:機器は型番・数量・単価・納期まで書ける形にする
公庫の申し込みで用意する書類は、創業計画書・自己資金エビデンス・見積書・本人確認書類などが中心です。見積書がこの並びに入っているとおり、金額の根拠は書面で見られます。
機器については、何をいくつ、いくらで、いつ入れるのかまで書ける状態にします。中古で入手する予定のものがあれば、その価格の根拠と、あと何年使える見込みなのかを自分の言葉で説明できるようにしておきます。相見積を取っておくと、金額の妥当性の話が早く済みます。
あわせて整理しておきたいのが、勤務時代に自費で買い揃えたハサミやクリッパー、受講した講習の費用です。創業前に自費で取得した資格・設備や備品の購入・テストマーケティング費用などは、みなし自己資金として一定範囲で評価されることがあります。領収書が残っているかどうかで扱いが変わるため、手元の書類を先に確認しておきます。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
審査する側から見ると、設備は「必要かどうか」だけでなく「そのスペックが必要かどうか」まで見ています。業種に対して過剰な性能の什器や設備が並んでいると、そこが希望額から削られる形になりやすいのです。開業時は良いものを揃えたくなりますが、日々の施術で本当に使う仕様かどうかを、機種を決める前に一度整理しておくと話が早く進みます。
手順3:造作は「使う年数」と返済期間を並べて見る
造作は設備資金として扱えますが、機器とは性格が違います。物件を出るときに残していく部分なので、手元に資産としては残りません。
ここで確認するのは、賃貸借契約の期間と、返済が続く期間の長さです。設備資金の返済期間は20年以内で設定できますが、店舗の契約が数年単位であれば、造作を使える年数と返済の年数がずれます。もちろん契約は更新していくものですが、内装にどこまでかけるかを決めるときには、この2つの年数を並べて見ておくと判断の材料が増えます。
据置期間は5年以内で設定でき、据置中は利息のみの支払いです。開業直後に工事費の返済が本格的に始まると資金繰りが窮屈になるため、据置をどれくらい置くかも、内装の金額を決める段階で一緒に考える論点になります。
手順4:内装に寄せすぎて運転資金が痩せていないかを見る
4つ目は、割り振ったあとの全体を見る手順です。
トリミングサロンは、指名や口コミで予約が積み上がるまでに時間がかかります。開業直後から席が埋まる前提で資金を組むと、内装が仕上がった時点で手元の現金が薄いという状態になりかねません。内装のグレードを1段上げる判断は、その分だけ運転資金を削る判断でもあります。
資金使途はあくまで事業に必要な支出であることが前提です。個別の支出が資金使途として認められるかどうか判断に迷う場合は、申請先や専門家に確認しながら計画を整えるほうが確実です。
時間の見積もりも合わせて確認します。申請から融資実行までは、書類提出後おおむね3週間から1か月程度が目安です。創業計画書・自己資金エビデンス・見積書などの書類を整える時間を含めると、準備に1か月、審査・実行に1か月、合計2か月程度を見ておくと安全です。内装工事の着工日を先に決めてしまうと、この2か月が窮屈になります。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
店舗の開業でよく聞かれるのが、立地についてです。店舗の場合、その商売にとって一等地が本当に必要なのかを問われることがあります。内装と同じで、家賃の水準も「事業として必要な条件は何か」という説明の一部として見られます。集客の方法と客層をどう考えているのかを先に整理しておくと、物件の選び方にも根拠が出てきます。
申し込み前のチェックリスト
- 見積が「一式」でまとまっておらず、造作・機器・消耗品・工事以外の4つに分かれている
- 機器ごとに型番・数量・単価・納期が書かれている
- 中古で入れる機器について、価格の根拠と使用できる見込み年数を説明できる
- 勤務時代に自費で買った備品・講習の領収書が手元にある
- 設備資金と運転資金の金額を分けて書き出してある
- 賃貸借契約の期間と、返済期間・据置期間を並べて確認した
- 内装工事の着工日が、融資実行の目安より後ろに置かれている
まとめ
内装費と機器費が創業融資で借りられるかどうかは、費目そのものではなく、見積の分解と説明の精度で決まっていきます。造作と機器は同じ設備資金でも、手元に残るかどうかという性格が違い、その違いが返済期間の考え方にもつながります。
手順としては、まず見積を4つに割り分け、機器の型番と単価まで書ける形にし、造作は使える年数と返済期間を並べて見て、最後に運転資金が薄くなっていないかを確認します。この順で進めると、業者との打ち合わせと融資の準備を同じ資料で回せるようになります。
審査では、事業として創業した実績がなくても、事業計画書と自己資金などをもとに判断されます。制度の内容や金利は変わりやすいため、ここに挙げた数字は2026年8月時点の社内資料にもとづく内容として扱い、申請の際は最新の公式情報を確認するか、専門家にご相談ください。
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融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。




























