
銀行融資の必要書類、何から出すかで見え方が変わる理由
創業から数年が経ち、税務申告を2期以上終えた事業者が銀行や信用金庫に運転資金や設備資金の相談を持ち込む段階になると、必要書類の一覧はどこにでも見つかります。ただし、書類を集めただけでは足りません。どの書類が何を確認するためのものかを把握し、答えの出やすい順番で出すと、担当者の確認作業が短く済みます。逆に、順番を意識せずに手元にあるものから出してしまうと、確認のたびに書類を出し直す往復が増え、面談の回数がかさむこともあります。この記事では、書類を審査で見られる項目に沿って束ね、答えの出やすい順に並べる考え方をQ&A形式で整理します。
Q1. 銀行に出す書類は、まず何から準備すればいいですか
審査では、業績、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。書類はこの並びに沿って、答えを出しやすいものから準備すると進めやすくなります。具体的には、事業の実績を示す決算書や試算表、資金の使い道を示す見積書や請求書、通帳の写し、納税状況を示す証明書、というように役割ごとにまとめておくと、面談でどの書類がどの説明に対応するかをすぐに示せます。書類をばらばらに集めてから並べ替えるより、最初から役割で分けておくほうが手戻りが少なくなります。担当者から質問が来たときも、対応する書類をすぐに取り出せると、その場で話が進みやすくなります。逆に、どの評価項目に対応するかを意識しないまま書類を出すと、同じ確認のために後日あらためて書類を求められることもあるため、最初の段階で束ね方を決めておく価値があります。
Q2. 決算書は何期分そろえればいいですか
税務申告を2期以上終えている事業者であれば、その期数分の決算書を用意するのが基本です。なお、創業融資だからといって決算書を見ないわけではありません。新しく設立した会社でも、一期でも決算が締まっていればその決算書は確認の対象になりますし、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認されます。すでに複数期の実績がある場合、計画どおりに数字が推移していれば計画の実現可能性を裏づける材料になりますし、逆に計画との乖離が続いていれば、その理由を説明できるように整理しておくと話が早く進みます。決算書は各期をばらばらに出すのではなく、直近の期から順にそろえておくと、数字の推移を追ってもらいやすくなります。複数の期を並べて出す場合は、期ごとの数字が読み取りやすいように順番をそろえておくだけでも、確認にかかる時間が変わってきます。
Q3. 試算表や資金繰り表は、いつ時点の数字を用意しますか
直近の決算からある程度期間が空いている場合は、決算書だけでなく直近月次の試算表や資金繰り表もあわせて求められることがあります。決算書が事業の年間の結果を示すのに対して、試算表や資金繰り表は足元の状況を示す書類にあたるため、両方をそろえておくと、直近の売上や資金の動きについての質問にもその場で答えやすくなります。作成の時点はできるだけ直近の月末に近いものを選び、決算書の内容と大きく食い違わないかを自分でも確認しておくと安心です。資金繰り表は今後数か月分の入出金の見込みを示す書類なので、決算書や試算表とあわせて出すと、これからの資金の動きについても説明がしやすくなります。数字の作り方そのものに迷う場合は、日々の記帳を行っている税理士など専門家に相談しながら整えておくと、数字の裏づけを聞かれたときにも答えやすくなります。試算表と資金繰り表を別々の書式で作っていると、担当者が数字を突き合わせる手間が増えるため、同じ時点の数字であることが分かるようにそろえておくと確認がスムーズです。数字を作る担当者が社内と社外で分かれている場合は、あらかじめすり合わせておくと、面談で細部を聞かれたときに答えが食い違わずに済みます。前提となる仮定を変えた場合は、その変更点も一言添えておくと、数字だけを見たときの疑問が減ります。
Q4. 見積書や請求書はどの段階で出しますか
設備資金を伴う相談では、資金使途と調達額の整合を示すために見積書が使われます。何にいくら使うのかを金額の面で裏づける書類にあたるため、決算書や事業計画の内容で「なぜその設備が必要か」を説明したうえで、見積書を後から添えると流れが自然になります。見積書を先に出してから背景を説明すると、金額だけが先に伝わってしまい、話の順序が前後してしまうことがあります。契約や発注をすでに終えている場合は、請求書や契約書もあわせて準備しておきます。複数の業者から見積もりを取っている場合は、比較した経緯もあわせて説明できるようにしておくと、金額の根拠がより伝わりやすくなります。導入時期を分けて発注する予定がある場合は、その分け方の理由もあわせて説明できるようにしておくと、計画全体との整合が伝わりやすくなります。見積書の宛名や日付が事業計画書の記載と食い違っていないかも、提出前に自分の目で確認しておきたいところです。
💬 監修者の元日本政策金融公庫の支店長の多胡から一言
見積書は金額の裏づけのためだけの書類だと思われがちですが、その設備が事業の規模や業種に対して過剰なスペックになっていないかという視点も含めて見られています。金額をそろえること以上に、この視点は書類を準備する段階で見落とされやすいところなので、意識しておくとよいでしょう。
Q5. 通帳のコピーは何のために必要ですか
通帳の写しは、入出金の流れを確認するための書類として求められます。自己資金として説明している金額の出どころや、事業の売上・仕入れの入出金が実際の動きと合っているかを見るために使われます。個人と事業の口座を分けている場合は、事業用の口座を中心に、必要に応じて個人の口座もあわせて用意します。急に大きな金額が動いた履歴がある場合は、何のための入出金かをあわせて説明できるようにしておくと確認がスムーズです。用意する期間は、直近の数か月分を求められることが多いため、通帳を記帳したうえでコピーを取っておくと当日になって慌てずに済みます。複数の口座を使い分けている場合は、それぞれの口座がどの用途のものかをあらかじめメモしておくと、面談の場で説明がしやすくなります。
Q6. 納税証明書や社会保険料の納付状況はなぜ確認されますか
信用情報の一つとして、税金や社会保険料の納付状況が確認されます。借入状況や返済の遅延の有無とあわせて、事業を継続して運営できているかを示す材料として扱われる書類です。納付が遅れている分がある場合は、隠さずに現状と今後の見通しを説明できるようにしておくほうが、話がこじれにくくなります。証明書は取得までに日数がかかることがあるため、他の書類より早めに手配しておくと余裕を持って準備できます。窓口での発行のほか、オンラインで取得できる場合もあるため、申込先に確認しながら早めの段階で動いておくと、他の書類の準備と並行して進められます。
Q7. 書類が全部そろっていなくても融資の申込はできますか
そろっている書類から先に出し、時間がかかる書類は後から追加するという進め方も可能です。特に納税証明書のように取得に日数がかかるものは、他の書類の準備と並行して手配しておくと申込から実行までの流れを止めずに進められます。どの書類が先に必要かは相談先によって多少異なるため、申込を検討する段階で一度確認しておくと、後から慌てて取り寄せる事態を避けやすくなります。決算書や事業計画書など、自分の手元で整理を進められる書類から着手し、発行に日数がかかる証明書類を並行して手配しておくのが、全体を止めずに進める順番の考え方です。すべてがそろってから一度に持ち込むよりも、準備の状況をそのつど共有しながら進めるほうが、担当者側も見通しを立てやすくなります。
書類を役割ごとに束ね、答えの出やすい順に準備しておくと、面談のたびに書類を探し直す手間が減ります。まずは手元にある決算書や試算表から、どの評価項目に対応する書類かを整理するところから始めてみてください。整理の仕方に迷う場合は、申込を予定している金融機関の窓口で、どの順番で出せばよいかをあらかじめ聞いておくのも一つの方法です。書類の束ね方を意識しておくだけでも、申込から実行までのやり取りにかかる時間は変わってきます。
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この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
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