
創業融資の事業計画書と売上予測の作り方|席数×回転数×客単価で根拠を作る
事業計画書の売上予測は店が決まる前でも作れる?根拠の積み上げ方
料理人として独立を考え始めた方から、こんなご相談をよくいただきます。
💬 料理人の方からのご相談
創業融資には事業計画書が必要だと知り、ひな形を見てみましたが、まだ店も決まっていないのに月の売上をどう予測するのか分かりません。希望的な数字を書いても意味がないと思う一方、低く見積もりすぎると融資が受けられない気もします。根拠のある売上計画は、どのように作ればいいでしょうか?

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。
多胡からの回答
結論から言うと、店が決まっていない段階でも、根拠のある売上予測は作れます。大きな数字を一つだけ決めるのではなく、席数、回転数、客単価、営業日数という四つの要素に分けて、それぞれに理由を添えていく方法です。
公庫で支店長をしていたころは、創業計画書を審査する側として売上の欄を見ていました。そのときに気にしていたのは、数字の大小そのものよりも、その数字がどんな前提から出てきたのかを申込者ご本人が説明できるかどうかです。希望的な数字になるのではという不安は、前提を一つずつ書き出すことでかなり解消できます。
売上予測の土台は四つの要素の掛け算です
飲食店の月の売上は、次の式で組み立てるのが基本です。
- 席数
- 1日あたりの回転数
- 客単価
- 月の営業日数
この四つを掛け合わせたものが、月の売上の目安になります。昼と夜で客層も客単価も違う店なら、昼の分と夜の分を別々に計算して足し合わせてください。ひとまとめにして平均を取るより、後から説明しやすくなります。
大事なのは、四つのどれにも「なぜその数字にしたのか」を一言で言える状態にしておくことです。式そのものは誰が作っても同じですから、差が出るのは各要素の根拠の部分です。
店が未定でも、仮の条件を置いて組み立てられます
物件が決まっていないと数字が作れない、ということはありません。まず自分が開きたい店の姿から、仮の条件を置きます。
席数は、考えている店のコンセプトと、想定する広さから逆算します。カウンター中心なのか、テーブル席が多いのかで、同じ広さでも席数は変わります。物件が決まった時点で、実際の間取りに合わせて差し替える前提で構いません。
客単価は、メニューの構成から積み上げます。お客様が1回の来店で注文しそうな組み合わせを、料理と飲み物で具体的に書き出し、その合計を客単価の根拠にします。頭の中の相場感だけで置くより、メニュー表と結びついた数字のほうが、面談で聞かれても答えやすくなります。
回転数は、満席が続く前提で置かないことが肝心です。時間帯ごとに、席がどれくらい埋まりそうか、入れ替わりがどのくらい起こりそうかを分けて考えます。
立地と曜日の差を数字に反映させる
同じ席数、同じ客単価でも、立地によってお客様の入り方は大きく変わります。オフィスが多い場所なら平日の昼に山ができ、住宅街なら週末の夜や昼に寄る、といった具合です。
候補にしているエリアがあるなら、実際に足を運んで、平日の昼、平日の夜、週末をそれぞれ見てください。近くの飲食店の席がどのくらい埋まっているか、人の流れがどの時間帯に多いかを、自分の目で確かめたメモが根拠になります。
営業日数も、曜日ごとに分けて考えます。定休日を除いた月の日数を、平日と週末に分け、回転数も曜日ごとに変えて計算します。平日と週末を同じ数字で置いてしまうと、実態と離れた計画に見えやすくなります。
開業した直後から、安定したときと同じ入りになるとは限りません。月ごとの推移を作る場合も、最初の数か月は低めに置き、徐々に上げていく形で、その理由を添えておくと説得力が出ます。
都合のよい作文にしないための三つの工夫
数字が作文になってしまう原因の多くは、前提が頭の中にしかないことです。次の三つを意識すると、作文から離れられます。
- 前提条件を一覧にする。席数、回転数、客単価、営業日数のそれぞれに、根拠を一行ずつ添えます。
- 強気、標準、慎重の三つのパターンを作る。計画書に載せるのは標準のパターンとしつつ、慎重なパターンでも事業が回るかを自分で確かめておきます。
- 根拠の出どころを分けて書く。現地で見たこと、これまでの勤務で身につけた実感、メニューからの積み上げ、といった具合に、何に基づく数字かを区別します。
とくに料理人の方は、これまでの勤務経験が数字の裏づけになります。日本政策金融公庫の創業計画書で経験欄として問われるのは、同じ業種での勤務経験、勤務年数、役職といった業務経験です。働いてきた現場で肌で覚えた感覚を、数字の根拠として言葉にしておくと、経験欄と売上の欄がつながります。
低く見積もりすぎると融資が受けられないのか
低く見積もること自体が悪い、ということはありません。むしろ気をつけたいのは、売上を低くしたことで、ほかの数字との整合が崩れてしまうことです。
審査では、業務経験、自己資金、事業計画の具体性、資金使途と調達額の整合、信用情報などをもとに判断されます。事業計画の具体性という点では、売上だけでなく、原価、人件費、家賃、そして返済の原資まで、一本の線でつながっているかが見られます。
売上を極端に低く置くと、必要な資金と返済の説明が合わなくなることがあります。逆に高く置きすぎれば、その根拠を聞かれたときに答えに詰まります。ですから、低いか高いかで悩むより、根拠を説明できる範囲で、標準の数字を置くことを考えてください。
なお、創業融資でも決算書をまったく見ないわけではありません。新しく設立した会社でも一期でも決算が締まっていれば、その決算書は確認されます。また、代表者が別に会社を経営している場合は、その会社の決算書も確認の対象になります。そうした資料がある方は、その内容も踏まえて説明できるようにしておいてください。
面談では、数字の出どころを自分の言葉で話せるように
融資の面談では、売上予測の数字そのものより、その数字をどう導いたのかを聞かれる場面が多くなります。前提条件の一覧と、根拠のメモがあれば、聞かれたことに順を追って答えられます。
物件が決まったら、席数や家賃といった条件が変わるはずですので、その時点で四つの要素を見直して、計画書を更新してください。物件を押さえる前に、想定している売上と家賃などの負担がつり合うかも、あらかじめ確かめておくと安心です。
制度の運用や審査の見方は変わることがあります。この記事は2026年9月時点の内容ですので、申込先の最新の案内もあわせてご確認ください。
まとめ
根拠のある売上予測とは、当たる数字を言い当てることではなく、どんな前提でその数字になったかを説明できる状態のことです。席数、回転数、客単価、営業日数の四つを、立地や曜日の違いも含めて一つずつ言葉にするところから始めてみてください。
売上予測の前提の置き方や、事業計画書への書き方に迷うときは、事業計画書の作成や融資面談の準備を専門家と一緒に進めるという選択肢もあります。数字の根拠づくりの段階から相談できる窓口がありますので、一人で抱え込まずに、気軽に活用してみてください。
【無料相談のご案内】
融資を受けるには何から始めればいいの?といった疑問に対して適切なアドバイスを無料にて行っております。
無料相談も行っているので、ぜひ一度、ご相談ください。お問い合わせお待ちしております!

この記事を書いた人
小峰精公/Kiyotaka Komine
元朝日信用金庫 法人営業
資金繰り解決コンサルタント
V-Spirits総合研究所株式会社 常務取締役
大学卒業後、朝日信用金庫に入庫。朝日信用金庫での経験が原点となり、「銀行融資取引」や「資金繰り」の本質を企業へ伝えていくことがミッションだと確信する。
日本の99%は中小零細企業で成り立っている現状を痛感し、1社でも多くの企業の「資金繰り」の課題を解決していくことに専念する。
クライアント様がより良い商品やサービスを提供することができる環境づくりの一助となれるよう全身全霊を尽くす。

この記事を監修した人
多胡藤夫/Fujio Tago
元日本政策金融公庫支店長、社会生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R)、V-Spirits総合研究所株式会社 取締役
同志社大学法学部卒業後、日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)に入行。約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職。
日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。
長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。


この記事を監修した人
中野裕哲/Nakano Hiroaki
税理士法人V-Spiritsグループ代表/税理士/行政書士/特定社会保険労務士/採用定着士/ファイナンシャルプランナー/起業コンサルタント/経営コンサルタント/大正大学招聘教授
税理士法人V-Spiritsグループ代表の中野裕哲は、中小企業経営者のために、税務・会計だけでなく、採用、人事、資金繰り、融資、補助金、助成金、営業、Webマーケティング、売上導線設計まで横断的に支援する実戦型経営税理士です。
経営の悩みは、突き詰めると「人・金・売上」に集約されます。中野裕哲は、大企業人事部、人材紹介会社の採用エージェント、中小企業の財務責任者、大手不動産会社での営業、出版・Web制作による集客導線構築など、幅広い実務経験をもとに、経営者の意思決定を支援します。
【対応領域】
税理士顧問、社労士顧問、補助金支援、助成金支援、資金調達支援、採用力診断、売上導線診断、経営参謀顧問。税務・会計・決算・節税に加えて、経営分析、労務管理、社会保険、助成金、採用体制づくり、融資、補助金、事業計画、営業戦略、Webマーケティング、出版、メディア活用まで一体的に相談できます。
中野裕哲は、家業の倒産危機からの壮絶な貧乏体験を原点に、お金で苦しむ経営者をひとりにしないことを掲げています。資金繰り、採用、売上づくりの壁に対して、経営者目線で伴走します。
【主な実績】
- 起業支援・経営支援の豊富な実績
- 起業相談件数3,000件以上
- 資金調達支援1,000件以上
- 大企業Webサイト多数監修
- 商業出版著書監修約32冊(累計30万部超)
V-Spiritsグループでは、融資・補助金・金融機関対応に詳しい社内役員チームも伴走します。元経済産業省系補助金審査員・事務局員、元日本政策金融公庫支店長、元信用金庫融資担当営業などの専門家が、補助金申請、事業計画、資金繰り、金融機関対応を実務面から支援します。
税理士顧問、社労士顧問、融資、補助金、助成金、採用、営業、マーケティングまで、経営者が本当に悩む領域をワンストップで相談できます。V-Spiritsグループは、起業支援・会社設立・創業融資・補助金助成金・税務会計・人事労務・許認可・経営顧問をワンストップで支援する、起業家・中小企業向けの専門家グループです。





























